ランゲルハンス先生
「ふおおおおおおおっ! ふ、ふううおおおおおおおぉぉぉぉっ!!」
目の前に広がる光景に俺は思わず感嘆の声を上げる。決して女性の下着を頭から被って、エクスタシーを感じてヒーローに変身する過程ではないことを告げておきたい。
そこには二匹増え、計六匹となったローパーたちによって宙に持ち上げられ、両手足を無理矢理広げられた姿勢でジタバタともがく佐倉がいた。
四方にAからDの四匹のローパーが陣取って佐倉の手足を拘束し、佐倉の下に追加で増えたE、Fのローパーが佐倉の腰を支える形で安定感を図っている。
「せ、先輩、見て下さい。これこそまさにあの『おっほおおおおおおおおっ! これ以上は壊れちゃうううううぅぅっ!』と同じ構図ですよ!」
六匹のローパーによる触手プレイの再現度はかなりもので、ミリアムも興奮したように同人誌を広げながらプレイの様子を見比べている。
「ねえ、ねえ、今度はこっちのポーズもやってよ。この触手を○○○に××して、△△しながら□□□□するやつ」
さらにミリアムは、パラパラとページをめくってローパーたちに次々と指示を出していき、その要求にローパーたちは的確に応え、佐倉に次々と淫靡な格好をさせていく。
「……ふむ」
これがなかなかにエロく、俺は心の中でミリアムにグッジョブとエールを送った。
着衣のままなのでそれほどエロくないと思いがちだが、実際に目の当たりにすると着衣のままでも想像以上にエロく、さらにミリアムが臨場感を出すためにと背中を支えているローパーの余っている触手を佐倉の体に触れるか触れないかでワサワサと動かしているのが、余計にエロさを際立たせていた。
「ん……んんっ…………んくっ」
四肢を拘束された姿勢のまま、次々とポーズを取らされる佐倉は、決して直接触られていないものの、局部や眼前で揺れる触手を見て何を思ったのか、艶っぽい表情を浮かべ、熱のある吐息を漏らす。
佐倉はどうやらすっかり触手プレイに夢中のようなので、俺は俺で自分の仕事に戻ることにする。
それからしばらくの間、ミリアムの指示の下、どのような触手プレイが可能か、ここまでやってしまったら女性が痛がるから止めておいた方がいいか。どうしたら効率よくポーズチェンジが可能かと実践的な研究に費やしていた。
「ん……んん……ってあれ、旭君、何やってるの?」
すると、すっかり触手プレイに浸っていた佐倉が度々視界に移る俺に気付いて驚いたように声を上げる。
「ちょ、ちょっとそれ、もしかして写真撮ってるの!?」
「心配するな。動画も撮ってるから」
「ちょっ!?」
動画と聞いて、佐倉の顔からサッと血の気が引く。
「ちょ、ちょっと待ってよ。どうしていきなり写真や動画なんて……」
「決まっているだろう。税金を使って活動している以上、市民の皆様から俺たちがどういう活動をしているかを聞かれた時に淀みなく答えられるよう、こうして記録を取るようにしているんだ」
「い、いやいや、そんなの聞いてないわよ! こんな痴態、誰にも見せられるわけないでしょ!」
「ああ、画像は加工して誰だかわからないようにしておくから、その辺の心配はしなくていいぞ」
「そういう問題じゃないわよ! い、いや! そんなマジマジとカメラのレンズを向けないでよ……って、手が拘束されているから顔が隠せない!?」
佐倉が慌てて顔を隠そうとするが、腕をがっちりと触手によってホールドされているのでビクともしない。
ローパーたちには佐倉が多少暴れても安全のために決して触手を緩めないようにとミリアムつてに厳命してあるので、佐倉がいくら懇願しても触手が緩むことはない。
「もう、いや。どうして誰も言うこと聞いてくれないの! もう、やめてよ。旭君のバカ! 変態! ラノベ主人公!」
「ハッハッハ、そんなバヌアツのタフェア州にある島のような先生なんて知らないな」
「誰もそんな訳の分からないこと言ってないでしょ! そんな、そ、その……ランゲルハンス島なんて言ってないでしょ!」
「…………」
「な、何よ」
「いや、別に……」
俺はやれやれと大袈裟に肩を竦めてみせると、慈悲の笑顔を浮かべてシャッターを切りまくる。
ちなみに佐倉が傷つきそうなので敢えて言わなかったが、ランゲルハンス島は島の名前ではなく、膵臓の中にある細胞群の名前だからな。
その後も、ギャーギャー喚く佐倉を宥め、時には無視しながら撮影を続けた。




