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背中合わせのアフェクション 〜キミとオレとの関係性〜  作者: 田沢みん(沙和子)
第2章 高校編
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15、 それぞれの思惑


嫌な予感はしていた。


樹先輩が小桜狙いだというのは同類としてヒシヒシと感じていたし、 近いうちに告白するんじゃないかという恐れをずっと持っていた。


そして、 その日が案外近いのでは……とも思っていた。


だけど、 まさかいきなり今日だなんて……。





『やられた! 』

というのが、 まず最初に奏多が思ったことだった。



昼休みにいつものメンバーで昼食をとりながら、 今ここにいない小桜を気にしつつ、 奏多はボソボソとカレーパンを頬張っていた。



急に廊下の方からバタバタと大きな足音がして、 クラスの女子が教室に駆け込んできたかと思うと、 誰に言うでもなく大声で叫んだ。


「ちょっと大変! 樹先輩が小桜さんに告白した! 」



ーー えっ、 告白?!


詳しく聞き返す間も無く、 情報は向こうから勝手に飛び込んできた。


「おい、 聞いたか? 葉山先輩がカフェテリアで公開告白したぞ! 」


「みんな聞いてよ! たった今、 樹先輩が小桜さん

に好きだって言った! めちゃショックなんだけど〜! 」



第二、第三の足音が廊下をバタバタと走り抜け、 あちこちの教室で悲鳴や歓声が次々と上がっていく。

ここ1-Aの教室でも、 顔を覆って泣きだす女子や嘆き悲しむ男子たちが続出で阿鼻叫喚(あびきょうかん)の地獄絵図となった。



ーー うわっ、 やられた! 先を越された。



嫌な予感は、 現実のものとなった。


まさか今日だとは予想していなかった。

今日のメインテーマは小桜が生徒会の会計を引き受けるかどうかだったはずだ。

そして彼女はその申し出を断っているはず。


ーー なのに、 その流れで告白なんて……するか?!



パッと隣を見ると、 一馬と陸斗も呆然とした顔で見返してきた。


一馬が立ち上がって、 先程カフェテリアから戻ってきたばかりのクラスメイトに走り寄る。

続いて陸斗も立ち上がると、 黙って奏多の肩に手を置き、 そして一馬のいる方に歩いて行った。



ーー 早く小桜に会わなければ……。

いや、 まずは誰かから詳しく話を聞くのが先だ。


奏多は険しい顔のまま立ち上がり、 噂話で盛り上がっている大きな輪の中に加わって行った。



***



一方その頃、 2-Aの教室では大きな歓声が上がっていた。



泣き出す女子や嘆き悲しむ男子がいるのは他のクラスと同じだが、 違っていたのは、 何人かの男子生徒達が『葉山樹、 公開告白! 』の一報を聞いて、

「樹、 スゲえ〜! マドンナに告った! 」

「勇者だ! 」

と大喜びで騒ぎ出したことだった。



小桜との話を終えた樹が教室に戻ると、 騒いでいた集団が一斉に樹を取り囲んだ。



「樹、 聞いたぞ! やったなぁ! 」

「お前、 いつから小桜さん狙いだったんだよ! 」

「マジ勇者だな、 おい」

「それで返事は?! 」



みんなに背中をバシバシ叩かれたり肩を組まれたりしながら、 樹は彼らの問いには答えず、 黙って窓際の自分の席に向かった。


席に座ってすぐ、 机にガバッとうつ伏せる。


前の席にいた義孝が振り向いた気配がしたが、 樹は顔を上げることが出来ず、 そのままじっとしていた。



「樹…… フライングだな」


頭上から降ってきた声に恐る恐る顔を上げると、 義孝のジットリと責めるような目があった。


樹はその視線に耐えきれず再び顔を伏せたが、 意を決したように顔を上げて、 今度はじっと義孝の目を見つめ返した。



「ごめん…… 我慢できなかった 」



続けて、 「彼女が可愛すぎた……」と言ったところで、 義孝に頭をバシッと(はた)かれた。



()って! お前、 思いっきりぶっただろ」

「うるさい! 人のアドバイスを無視しておいて、 フザけたこと言ってるからだ! 」



お互い顔を見合わせたところで、 義孝が樹の頭をガシッと抱え込んで、


「とりあえず、 告白おめでとう。 よく頑張ったな」


ようやく笑顔を見せた。



周りを取り囲んでいた連中からもウオーッ! と歓声が上がり、 あとはひたすら質問責めとなった。



「みんな…… ちょっとゴメン」


樹が質問には答えず立ち上がると、 教室中がパッと静まり返った。



「僕が小桜さんに告白したのは本当だけど、 彼女には友達からってお願いしたばかりだし、 まだハッキリ返事をもらったわけじゃないんだ。 これから好きになってもらえるように頑張るつもりだけど、 みんなには暖かく見守って欲しい」



よろしくお願いします……と頭を下げると同時に、

「うお〜っ! スゲエ! 」

「よしっ、 俺たちで後押しするぞ! 」

「よっしゃ〜! 応援団を結成だ! 」


またしても大歓声が上がった。



「いや…… 応援してくれるのはありがたいけど、 今、 本当に大事なとこだから慎重にいきたいんだ。 僕が答えられる質問には答えるから、 どうか彼女に直接会いに行ったり、 からかったりとかはしないであげて欲しい。 プレッシャーをかけたくはないんだ」



頼む…… ともう一度深く頭を下げると、 今度は女性陣からも黄色い声が上がった。


「キャー! 樹、 カッコイイ! 」

「マジ王子様じゃん! 」

「感動した! 応援するからね! 」



一層騒がしくなった教室の中で、 義孝が樹を見上げて苦笑する。


「お前さ、 あんな場所で告白しといて、 慎重にいきたいとか暖かく見守って欲しいとか、 よく言うよな」

「反省してるよ。 初めてのことでテンパった。 だけど、 もう間違えたくない」

「そうだな。 俺も応援するよ」

「おう、 ありがとう」


お互いの拳を突き合わせる。



この時の樹の男前な発言もまた、 瞬く間に学校中に広まり、 奏多のいる1-Aの教室にも伝わっていくのだった。




2/16/2019 日間現実世界〔恋愛〕 ベスト100にランクイン致しました。 ここまで辛抱強く読んで下さった皆様のお陰です。 どうもありがとうございました。


樹の登場でちょっと影の薄くなった奏多共々、これからもよろしくお願い致します。


今日初めて読まれた方も、ブックマーク、 ポイント等で応援していただけると嬉しいです。


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