エピローグ
山石駆が元どおりの日常に戻って、まずしたことは、日向晴の家を訪問することだった。
日向晴の部屋の前に立ち、一通の手紙を書いた。
日向晴様
拝啓、今日は天気がいいです。
さて、ふと思い立ってこのような手紙を書いたのは、一言言っておきたいことがあったからです。
それはどんなことがあっても僕はあなたの味方でありたいということです。
僕のせいで、迷惑をかけたのに、こんなこと言っても仕方ないのかもしれませんが、でもだからこそ、こんな僕のことを真剣に考えてくれていたことを、僕は昨日、あなたの言葉から感じました。だから、あなたが負けないように、僕は考えて、考えて……。
ロックンロールをすることにしました。
学校で待ってます。
敬具
黒咲百合が転校したことを駆が知ったのは、学校の屋上でギターをかき鳴らすという事件を起こしてから、教室に戻って来た時だった。
なんでも、黒咲百合は、病気療養のため違う県にある専門の病院に入院したらしい。
『また会おうね』という言葉が本当になる日を、せめて駆は祈った。
……と思ったら放課後、帰るとき下駄箱の中に、小さなメモの切れ端が残されていた。
『駆くん、最高だったよ。私も、ロックンロールするね。また会う日まで、バイバイ』
そう、駆はあれから、わざわざ授業中に天音のギターをかき鳴らすという暴挙に出た。
学校に登校することもできなかった駆が、なぜそんなことをするようになったのか。
それを知るのは駆のみだ。ただ言えることは、そのギターが発する音色は、聞くもの全てを魅了したということだけだ。
「ふー……。なにやってんだよ、あいつは」
白崎俊介は、頭を抱えていた。
屋上から聞こえてくるギターの轟音のせいである。
とりあえず、気分を落ち着かせようと、煙草を吸っていると、
『煙草は吸っちゃダメって言ったのに』
「へ……?」
声がして驚く。だけど、周りを見回しても人はいない。
『ねえ、俊介、覚えてる。私たちが出会ったときのこと。俊介は花壇の前で座っていた私のいつのまにかすぐ隣にいて、一緒にただ居てくれた。まるで、それが当然のように。一緒にただ花を見てくれていただけだった。苦しくて、切なくて、世界で自分が一人ぼっちのような気がしていた私にとって、それは本当にかけがえのないひと時だった。だから私は、あなたに、自分のことを打ち明けた』
――『うちゅうじんってみんな、わたしに、いうの。このめがあおくてきもちわるいって』
『ぼくも宇宙人だよ』
『えっ?』
『だって、君が宇宙人なら、君からみたぼくも宇宙人じゃないか』
『へんなの、あなたもうちゅうじんなの?』
『うん。ぼくも宇宙人。みんなこの宇宙にすんでいる宇宙人っていうかぞくなんて』
『みんなうちゅうじんでかぞくなの?』
『だから、ぼくも、君も宇宙人』
『じゃあ、わたしをうちゅうじんだといってくるひとたちもみんなうちゅうじんでかぞくなの?』
『うん、ぼくらみんな宇宙人』
『あのときの会話が、どれほど私に勇気を与えてくれたか。だから、これだけどうしてもあなたに伝えたかった。私、どうやら、貴方のこと、好きだったみたい』
「……ふざけんなよ」
『煙草やめてね。音楽続けてね。どうか、幸せになってね。大好きだったよ、俊介』
「馬鹿野郎、それは、それは……」
天音の声が止んで、その場に俊介はしゃがみこんだ。
「それは、俺のセリフだっての……」
頭をくしゃりと、掻き、見上げる。
下手糞な歌が聞こえる。
「ふざけんなよ、てめー。音楽なめてんじゃねえぞ」
それから俊介は、設立される軽音部の顧問になるのだが、それはまた別の話。
そう誰もがきっと最初は正体不明の宇宙人。
理解ができずに戸惑う存在。
だからこそ僕たちは、これからも、正体不明の宇宙人を知ろうとするんだろう。
時には、苦しくなって、存在を否定したくなっても、確かにそこに宇宙人は存在しているのだから。
学校を出た駆の元に、校門で待っていた木下雫が駆け寄ってきた。
二人はなにやら騒がしく学校の校舎を出て行く。
――こんな日常が、これから続いていく。
ラケンに投稿しようと思ったんですが、今は感想をかくよりこれを改稿したほうがいいと思って、それに専念しています。もしもお読みいただいたなら、この作品と見比べていただけたら嬉しいです。
今書いているものは、これがないと、できないものですから。




