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Blood Red  作者: 井村六郎
Episode 2
4/40

後編

 メアリーが魔女喰いを全滅させた事で、結界は消えた。消える直前でヘルファイアとナイトメアを収納し、メアリーは瑠阿に片手を差し出す。

「大丈夫?」

「……うん」

 瑠阿はメアリーの手を取って立ち上がった。

「魔女喰いの気配がしたから、すぐに追いかけてきたんだ。真子も大丈夫?」

「は、はい。瑠阿とメアリーさんのおかげで……」

 メアリーは真子も気遣い、真子は自分の無事を伝える。

 破壊された町は元通りになり、先程の光景が嘘だったかのように、人の姿が溢れていた。

 だが、瑠阿も真子もメアリーも、こことよく似た、しかし全く違う場所で起きた事を覚えている。嘘でも、冗談でも、夢でもない。

 ひとまず三人は、落ち着く為に人気のない場所に移った。

「……あたしのせいで、真子まで巻き込まれた」

「君のせいじゃない」

「メアリーだってわかってるでしょ!? 魔女喰いの習性の事!」

 メアリーは瑠阿を慰めようとしたが、瑠阿からそう言われて言葉に詰まった。

「……魔女喰いは、一人前の魔女なら、倒す事はそんなに難しくない。でもその代わりに、魔女喰いは頭がいいの」

 魔女喰い一体はそこまで強くない。一対一で戦えば、瑠阿にも勝機はある。

「必ず群れで行動し、そして自分達でも仕留められるくらい、力の弱い魔女だけを狙う。あたしみたいな、未熟な魔女を……」

 そこでようやく、真子は瑠阿が言おうとしている事を理解した。

 魔女喰いが狙う魔女は、弱い魔女だけである。強い魔女は、絶対に狙わない。

 つまり魔女喰いに狙われるという事は、お前は弱いと言われているのと同じ事なのだ。

「あたしが弱くて未熟なせいで、真子まで危険に巻き込んだ。父さんが殺された時もそう。あたしが強かったら、あんな事には――!!」

「瑠阿!!」

 メアリーは瑠阿を抱き締めた。

「君が気に病む事はない。君は生きてるし、真子だって怪我一つないんだ。だから今日のところは、それでいいじゃないか」

「よくないわ! メアリーは自分が強いから、そんな事が言えるのよ!」

「落ち着いて!」

 取り乱す瑠阿を落ち着かせる為、メアリーは隷従の指輪を使って命じる。すると、今にも泣き出しそうだった瑠阿が、何事もなかったかのように落ち着いた。

「隷従の指輪は、ただ相手を服従させるだけじゃなくて、こういう使い方も出来るんだ」

「……隷従の指輪?」

 真子はいぶかしむ。なぜなら、メアリーも瑠阿も、指輪をしているようには見えないからである。

 この隷従の指輪は、一般人に服従関係を悟らせない為に、魔力を持たない者には見えないよう作られているのだ。だから、真子には二人が着けている隷従の指輪が見えない。

「指輪を着けた理由については、長くなるから今は言わない。もっと大事な話があるから」

 メアリーは真面目な顔をして、瑠阿に語りかける。

「瑠阿、よく聞いて。僕も両親を、異端狩りに殺されたんだ」

「「!?」」

 これには瑠阿も、真子も驚いた。メアリーもまた、瑠阿と同じ経験をしていたのだ。いや、母も殺されている分、瑠阿より悲惨である。

「その時も今の君みたいに、自分の弱さを嘆いた。でも、だからといって焦っても意味はない」

 メアリーは両親を殺されてから、異端狩りに復讐する為、世界を旅しながら、長い時間を掛けて腕を上げてきた。

「君の人生はまだまだこれからなんだ。だから、焦らなくていいんだよ。少しずつ、魔女になっていけばいい」

 瑠阿を諭すメアリー。

「……強くなりたい」

 そんな瑠阿は一言、ぽつりと呟いた。それでもやはり、力への渇望は捨てられない。二度と大切な人を失わない為に。そして、父を殺した異端狩りに復讐する為に。

 すると、メアリーは言った。

「じゃあ、僕が手伝ってあげるよ」

「えっ?」

 メアリーからの思わぬ申し出に、瑠阿は目を丸くする。

「僕はまだまだ、魔女として修行中の身だ。とはいえ、学んできた事は君やお母さんより多いつもりだよ。だから、僕が知ってる魔法を教えてあげる。そうすれば、君はもっと強くなれる」

 メアリーはダンピール。年齢を聞いてはいないが、きっと生きてきた時間は青羅よりも長い。だから、彼女から魔法を学べば、間違いなく強くなれる。

「どうかな?」

「……お願い。あたしを強くして!」

 瑠阿は力強く頼み、メアリーは頷いた。

「……なんか、羨ましいな……私も魔女だったらよかったのに」

 二人のやり取りを見て、真子は疎外感を感じている。

「魔女にならなくても、真子はあたしの一番の友達よ」

「君は人間だからいいんじゃないか」

 しかし、二人ともそんな事はない全然思っていなくて、むしろ真子が人間でよかったと思っていた。

「少なくとも、異端狩りから優先的に狙われなくて済むだろ?」

 その言葉には、真子は心から同意した。



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