プロローグ 海だーーーーーー!海・・・・・・え?
海はいいものだと思う
そのまま飲んだりすることはできないが、生命の命の源といえるだろう
生命の始まりは海だったらしいし、海は命には不可欠な水を多く含んでいるのだから
だがそんな海が本領を発揮するのは、やはり夏であるといえる
夏とは言わずもがな四季の一つで、気温が1年で一番高まる時期である
故に、暑さに耐えられない者たちが、冷たい水が豊富である海に赴くのは必然ともいえるだろう
そしてそんな時期だからこそ、布の面積量が狭い『水着』を着用するのもまた必然である
そうだ、『水着』なのだ
「どういうことだこれは・・・・」
この蒸し暑い夏の真昼間に、今俺は海に来ている
言っておくが、俺がここに来たのは別に女性の『水着』を見に来たのでは無い
俺はただ必然に流されただけ。そう、これはただの必然。生命体として当たり前の行動!
ただ、なぜだ生命体が夏に海に来るのが必然だというならば、なぜ・・・
「なんで・・・・。なんで誰もいないんだよここには!?」
俺はついに叫んだ
どういうことだ!?なぜだ!
俺は自分のイライラを晴らすかのように頭をかきむしる
俺、古都部 洲はまぁまぁブラックな企業で働いてる25歳
今日はそんな企業でたまった疲れを癒そうと、英気を養う、もとい『水着』を見に来たというのに・・・
そう、もうお分かり頂けただろう
僕のいるこの海には、水着美少女どころか、人っ子一人いない
「うぐぅぅぅぅ・・・・」
ただ波の音だけが聞こえてくる世界で、ただ一人水着で遊ぶ気満々に見える自分の姿は、思い浮かべるだけだなんと虚しんだ
「いやいやいや!?流石におかしいってこれは!」
俺は首を振って否定する、決して自分がかわいそうだからというわけではない
こんな状況はさすがにおかしいのだ!
「何がどうなってるんだよ全く!何かの撮影か何かかな!?」
だというのならば撮るんじゃない!こんな自分をとるんじゃない!
いや、考えるな。ネガティブな方に思考を持っていくな俺!
「ぐっ!ほんとになんで人がいないんだ!」
今日はこんなに蒸し暑い日だというのに・・・・
蒸し・・暑・・・・
お、おおう?
「今日、ちょっと寒いか?」
あれ?なんか気温下がった?
俺は少し身震いする
いや、最初からこんな寒かったのかな?
でもニュースでは今年最高の猛暑日って・・・
『・・・・ね・・・』
「はい?」
海の向こうから何か声が聞こえた気がして、俺はそちらに焦点を合わせようと、目を凝らしてみようとする
だが何もみえない、今日の晴れ渡った晴天しか
「気のせいか?」
どっちでもいいが今日は帰ろう、寒い、風邪をひいてしまう
俺は自分の体をさすりながら乗ってきた車で帰ろうと、すぐそこに止めてあった自前の車に手を付ける。が・・・
「冷た!・・・てか空かない」
車のドアは開かなかった、しかも心なしか触ったノブが冷たい気がする
まさか壊れたか!?
嘘だろおい・・・
「やっべどうしよこれ・・・・。とりあえず電話で・・・は?」
車会社に電話しようと、携帯を取り出して俺はハトが豆鉄砲を食らったような顔になる
「け、圏外・・・え?」
ちょ、ちょっと待て!ここ結構有名な海だぞ!?そこが圏外!?
ここってもともと電波通ってなかったの?
「それはさすがにねぇ。これちょっとおかしいぞ・・・・」
俺が知る限りでは、この海は毎年来客20万は超える場所だ
さすがにあり得ない
「なにが・・・・・。起こってんだ・・・・」
俺は寒気を覚えて冷や汗を流しながらあたりを見渡す
いや、何も変わったところは無いはずだ
そこには海があり・・・・あ?ちょっと待て・・・
「海、凍ってないか?」
気づけばもう波の音が聞こえなくなっていた
海は固まって・・・。冷気を放って凍っていた
「なんだよ・・。これ・・・」
あたりもだんだん曇って、霧に覆われていく
「ッ!」
悪寒が走るとはこういう事をいうのだろう
人は理解できないものに恐怖を感じるという
まさに今がその状況だ
『・・・・ね・・・・』
「なんだ!?」
また声が聞こえた
響くような、脳に直接伝わるような
誰だ!誰なんだ!?なんなんだ!この声は!この状況は!?
心臓の鼓動が高まっていく、それは恋とかで感じるようなドキドキではない、生存本能による見を守る、戦闘態勢に入るためのドキドキ
ゾクゾクと、首筋を何かが伝る
足がだんだん冷たくなって・・・・
「おい、なんだよこれ・・・・」
寒気が全身に広がっていく、頭が痛くなるほどに危険信号を体が脳に伝えている
その凍った自分の足を見た瞬間
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
絶叫をあげた
凍っていく、足から徐々に、体全体が
怖い、何、わからない、なぜ
『・・・・・し・・・・・・』
「誰!?」
疑問に、疑問に答えてくれ!
「なんだよこれ!?誰だよお前!?ッ!!!」
もう首まで凍ってしまって、まともに声が出なくなった
死ぬのか?俺死ぬのか?嘘だろ?嘘だろ!?
『・・・・・し・・・・・』
何を、何を言いたいんだ。何を伝えたいんだ
凍結が全身に回っていき、意識が途絶えかけた時に、その答えは明かされた
『死ね』
全身が凍ったとき、内側からはじけるようにして、俺は、砕けた
だーーれーーかーー・・・、感想をくださいませ~~~・・・・・(涙)