約束のトキ
未来を変える。それは、ただの希望論などではない。時として、人の心の内に秘められた力は想像をも超える。
その力を信じた彼女は一つの希望を娘のように愛する少女に、もう一つの希望をその少女を守るであろう少年に託した。
名も無い何処かの神社にて…
幻想郷の空を縁側に座りながら何と無く眺める彌生達がいた。
「なあ、ハク。」
「何ですか?」
「今日なんだよな。」
あまりにも静かに時が流れるせいか、彌生には今日が約束の日だとは思えなかった。
「今日ですよ。」
「だよな、ありがとな。」
誰か一人でも、自分の考えを肯定してくれる者がいれば、安心できる。人はそういうものだ。
「それじゃ、もう少し待ってみるか。」
彌生が縁側に寝転ぼうとした時だった。
「彌生さん、きますよ。」
アテナが空を見上げて呟いた。
「「は?」」
つられて彌生とハクも空を見上げた。
博麗神社にて…
そこには、いつもの二人が、いつものように縁側に座り、いつものようにお茶を飲んでいた。
「なあ、霊夢。」
「なによ。」
魔理沙は勢いよく立ち上がると、霊夢の前に立ち、問いかけた。
「あいつらがいつ来るかも分かんないんだぜ?こんなにだらけてていいのか?」
魔理沙の問いかけに対して霊夢は一つ間を置いて答えた。
「今さら何かしようとしたって無駄でしょ?だったら、いつもの様にしてればいいのよ。」
魔理沙はいっとき考えた後、正論だ、と言い霊夢の隣に腰を下ろした。
それから二人はいつもの様に時間を潰した。
「…魔理沙。」
「分かってる。」
二人の見上げた幻想郷の空にはあの時と同じ亀裂が入り始めていた。
紅魔館にて…
「咲夜」
「はい、何でしょうか?」
「フランを呼んで来てちょうだい。」
「分かりました。」
しばらくして、咲夜とフランがレミリアの部屋に入ってきた。
「何のようなの?お姉様?」
「フラン、よく聞きなさい。私の感が当たっていれば、じきに西洋の神が現れるわ。その前に、あなたは彌生達の所に行きなさい。」
「なんで?また…除け者に…するの?」
フランの瞳は、レミリアと咲夜に哀しみの気持ちを訴えている。
「除け者…ね。フラン、それは間違いよ。あなたが彌生のところに行く事で、あなたの能力が、必ず彌生達の助けになるわ。分かってくれるわよね?」
「私の能力が彌生達の助けになるなら…行くよ。」
フランドールが虹色の翼をひろげ、翔びたった空には、大きな亀裂が入っていた。
それはまるで、異界への羅生門とでも言うべきか…。