第一話 迷子1
第一話 迷子1
《四年の早見藍斗と二年、御門真護は至急第三小会議室に来るように。繰り返す四年の・・・》
始業式も終わり、午後からの入学式まで寮の自室でくつろいでいたのだが、新年度早々に校内放送で自らの名前が呼ばれたことに対して、御門は疑問に思っていた。
「俺、やっぱりなんかしたか?いや、でも藍斗サンも呼ばれてるしな。」
部屋を出る際に寮の同室の友人たちに「お前なにしたんだよ笑」とからかわれ少し心配になる。しかし放送で呼ばれたのが御門ただ一人か、仲の良い同級生や先輩が一緒だったならば説教の線がかなり濃いのだが、ともに呼ばれたのが問題児とは程遠いあの早見だ。説教の線はかなり薄いだろう。取り敢えず至急という放送だったので、御門は校舎内を走って第三小会議室へと向かっていた。
「おい御門、放送で呼ばれたからといって廊下を走るな。ただでさえこの校舎は古いんだ。床が抜けたりしたらどうする。」
目的地まであともう少しというところで後ろから声をかけられた。御門と共に放送で呼ばれた早見藍斗だ。
「藍斗サン、すみません。でも班長は時間だけには厳しいじゃないですか。それに怒ると何気に怖いですし。」
早見の不機嫌そうな表情はいつものことである。彼のチャームポイントである眼鏡を押し上げ、今にも説教をし始めそうな勢いだ。
「言い訳は聞かない。罰則として一週間トイレ掃除だ。」
「それは流石にないッスよ!!!!」
((ガチャッ
長い黄金色の髪をサイドで一本にまとめた青年が会議室から口論している二人を見つめる。
「二人とも廊下で立ち話もいいけど、こっちの用事が済んでからでもいいかな。」
二人に微笑むこの青年は日向野将司、退魔寺学院第一班…通称 森羅班の班長であり、この退魔寺学院の生徒会長である。
「新入生が行方不明!?」
御門の大きな声が部屋中に響き渡る。それも無理はないだろう、入学式まであまり時間もない。
「うん、久木田真琴くんって子なんだけど、新入生の待機場所にいなくてね。最初はトイレにでも行ったのかと思っていたんだけと、どうやらそうでもないみたいだし・・・。受付も済まされているから学院内か少なくても学院の近くにいると思うんだけど。一応うちの班に入る予定の子だし二人で捜してきてくれないかな?」
「分かりました。」
「んー・・・。まぁ了解ッス。」
早見はいつものように冷静に、御門は少し面倒臭そうに答える。
「ありがとう。先生にはもう許可をとってあるから今日中には見つけ出してね。」
俺達の了承を得る前に教師に話を通している時点で拒否権はなかったのではないかと御門は思った。
「俺は外を見て来るから御門、お前は学院内を頼む。小沢を見かけたら、彼奴にも捜すよう言っておけ。学院内だけでいいからな。」
「あれっ?零也サンはいいんスか?」
「彼奴はどうせ言うことをきかないだろう、ほっとけ。」
「ウッス。それにしてもまったく初日から迷惑な一年ッスね。」
「ふふっ・・・。可愛げがあっていいじゃないか。」
「可愛いとかそういう問題ではないと思いますが・・・。」
「でも藍斗は可愛いものが好きなんだろう?」
早見はこう見えても飼育委員長である。
学院内の犬や猫、兎をはじめとした動物たちは一部例外もあるが、殆ど飼育委員が管理をしている。
「勘違いはやめて下さい、会長。流石に十五歳の男は可愛いとは言いません。俺が好む可愛いに当てはまるのはのは六歳までです。」
この早見という青年は神経質でプライドが高く、冷たくみえるが根は純粋でメンタルがとてつもなく弱い。もう一度言おう根は純粋である。
「「・・・・・・・・・。」」
「なんで二人とも黙って・・・。」
「藍斗サンってショタコンなんスか?」
「なんでそうなるっ!!」
「じゃあロリコン?」
「違いますっ!!」
「でも今の言い方だとそう捉えられるよ。」
「~~~~~っ!!((シュッ」
からかわられこの状況に耐えられなくなった早見は、彼の持っている能力の一つテレポートを使った。
恐らく新入生の捜索に学院内に御門を配置したのも、自らの能力を使って外を捜索させた方が時間短縮に繋がると思ったからだろう。
「あっ・・・逃げた。」
「少しからかい過ぎたッスかね?それじゃあ俺も一年捜して来ます。」
それに対してクスクス笑いながら日向野が答える。
「藍斗がヘマするなんてなかなかないから、たまにはいいんじゃないかな。うん、よろしく頼むよ。」