21歳のグール君。
あれからグールと別れた私達は、たくさんの赤や、ピンクの薔薇が植えられている幻想的な庭を通り過ぎ、豪華なドアを開けた。
すると、目に飛び込んできたのは玄関とは思えぬ広さの大空間。
「…………すご」
大理石で出来た上品な床と大柱。
本物のダイヤモンドをあしらった豪華で大きなシャンデリア。
目を奪われる絵画や、銀で出来た立派な銅像。女の子なら、誰しもが憧れるレッドカーペット!
___そしてなんといっても、踊り場付きの階段!!
左右二つにあってとっても便利!
あと!広いから走っても大丈夫…!
あぁ、ほら言った側から黒髪ツインテールの可愛い女の子が包丁振り回してこっちに走って来て…………え?
黒髪……
ツイン……テールの…
可愛い……
女の子が……
『包丁』
『振り回して』
………どこに向かってるって?
……いや、待て、見まちがいだ。
きっとそうだ。と、信じ隣にいるキーリルに問いかけた…
「あはは、キーリルぅ。あれは幻覚かなぁ?」
「…残念だけど、本当みたい」
が、
返ってきた言葉は私の期待を裏切るものだった……
うふふ。
そっかぁ、じゃあ……
「逃げるよおおぉおっ!!?…って、あれ?キーリルぅ?………………私を置いて先に逃げるなああぁぁあ!?」
キーリルの野郎、フリーズしていた私を置いて自分一人で逃げやがったああぁあ!!!
ふざけんなあぁあああ!!
あと、ツインテール!
なぜ私を捕まえようとするのだ!
「キーリル様あぁ!!その女は誰なのおおぉ!?私という者がありながらっ!!浮気ですかあぁあ!??」
「ひいぃいっ!?キーリル助けてぇ~!!」
怖い怖い怖い!!!
なんだよ浮気ですかあぁあ!って!!
キーリル彼女居たなら言えよ!そしたら少しは気使うし、こんなことにはならなかったぞ!?
「ちっ、言っとくけど彼女じゃないからね!…仕方ない……あの子は俺が引き付けるから、レンはグールの所まで走って!」
「りょーかーい!!気を付けてね!」
助かった!
こう見えても体力には自信がある。グールの所までは、楽勝だ
キーリルの、後で玄関に合流だからね!という言葉を聞くと同時に、グールの居る方へ向かった。
途中、美しい庭を通り過ぎ、後でゆっくり観賞しようと思いながら石畳を全速力で駆け抜ける
と…、見えてきたのは真夏の日差しを受け、汗だくになっているグールの横顔。
あの普通顔の見覚えある横顔はっ!!
私は意を決して、グールへ突進した。
「グールッ!?匿って…!!」
「あ、さっきの…って、ええぇえ!?なに、ぐぇっ!!」
ら、案の定…がら空きなグールのお腹へ突撃!
そのまま、お腹を抱えうずくまった。
「あー!ダメ、うずくまるなら、私を匿ってからにして!?」
「……」
「ダメだ!気絶してるッ!?泡噴いてる!あぁどうしよう!こうしている間にもツインテールが……」
ダダダダッ!
そんな効果音が聞こえそうなぐらいの速度で私達を追いかける黒髪ツインテールは、盤若の様な形相をしていた。
(……恐ろしいな……こんなのが家に居るって……)
果たしてここでやっていけるのか、不安を覚えながら色んな案を考えていると、一つの案が浮かんだ。
(そうか、その手があった!)
まず、泡を噴いてるグールを持ち上げて、と。
次に私が横になって…、熱ッ!
地面、熱すぎだろ!……いや、仕方ない。自分の命の為だ、我慢しよ……
(気を取り直して……)
グールの逞しい身体と、セメントの間に私の発育の良い身体を挟んで……
「キャー。グールが私を押し倒したー!」
棒読みで叫べばOK!
こうすれば端から見たらバカップルにしか見えないぞっ♥
…………なんてね
こんなのに引っ掛かるバカなんていな……
「あの女ぁ、どこ行きやがったあぁあ!!」
い。って言っとけば死亡フラグ回収出来るのか……
(フラグって…、便利だな……)
そのまま私達を通り過ぎて行った黒髪ツインテールは、真っピンクのぶりぶりワンピースをはためかせながらキーリルの方へ向かっていた。
___間違いない。アイツはブリっ子だ!
私はそう直感した。
「……ん、ぅ……あれ…」
びっくりした…
起きたのか、グール。……そんな見つめんなよ、照れるじゃねぇか。
あ、口元ピクピクしてる
「な、なんで…レン、様が……」
「様付けちゃう!?っていうか、グール覚えてないの?私にあんなことやこんなことしたくせに…」
「…ぇ……」
勿論、これは根も葉もない嘘だ。
の、……はずだ………。
だけどグールは真に受けたみたいで、瞬間、真っ青な顔になった
「そ、そんな……オレは…何てことを……!」
「あ、ごめん。今の無し。嘘だから」
…………は?って言って、グールの顔はアホ面に。
って、あ、あれ?グールから漂うドす黒いこのモヤは何?
「…………レン様?戯れも程々にしないと……
痛い目みますよ?」
____ギャアアァアーーッ!?
「ちょ、耳元で囁くな!!グールお前ムダに良い声で喋るな!!あと、顔近い!!」
「……ダメですよ?年上には、口の聞き方に気を付けないと。」
「だから!!…………ん?……年上?ちょっと待てグール。……今、何歳?」
私がもしかして、という顔をして訊ねると、グールは待ってましたとニッコリ顔で答える。
「21歳です」
「ウソだろ見えねぇ…。」
「よく言われます」
私は信じれない気持ちで、つい目の前にある顔をマジマジと見てしまう。
___黒曜石の如く黒い短髪に、サファイヤの様などこまでも澄んでる碧い瞳。
…健康さを醸し出している肌に、スッと通る鼻筋、形の良い唇。
…きっと笑えば暖かな日だまりのようなのだろう
あと、本気で怒ったら声がエロい。
……が、
「普通だ……」
「何なんですかアンタ!オレに喧嘩売ってんですか!?」
…………何?
「違う!私は売らない!買うんだ!」
「そういう問題じゃないですよ!?」
「レン、グールうるさい」
この声は、キーリル!!
「生きてたのか!?」
「死んでたまるかッ!」
綺麗な白髪を少々風にたなびかせ過ぎているキーリルの顔は、…老けていた!
「老けてないから!…………ごめんねグール。どうせレンが変な事しちゃったんでしょ?後から言って聞かせるから……。…レン、またあの子が来る前にちゃっちゃっと契約して終わらせるよ?ということでグール、レンの上から退いてくれないかな?」
「スゲー、ワンブレスで言い切った」
「はい!只今!」
慌てて私の上から退いたグールは、嬉しそうな顔をしていた…。いや、作る顔間違ってんぞ。そこは残念そうな顔しろよ
「じゃ、そういうことだから」
キーリルが私の首根っこを掴み、引き摺りながら戻ろうとした。
待て、グールに言い残したことがある
「ちょっと待て。…グール、さっきはお腹に突進して悪かった、ごめん」
これに関しては割りと罪悪感は感じてる。
けど、そんな事したの?と呟き笑いを堪えているキーリルの気配は感じない。
「え、あ…いや。大丈夫です」
「良かったね、許してくれるってさ。もう良いなら行くよ?」
「あと一つ!」
「まだあるの!?」
グールよ、そんな嫌そうな顔をするな。なに、一つだけだ。
「……私の発育の良い身体でムラムラした?」
「してたまるかッ!」
「…………むぅ。結構大きいよ、私?」
「何が?とか聞かないから!もうホント何なんですかアンタ!」
まぁまぁ、そうカリカリしなさんなって……
「もう行くね?」
え、ちょ、キーリル!?痛い、痛い、お尻痛い。
引き摺らないでって…!
お尻ヤケドしちゃうぅ!?
なに、怒ってんの!?
____そんなこんなでグールと別れた私達だった……。
今回も短いです……。
すみません…………。