傲慢の火
太陽がとおく大洋の彼方を翔ぶ。
あらゆる波には千々の銀箔が
散りばめられていた。
永劫の翼などはない。
蒸発も許されぬ赤銅の不滅とは
空に驕った罰であろうか、
海辺のわたしは、その
逃避と忘却の身投げを、みる。
風も止むような静寂へと
わたしに打ち寄せる波、波、波。
わたしは叫んでいた。
大口を開けて叫んでいた。
かき消すように奔流が
わたしへと叫びかえしていた。
海面は覆されたような黒の
そのうちで悲鳴を反芻していた。
揺らめく幾筋もの手に吐き出されて
わたしは空を見あげた。
波一つない空を見あげると、
押し固められた銀の輝きがあった。
覆されてしまった銀の輝きである!
わたしの知った、海の輝きである!
わたしは
揺れていた、いな、
落下していた、いな、
飛びたっていた、いな、
燃えあがっていた!
いかなる魔術の業ゆえか、
わたしの眼下ではわたしの
およびもつかぬ波紋の群れが
たしかな銀色の輝きで拒みながら
わたしを、しずかに、睥睨している。
わたしはもう、叫ぶべき口も
伸ばすべき腕もなくして、
わたしという叫びとなって、
存在しようと、
その身がまるく捩れてなお
わたしは存在しようと、
存在しようと、
燃えさかる。
空のすべてを焦がそうとしてなお、
焦がせなかったものすべてを
焦がそうと、
赫赫と燃えさかり、
ただ、
燃える。