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目が覚めたら記憶が戻っていた。

が、それだけだった。


例えるなら長編ドラマを見終わった感じ。

確かに思い出した前世の私も今の私も受け入れた。しかしそれだけだ

あんまり感情は揺れ動かないものだな。


それよりもと周りを見渡して思う

ここはどこだ。

寝室のようで大きなベッドがその存在を主張している

生憎今は夜のようでベッドに彫られている紋様や部屋に飾られてある高そうな調度品なんかは暗くてその価値など分からない。

まぁ、明るくても自分に物の価値など正確に測れるわけでもないが。


そんな全体的に高そうな部屋は今世は元より前世の記憶にもない。

ただこの部屋の主は想像がつく

女神様の言葉や自分の感が正しければ__


この高そうなベッドに寝ている人のそばに寄って確認してみるべきか

いや、こっそり逃げ出すべきか

もし考えてる人の通りなら部屋の外の気配など読めないが見張りはいるだろう

そんな部屋から私が出てきたら………怪しいよな

問答無用でばっさりいかれそうだ。

………扉はだめだ



そーっとベッドに近づく


そーっと


そーっと


ドキドキと今まで感じた事がないくらい心臓が音をたてている。


きっとこの掛け布団をめくり顔を確認してしまえば後戻りは出来ない

いや、既に退路はない。

やるしかない。

起きたらどうしよう…

お願いだから起きないでいてくれ!


ドクドクと血が巡って手が震える


慎重に


大丈夫


きっと大丈夫だから!


そーっと布団をめくる


灰色の瞳と目が合う


「___ひっ_____!!」


起きていた!!


布団を掴んでいた手を引かれ体制を崩し悲鳴がでかけた口はもう片方の手で塞がれた。

一瞬はして私は組み敷かれた。


色っぽい体制だがこれはそんな意味ではないのは分かる


灰色の瞳は剣呑な色を帯びているからだ


やばい

やばい逃げ出さなきゃ

殺される!!


「ほう、今回のは随分とあの女に似ている。アレに似ていれば私が気に入るとでも思ったか?むしろ似ていれば似ている程」


そこで男は言葉を切ったが空気で伝わる。

殺したくてたまらないと


だが


「宰相にけしかけられて来たかと思ったが……しかしそれにしては随分色がないな。かと言って___うむ、何も隠してはいないな」


確認の為か私の身体に這っている手をどかそうとバタバタと足を動かす。

私に馬乗りをしている男にはそんな私の全力の抵抗も意味が無いみたいだが



記憶ドラマの中の王子様はかっこよかった。それだけだった。

なのに、実際に見る王子様は記憶よりも老けているし妙な色気もある。嫌なくらい心臓がドキドキさせられる。

おいおい、今世で会ったどの人よりもかっこいいとか反則でしょ

頭が混乱する。これは恐怖か、はたまた一目惚れか。どちらにせよ心臓が爆発させられるみたいだ。


なのに、相手はもうあまり私に興味がないみたいだ。

確認が済んだのか捉えていた手を外し起き上がる。


「宰相には、私の方から言っておくお前ももう帰れ」


悔しいと思う


記憶ドラマの中の彼はそんな目で私を見なかった。

そんな冷めた目ではみていなかった。


自分でも理不尽だと思う。前世で自分からこの男を捨てた癖に今更こっちを見ろとか

見た目だって前世の方が確かに綺麗だっただろう

今の私は普通ランク

この男に釣り合うわけが無い。


でも……!!


ごくりと喉がなる。どうしようもなくこの男が欲しい。元々、私のものなのだ。例え捨てたものだとしても。この男は私のものだ。


「試してみようぜ!私に色気があるかないか。立つか立たないか」


ぐいっと男の襟を掴んでその薄い口に生まれて初めてのキスをした。


男は驚いたように目を開いていた。


あぁ、そんなに目を開いたらその灰色の目が落っこちゃうよ___




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