広がる戦火
「魔理沙!!」
霊夢の瞳には《カグヅチ》とその主人であるキリコに対する怒りがたちこめていた。もしその場に彌生がいたら、霊夢と同じように怒りに狂っていただろう。だが今は、少女が一人。縁切りの神と火炎の神の二神を前にしていた。
霊夢は自分が神に仕える巫女である以上、神を相手にするのは不利だと分かっていた。しかし、それでも彼女には退く事ができない理由があった。魔理沙があれだけやられて黙っている事なんてできない。負けると分かっていても、大切な友人の為に戦い抜かなければならなかった。
「あんた達!魔理沙と同じだけの苦痛を味わってもらうからね!」
「ぷふっふはははは!」
キリコはいきなり大声で笑い始めた。
「それってさ!本気で言ってるの?あなた、今さっきのあの魔理沙って子の有り様を見てなかったの?それでもやるって言うなら仕方ないけど。」
そう言うと、キリコは刀本来の使い方で霊夢に斬りかかった。
「意外に刀を使うのね!」
「この後の為よ。戦いはね、戦略が肝心なのよ。」
キリコと霊夢は近接戦を続けた。その中、一瞬互いの動きが止まった。その隙を逃すほどキリコは戦いの素人ではなかった。
「おわりね。《悪苻 タイムアウト》。」
技の原理は彌生の《縁苻 タイムエンド》と同じだ。
霊夢が気がついたときには、すでに体には無数の斬り傷がついていた。
「あ〜もう。ムカつくはね!どこぞのメイドみたいな事をするなんてね!でも!それだけじゃくたばらないわよ!《霊符 夢想封印》!」
光の玉が重力を無視した動きで円をかきながら、キリコに襲いかかる。
「ちょっと油断しちゃったわね。」
キリコに当たったはずの光の玉はキリコではなく《カグヅチ》に直撃していた。主人の危険を察したのか、キリコに巻きつく形で主人の盾となっていた。
「あ〜あ〜。」
キリコは不満を漏らした。
火炎の神はもう、ただの黒い大蛇に戻っていた。
「あなた。なかなかやるのね。」
「主人の盾になるなんて、あんたのペットはりこうなのね!」
「ま、いっか。この子はどうせすぐ動くようになるし。」
キリコは刀の切っ先を霊夢にあわせた。
「最後にいいもの見せてあげる。《縁苻 存在の否定》。」
霊夢にはキリコが揺れたように見えた、その瞬間キリコの動きが見えなくなった。それ以前に存在すら、感じる事ができなかった。
霊夢は地面に這いつくばっていた。もう、体を動かすこともできなかった。。意識も朦朧としている。そんな中でキリコの言葉をきいていた。
「今さっきの技は誰も躱すことは出来ないわ。だから、あなたは悔やむことはないわよ。あれはね、私自身がこの世界との縁を切るのよ。だから、この世界のモノには存在すら感じる事は出来ない。でもこれね、カグヅチがいないと出来ないのよ。」
霊夢はキリコが去って行く姿を見ながら、気を失った。
「おい!霊夢!霊夢!」
彌生が博麗神社にきた頃にはもう、キリコの姿はなかった。
「あ〜。うるさいわね〜。もう少し寝てたいんだけど。」
「あ、すまない。つい、」
「分かったから、あっちに黒白の魔法使い見たいなのがいるから、そいつを見てあげて。」
霊夢は魔理沙の方を見たが、そこに魔理沙はいなかった。
「あ〜。それなら大丈夫だ。ハクがもう本殿の中にいれて休ませているから。」
「そう、ならいいわ。悪いけど私も運んでくれない?体に力が入らないの。」
それから、霊夢にキリコについての話を聞いた。
「彌生さん。早くどうにかしないとですね。」
「あぁ。その通りだ。」
何処かの竹林で…
「さあ、出てきなさい。私の分身ちゃん。」
キリコがそう言うとカグヅチのなかから、キリコと同じ姿をした者が二人でてきた。
「あなた達には、この世界で邪魔になりそうな奴らを殺してきて欲しいの。できるわよね?あなた達は私なんだから。」
「「当然できるに決まってるでしょ。」」
二人は不敵な微笑みをし、それぞれ、翠と蒼の大蛇を連れて何処かに消えた。
「さぁ!始めるわよ!幻想崩しを!」
広がる戦火 完
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「もし、登場させたい東方キャラなどいましたら、コメントで送ってみて下さい。作者のやれる程度で登場させるそうです。今後ともよろしくお願いします。」
神柱 ハク より