表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
背中合わせのアフェクション 〜キミとオレとの関係性〜  作者: 田沢みん(沙和子)
最終章 キミとオレとの未来
172/188

22、 ネズミーランドへようこそ!


「やった〜、 (つい)に来た! 凛、 まずはカチューシャ買うよ! 」


テンションマックスの都子に引きずられるように凛と奈々美がショップに入っていくと、 残された奏多が後ろの一馬たちを振り返った。


「…… って勝手に行っちゃったけど、 どうする? 」


奏多に決定権を(ゆだ)ねられた一馬は隣にいる陸斗に目配せしてニヤッと笑い、


「そんなの…… 行くっきゃないじゃん! 」


奏多と陸斗の肩をガシッと(つか)むと、 勢いよくショップに突進して行った。





風光る3月最終週、 大学の入学式を翌週に控えた奏多たちが降り立ったのは、 世界一有名なテーマパーク、 『ネズミーランド』。



卒業式のあとの百田家で、 卒業旅行を何処(どこ)にするかの議論が交わされ、 海外派と国内リゾート派で激しい火花を散らしていたときに、 陸斗が言った。


「あっ、 ごめん、 俺パスだわ」


「「「 ええ〜っ! 」」」


「来週末に引っ越しだから明日から荷物まとめなきゃいけないし、 向こうに行ったら入学説明会やら教材の準備、 生活のセットアップもしなくちゃで、 ゆっくりする時間がない。 お前たちだけで楽しんでこいよ」



「なに言ってんだよ、 お前が一緒じゃなきゃ意味ねえ〜よ! 」

「そうだよ、 俺だって一馬と陸斗が(そろ)わなきゃ楽しくないよ! 」


「そうは言っても、 俺が空けれる時間はせいぜい2〜3日だ。 そんなんじゃ沖縄もハワイも無理だろ」


奏多と一馬がガックリと肩を落とす。



「陸斗が忙しいならあなた達が会いに行けばいいじゃない」


「「「 えっ?! 」」」



炭酸飲料のペットボトルをドンとテーブルに置いた叶恵に皆が注目した。


「だって陸斗がいないと嫌なんでしょ? だったら東京方面でいいじゃない。 海外旅行は夏休みでも冬休みでもそのうち行けるわよ」



目から(うろこ)とはこのことだ。


パンが無いならケーキでいいじゃない…… ではないけれど、 陸斗が来れないならこちらが出向くまでだ。

これなら陸斗に負担をかけずに済む。



「だったら、 鎌倉方面とか…… あとは、 ネズミーランド? 」

「えっ、 ネズミーランド!! 」


奈々美の提案に凛が目を輝かせたのを奏多は見逃さなかった。


「もしかして…… 凛ってネズミーランドに行ったことない…… とか? 」

「ない。 一度も」


「マジかっ! それは凛ちゃん、 絶対に行くべきだ! よっしゃ、 行き先は決まったな」


一馬の言葉に都子と奈々美も頷く。



かくして奏多たちの卒業旅行は、 2泊3日のネズミーランドに決定したのだった。



***



奏多たちが店内に入ると、 キャピキャピはしゃいだ女子3人組が、 次々にカチューシャをお試ししては着け替えてを繰り返していた。


「あっ、 奏多、 どっちがいいと思う? このレースのと、 大きいリボンので迷ってるの」


奏多に気付いた凛が、 大きなレース柄の耳にリボンがついたタイプと、 リボンだけのタイプの2種類を持って走ってくると、 目の前で交互にかぶって見せる。



ーー うおっ、 カワイイ!



美少女にキャラクターカチューシャの組み合わせは破壊力(はかいりょく)半端(はんぱ)ない。


「いや、 俺はどちらでも…… 」


ドギマギしながらかろうじて答えると、 凛は口を(とが)らせて不満げな顔になる。


「奏多が決めてください…… 彼氏として」

「それでは…… 耳つきの方でお願いします」


「はい、 分かりました」


凛はニッコリしてレジへと向かった。



「顔がニヤけてますよ、 彼氏さん」

突如(とつじょ)後ろからニュッと顔を出されてビクッとする。


「うわっ、 一馬! 見てんじゃね〜よ! 」



「見てたんじゃなくて視界に飛び込んできたんだよ。 いいねえ〜、 ネズミミ凛ちゃん」

「うん…… カワイイだろ。 お前、 見たら目つぶしの刑な」


「うわっ、 嫉妬(しっと)深っ!…… てか、 俺よりもあっちだろ。 早速ナンパされてるぞ。 彼女を1人にしてんなよ」


言われてガバッと振り向くと、 レジで会計を終えた凛が、 同年代くらいの男2人組に囲まれていた。


「凛! 」


慌てて駆け寄ると、 凛の手首を掴んで囲みを突破する。


2人組の視線を尻目(しりめ)に店から出ると、 ようやく一息ついて手を離した。


「目を離してごめん…… 一緒に並べば良かった」

「ううん、 私こそ。 急に囲まれて固まっちゃって」


遅れて出てきた一馬たちが、 店内を振り返りながら愉快(ゆかい)そうにしている。


「見てみろよ、 あいつらナンパ失敗してめっちゃ(くや)しそう。 優越感(ゆうえつかん)だな」

「優越感よりもヒヤヒヤしたよ。 これじゃ片時(かたとき)も目を離せないな」


「ごめんね…… 」

「いや、 凛が謝る必要ないから。 俺がしっかり守ればいいだけだ」


その宣言どおり、 2泊3日の旅行中、 奏多はナイトよろしく凛をしっかりガードして、 彼女をナンパの魔の手から守り通したのだった。


だけど、 それはまた後のお話で、 卒業旅行はまだ始まったばかり。


凛が憧れていた夢の国は、 すぐ目の前で待っている。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ