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二本の刀と一本の刀

葉桜の季節も過ぎ、落葉が多くなってきた幻想郷。ある場所の桜は花を咲かせる事無く、落葉を落とす事も無く変わらぬ姿でいた。


紅魔館…薔薇の庭園にて…

残り半月を過ぎた頃から、よくこの庭園に来る半人半霊がいる。

「あの~!すみませ~ん!」

紅魔館の門の前には、おかっぱの白い髪の少女がいた。

「あ、妖夢さん!咲夜さんから話は聞いています。どうぞ。」

あの異変以来、ここの門番は昼寝もする事無く仕事をしている。良い事なのか、どうなのか。それはメイド長にも分からなかった。

「それでは、お邪魔します。」

妖夢は一礼して門をくぐると、館の方には行かずに、薔薇の綺麗な庭園の方に向かって歩いて行った。


薔薇の庭園では彌生とハクが新しいスペルカードの練習をしている様子をレミリアが見ていた。

「そろそろ来る頃ね。それじゃ、彌生。頑張るのよ。」

レミリアはそう言うと、館の中にもどった。

「彌生さん。それじゃ、頑張って下さいね!」

「おう!って…おい待てハク。僕はスルーしないぞ。」

「あはは~。やっぱり私も一緒にやるんですか。」

ハクは少し苦笑しながら彌生の隣に戻ってきた。

「あの方、来ますかね?」

「ああ、来るだろう。レミリアもそろそろって言ってたし。」

ハクと彌生が話をしていると、おかっぱの白髪の少女が庭園の方にやって来た。

「あ、本当に来た。」

「ですね。来ましたね。」

「ん。来てはいけませんでしたか?」

妖夢は少し不機嫌そうな表情で彌生とハクの顔を交互に見た。

「いやいやっそんな事ないって。こうやってちゃんとした剣術の練習ができるのは妖夢のおかげだし。」

「まぁ。私も何もしないよりはいいですし。」

なぜだか、妖夢と話す時だけハクは妙に棘がある話し方をする。何か気に食わない事でもあるのだろうか。

「それじゃ、早く稽古を始めましょうか。」

簡単な挨拶を済ませるとさっさと稽古を始める。これはいつもの妖夢のやり方だ。親しくなり過ぎず、が稽古をする上ではいいらしい。

「ハク、準備しろ。妖夢さんは今日も手加減してくれそうにないぞ。」

妖夢は二刀あるうちの一つである楼観剣を早々と構えていた。

「彌生さん、早く刀を構えて下さい。多分、剣術を扱う程度の能力を持っている私に彌生さんは勝つことは出来ないと思います。でも、その中で、技術をも覆すあなたの能力を私と私をここに来させている方は期待しています。長話、申し訳ありません。」

ハクはそれを聞くとすぐに白蛇に戻り彌生の右手に巻きついた。

「はぁ…。この人が来る理由がやっと分かりました。彌生さん。私、この人に勝ちたいです。」

「そうだな。妖夢と稽古が出来るのもあと少しだし…そろそろ勝ちたいな。」

彌生は白刀を鞘から抜かずに、そのまま抜刀の構えをとった。

「その構えは初めて見ますね。やっと本気で勝ちに来てくれるんですね。」

妖夢はとても嬉しそうで、楽しそうな目をしている。楼観剣を脇に構えた。

「それじゃあ。」

「始めましょうか!」

妖夢は掛け声と同時に彌生の間合いまで一気に入ってきた。その間合いに入る瞬間を捉える為の抜刀の構え。妖夢が間合いに入ろうとした時にはすでに彌生の抜刀が妖夢を捉えていた。

…相手が妖夢でなければ、彌生の勝ちは決まっていただろう。

彌生の抜刀は妖夢の持つもう一つの刀、白楼剣に受け止められた。いつ抜いたのかは分からないが妖夢の左手には白楼剣が握られていた。

抜刀は受け止められる事を想定しないが為にその後が不利になる。

彌生の白刀を受け止めた瞬間を勝機と見た妖夢は右手に持つ楼観剣を右脇の位置から斬り上げようした。

「勝負あり!」


「じゃないさ!!」

下から斬り上げられる楼観剣を彌生は左脇から抜いた刀の鞘で受け流した。そのまま楼観剣は受け流されるままに空気を斬り上げた。今、楼観剣が空を斬った瞬間。妖夢の右脇は無防備そのものだ。彌生は受け流した鞘でそのまま妖夢の右脇を狙った。

「俺の勝ちだ!」

だが、彌生の鞘が妖夢の右脇を打つ事は無かった。

…彌生の鞘で楼観剣が受け流された時、妖夢は自分の右脇が無防備になる事を計算に入れ、楼観剣を斬り上げる反動を利用して左向きに回転し、白楼剣で彌生の白刀を弾きながら、その場から移動した。鞘をすれすれのところで避けるとハクは一旦間合いを取った。

「やりますね。彌生さん。」

「そうか?僕は妖夢にいっぱつ喰らわせる事に必死なだけなんだけどな…。」

…薔薇の綺麗な庭園では、刀と刀による激しい稽古がまだまだ続く。


白玉楼にて…

そこでは幽々子がお茶を飲みながら、物思いにふけっていた。

「はぁ〜。あの娘はちゃんとやってるかしら。心配になるわね。」

妖夢を紅魔館に行くようにしているのに心配になる幽々子はやっぱり幽々子だ。


二本の刀と一本の刀 完

読んで下さった方、本当にありがとうございます。

妖夢が紅魔館までで向いて彌生達の稽古をする。なんてあまりない事ですね。次回、妖夢と彌生、ハクとの勝敗が決まります。どうか次回もよろしくお願いします。

感想や、一言、ご指摘など、気軽に下さいね。

では、次回で会える縁を信じて…。



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