smiling紅魔館
狂気に染まった幼い瞳。その瞳に映る少年は白い鞘に収められた刀に手を掛け、真っ直ぐにこちらを見据えていた。幼き瞳は、なお紅く染まる。
紅魔館…大広間にて…
レミリアの瞳が、紅く染まるにつれて、その小さな手には槍の様なものが型どられていく。
「死の淵をさまよいなさい!《神槍 グングニル》!!」
紅く燃える神の槍がついにその姿を現した。
「あれか…確かに、俺の能力を試すには持って来いの代物だな。」
彌生はグングニルを確認すると弾幕を放った。
「そんな弾幕。意味無いわよ。さぁ、終わりにしましょう!」
レミリアは弾幕をグングニルで振り払うと彌生に向けて放った。
その時、白い小さな弾幕が一発、彌生のところに飛んで来た。レミリアはこの弾幕に気づいていないようだ。
「レミリア!まだ終わらないさ!」
レミリアの放った紅く燃える神の槍は紅く燃える炎剣に止められた。
「まさか、あの炎剣は…。」
彌生の前には金髪の紅い服の少女がいた。
「お姉様!ただいま!」
「フラン!まさか、あなたもこの騒ぎに関係しているの!?」
「ごめんなさい!この騒ぎは全部!私のせいなの!」
一瞬、レミリアの動きが止まった。
フランのいきなりの登場と発言にレミリアは、はぁ、と小さいため息をついた。彌生は、もしかしたらこのまま丸く収まってくれるかもしれない、と期待した。
「フラン…。やっていい事と悪い事があるでしょ!!」
彌生の期待とは真逆の結果になってしまった。
「彌生!早く!もう、もたないかも!!」
フランが持っているレーバテイン自体がいくら強くても、レミリアのグングニルを受け止めるのは容易では無かった。
彌生はフランの前に出た。激しく火花が散る中で、グングニルに手を伸ばした。
「彌生!何をする気なの!それに手を掛けたら、あなたの腕が持っていかれるわよ!やめなさい!」
レミリアには彌生の行動が全く理解できなった。彌生にはレミリアの声も聞こえていた。しかし、彌生は伸ばした腕を戻さなかった。
「フラン!いち!に!さん!で、そこから離れるんだ!」
「分かった!」
「いち!」
「「に!」」
「「さん!」」
彌生がグングニルに手を掛けた瞬間、まるで閃光弾が爆発したかの様な光に彌生は包まれた。フランはその場から移動しながら、彌生が光に呑み込まれるのを確認していた。
「私のレーバテインの時と、様子が違う…。」
「フラン!一体なにが起こってるのか説明しなさい!」
レミリアに今の状況が理解できないのは当然の事だろう。
「お姉様!」
フランが急いでレミリアのところまで行った時、閃光が弾けた。
「レミリア!フランに話を聞く必要はないぞ!」
閃光が弾けたあと、そこには神の槍を片手にレミリアとフランを見上げる少年がいた。
「そんな!私のグングニルが!一体なにが起こっているのよぉ〜!」
レミリアの小さな瞳は元に戻っていた。その代わりに、もう少しで泣いてしまいそうな表情になっている。
「すまないレミリア!ここまで降りてきてくれないか!これについて説明したいんだ!あと、フランとハクも来てくれ!」
「ハクさん!?あなたも関わっていたの!?」
「すみませんレミリアさん。ちゃんと説明するので…。」
ハクは申し訳なさそうに彌生のところまで。
フランは少し楽しそうに彌生のところまで。
レミリアは困惑しながら彌生のところまで。
それぞれ色々な思いを持ちながら彌生のところに集まった。
「それじゃ、三人とも私に分かるように説明して貰いましょうか。」
それから、ハクと彌生とフランの三人で彌生のもう一つの能力と、その能力の仮説を説明して、なぜこんな事をしたのかも説明した。その間にレミリアもいつもの調子に戻っていた。そして、グングニルの消し方もレミリアから教わり、消しておいた。
「はぁ…そんな事で…。それにしても、こんな事をする前に相談してくれなかったのはなぜかしら?」
ハクと彌生は目を合わせた後、苦笑いをした。
「あの…お姉様。それ…私のせい。」
フランが小さな声で小さく呟いた。
「だって…お姉様、彌生に本気で怒ったりしないと、本気で、グングニルを出したりしないでしょ?」
彌生とハクはまた、レミリアの方をみて苦笑いをした。
「フラン。あなたの気持ち、分からなくも無いけれど…。今回のコレはやり過ぎよ。」
「ごめんなさい。」
「うん。分かってくれたなら…。今回は許してあげましょうか。」
レミリアは優しくフランの頭を撫でた。同じくらいの背丈だがどちらがお姉さんなのか、一目で分かる。
「で、彌生。あなたの能力とやら、はっきりしたのかしら?」
「あぁ。レミリアのおかげでよく分かったよ、この能力。」
彌生が言うには、この能力には、二つだけ、条件があるらしい。
まず、一つ目の条件は必ず、自分がその対象となるものに触れている事。
そして、二つ目の条件はその対象となるものを所有していた者から、何かしらの思いを持たれなければならない。と言う事だ。
二つ目の条件を簡単に言えば、少しでも彌生に対して、良心を向ける事と言えるだろう。フランもレミリアも、同じ様に、彌生を心配し、気遣っていた時に彌生の能力は発動している。この小さな事が意外に大切らしい。
彌生の説明が終わった後、フランが聞いてきた。
「ねぇ、彌生。その能力。仲間のものしか使えないって事?」
「まぁ。基本的にはそうだな。」
「でも、いいじゃないですか。彌生さんの能力がどんなモノなのか、はっきりしましたし。レミリアさん、今回は本当にご迷惑をおかけしました。」
「僕からも、本当にすまなかった。」
ハクと彌生が少しやり過ぎだと思うくらいにレミリアにもう一度、謝った。
「彌生にハクさん、そんなに謝らなくても大丈夫よ。」
レミリアも、ハクも、フランも、彌生にも、自然と笑顔が戻っていた。
「あ、あの中の二人は…。」
レミリアの視線の先を彌生達も見た。そこには白い半球があった。
アン•アリーナ•コロッセオ内部にて…
そこには、自分の能力ではなく、《心•技•体》のみで、互いにしのぎを削る二人がいた。
smiling紅魔館
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では、次回で会える縁を信じて…