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逃げない覚悟

彌生とハクは妖夢との剣術稽古の為に紅魔館での騒動以来、紅魔館で過ごすようにしていた。フランはハクと過ごせる時間ができて嬉しそうだ。咲夜も自分の料理を褒めてくれる彌生とハクの事を気に入っているようだ。パチェも美鈴も気兼ねはないようだ。

こんな紅魔館には幾つかの決まり事がある。

この決まり事は紅魔館で過ごすモノ全てに適用されるらしい。その中には紅霧異変よりも前からある決まり事があったりもした。


Ⅰ【幻想郷ノ理ヲ受ケ入レル】


Ⅱ【必要以上ノ人間ヲ殺サナイ】


Ⅲ【図書館デハオ静カニ】


Ⅳ【自分ノ仕事ハ怠ケズニ】


Ⅴ【最後ニ皆ガ幸セデアルコト】



薔薇の庭園…テラスにて…

紅い薔薇の綺麗な庭園では、彌生とハク、妖夢の剣術稽古が続いていた。

その様子をレミリアはお茶を飲みながら見ている。

「フランに見られたら、また厄介な事になりそうね、咲夜。」

「お嬢様、その心配は無用かと…。」

咲夜の口元が緩んでいる。

「それもそうね、フランにはまた新しい友人ができたばっかりみたいだし、大丈夫ね。」

レミリアはそう言うとにっこりと満面の笑顔で咲夜の方を見た。

…この時、咲夜が時間を止めて鼻血を拭いていた事を知る者はいない。


薔薇の庭園にて…

薔薇が綺麗に咲く庭園に伝わる緊張感。これが、妖夢の言う稽古にうってつけの環境なのだろうか。激しく美しい一瞬の攻防を見せた後、彌生と妖夢の距離はまた広がっていた。遠過ぎず、近過ぎず、この繊細な距離感の中に張り詰める緊張感は観ているだけの者の心も緊張させる。

この緊張感の中、先に動きを見せたのは彌生の方だった。

「先の技、隼!!」

二人の静寂を突き破り、彌生の左片手突きが妖夢の左胸を捉えようとした。

「いい突きですね!でも!」

彌生の突きを右手の観楼剣で受け流すと妖夢は左向きに回転して左手に持つ白楼剣で彌生を狙った。

妖夢が回転した瞬間、彌生はすぐに対抗する技を出した。

「返し技、飛燕!」

妖夢の白楼剣と彌生の白刀が切り結び金属特有の音が聴こえた時、妖夢の白楼剣は弾かれ代わりに彌生の白刀の鞘が妖夢の脇腹を打っていた。

「うっ…。」

「ごめん手加減はしたつもりだけど。」

妖夢は少しだけ痛がった。それも仕方のない事だ。いくら手加減をしたからと言っても、鞘で脇腹を打たれれば誰でも唸ってしまう事だろう。

「手加減…ですか。」

「本気で稽古をしていないって事じゃないよ。脇腹を打つ瞬間に力を弱めただけだ。」

そう言いながら彌生は少し頭をかいた。その言葉を聴いた妖夢は一つ深い呼吸をした。

「そうですか。本気の彌生さんに、してやられた訳ですね。だったら、仕方ないですね!」

妖夢はすぐに笑顔になった。

「妖夢に一発、当てる事ができて僕は相当嬉しいんだけど…何だか喜べないな。」

「私もです。でも、本当にやり切った感じがします。」

ハクはそう言いながらもとの人の姿に戻った。

今回は剣術の稽古と言う事もあり、能力や弾幕などは使用しなかった。

妖夢が帰ろうとするとハクが妖夢を引き止めた。

「妖夢さん!一つ聞きたい事があるんですけど。いいですか?」

妖夢はきょとんとした顔で答えた。

「はい。いいですけど、何ですか?」

「私と初めて会った時、何で私達を助けに来てくれたんですか?」

真剣に聞くハクに対して、妖夢は、あぁ〜、と相づちを打つと、こう答えた。

「私が助ける事になったのは、私の仕える家の主様が行って来いと言ったからです。確か理由は…。人助けも何かの縁とか言われた気がします。」

「人助けも何かの縁ですか。変な事聞いてすみませんでした。」

「いえいえ、大丈夫ですよ。」

妖夢はこの後、ハクと少し話をしていた。その間に彌生は紅魔館の中に戻り、レミリアのところに行っていた。

後から戻ってきたハクに彌生が何を話したのか聞くと、もう妖夢さんは来ないそうです。他の事は内緒です。と言われたそうだ。


薔薇の庭園…テラスにて…

彌生のところに戻ってきたハクは少しだけ話をするとすぐに何処かに行ってしまった。テラスに居るのは彌生とレミリア、そして咲夜の三人だ。

「なぁ、レミリア。」

「何かしら?」

「あと半月、あるかないかだよな。僕はキリコに勝つ事ができるのかな。」

彌生の弱音を聞いたレミリアは鼻で笑った後に言った。

「一人で戦うんじゃないでしょ?あなたは十分に頑張っているわ。あとは、勝負の瞬間に逃げない覚悟よ。」

そう言った後、レミリアは昼は眠い、と言う理由で自分の部屋に戻った。

咲夜はそのままレミリアについて行ったようだ。

テラスに残された彌生は一人、真紅に染まった薔薇を眺めながら少し考え事をしていた。その彌生の心からは、もう迷いの念が断ち切られていた。



紅魔館…地下室にて…

その部屋は地下にあるだけあって、少し湿気が多い気がする。その部屋には大きなクマなど、多くのぬいぐるみが飾られていたりするのだが、そのいくつかは無惨な姿になっている。そんな中に一人の吸血鬼と、その吸血鬼の新しい友人がいた。

「あの〜。フランさん。ここは…。」

「私の部屋だよ!」

笑顔で答えるフランと対象的にアテナは少し気難しそうな表情をしていた。



逃げない覚悟 完


読んで下さった方、本当にありがとうございます。

感想や一言、貰えたらとても嬉しいです。

では、次回で会える縁を信じて…。


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