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紅の館の侵入者 後編

紅魔館への突然の侵入者。それが何者なのか分からない館の主は機嫌があまり良くないようだ。館を包む紅い霧は館の外からの更なる侵入と館からの脱出を防いでいた。


紅魔館…大広間にて…

この大広間には館の主が座る為のまるで玉座の様な椅子が一つある。もちろんそこに座っているのはレミリアだ。

「ねぇ、咲夜。ここに入り込んだ哀れなネズミはもう捕まったかしら?」

「すみません。お嬢様。まだ見つかっていません。見つけ次第すぐにお知らせします。」

「そう。ありがとう咲夜。」

レミリアは不敵な笑みを浮かべた後、ゆったりと椅子に座り、その時が来るのを待つ事にした。

紅魔館…誰もいない部屋にて…

そこには4人の侵入者がいた。

「おい、なんか紅い霧が出て来たけど本当に大丈夫なのか?」

「もぉ~怖がりだな~。大丈夫、だってコレもお姉様の仕業だもん。それにそんな簡単に見つかったりしないよ。」

金髪の少女は本当に楽しそうだ。まるで、かくれんぼを楽しむ子供の様に。

「それじゃ、私の考えたお姉様に本気を出させる方法を話したいと思います。」

本当に楽しそうな少女を叱る様な事をしようとは、ここにいる他3人は思いもしなかった。

「それはどんな方法なんだ?」

「それはね~。お姉様の大事にしている大広間の大っきな椅子を隠す。」

少女の大胆かつ無理のある提案に他3人は苦笑いをした。

「無理かもしれないけど、コレが一番お姉様を怒らせる事だと思うの。やっぱり、ダメ、かなぁ?」

上目遣いで見つめられた他3人はこの案に反対することが出来なかった。無理かもしれないなら、成功させる方法を考えればいいだけの事。

「要するに、その椅子さえ隠せればいいんだよな…。」

少年・少女考え中……

「あ、出来るじゃないですか。」

銀髪の少女は笑顔でその方法を話した。

「よし。それでいこう。みんないいか?」

「「はい。」」「うん。」

少年・少女は誰もいない部屋からでてレミリアの大事にしている椅子を隠す為に動き出した。

紅魔館の長い長い廊下で…

そこには紅魔館の全ての部屋を調べる為に長い廊下を歩き回っている咲夜がいた。今、次の部屋に入るところだ。

「はぁ。いったい誰がこんな事を…。」

咲夜の目に入ったのは中身が飛び出したクマのぬいぐるみだった。そのぬいぐるみは部屋の中央に置かれている。片方の目が取れ掛けたぬいぐるみは咲夜を見つめている様にも見えた。

「こんな事をする方には心当たりがありますが…。早く見つけましょうか。」

そう言うと、咲夜は部屋から出た。もちろん今さっきのぬいぐるみは綺麗になおしてある。時間はたっていないのに、ぬいぐるみは部屋の中央に元の姿で座っていた。咲夜は満足そうな笑顔を見せると、次の部屋に向かって歩きだした。

紅魔館…大図書館にて…

そこには本の整理をする小悪魔と、少しは整理された本の中で、本を無表情のまま読んでいる魔女がいる。

「あの~ここは何処ですか?」

銀髪の少女は、金髪の少女に聞いた。

「ここはね…ほら、あそこに本を読んでいる人がいるでしょ。」

金髪の少女が指し示す方向には、洋風の古い大きな机に本を山積みにしているパチュリーがいた。彼女は本に夢中で少女達には気づいていないようだ。

「あの本を読んでいる人ですか…少し体の弱そうな人ですね。」

「うん。体は弱いけど、頭が良くて色んな魔法を使えるんだよ。」

「そうなんですか。あの、私達はいつまで隠れていればいいんですか?」

今、彼女達がいるのは二階の普段は誰も使わない通路の隅の方だ。しかも、狭いスペースに二人でおしくらまんじゅうでもしいるかの様に入っていた。

「うん。確かにキツイね、色んな意味で。でも隠れる必要も無いから早く出ようか。」

「えっ?いいんですか?」

「うん。」

金髪の少女と銀髪の少女は静かに出てくる事もせず、パチュリーのところまで飛んで行った。

「ねぇ、パチェ!ただいま!」

「あら、フラン。帰ってきてたのね。何の用事かしら?あと、彼女は誰?」

「あ、私は神柱 ハクです。ハクで構いません。」

「そう、あなたがハク。レミーから聞いていたけど、本当にフランとそっくりなのね。それに、今二人が着ている真っ白な巫女装束、二人共似合ってるわね。」

ハクはパチュリーはとても優しい人なのだと思った。この人なら自分達の話しを聞いてくれるだろうと思った。でも、ハクが話す必要は無かった。

「ねぇ、パチェ。私の話、聞いてくれる?」

パチュリーは笑顔で頷いてくれた。

「ありがとう!えとね、私達がここに来た理由わね……。」

フランは自分達がここに来た理由と、今からやろうとしている事を話した。

「なんて事を話すのかと思ったら、レミーを怒らせるだけなんて。でも、その彌生くんとやらは、本当にグングニルを手に取る事が出来るのかしら?」

フランとハクは下を向いてしまった。

「そう。まだ完全に出来る、と言う保証がないのね。」

「あの、パチュリーさん。彌生さんはフランさんのレーヴァテインを手に取って、その特性まで分かっていました。だから、試す価値はあると思うんです。」

パチュリーは少しうえ向くようにして考えた後こう答えた。

「一つ、話しをしましょう。二人ともよく聞いてね。ある世界に強くなりたいと思う少年が二人いました。可能性を信じた一人の少年は自分の可能性だけに頼り、自分から強くなる為の努力を怠りました。もう一人の少年は可能性を信じず可能性に頼らず、自分の努力だけで強くなろうとしました。さあ、彌生さんは前者と後者のどちらかしら?」

ハクは考え込んでしまった。どちらが正しい答えなのか、迷っていた。

「ねぇ、パチェ。彌生はその二人の少年のどちらでも無いよ。」

「フラン。それはどうして?」

「彌生はね、強くなる為の努力もしているし、自分の可能性も信じているから。だから、その二人の少年とは違う。」

パチュリーは笑顔で答えた。

「そう。なら私も協力してあげる。」

パチュリーは小悪魔にこの場所の留守を頼むとフランとハクを何処かへ連れて行った。

紅魔館…大広間近くの部屋にて…

ここには彌生とアテナの二人がいた。

「フランとハクが行動を起こしてくれるまで僕達はここで待機だ。もし、気づかれそうになったら、その時はアテナ。頼んだぞ。」

「はい。もしもの時は私が時間を稼ぎます。」

紅魔館…時計塔にて…

「さあ、私が言った通りにしてちょうだい。」

「はい!」「うん!」

フランとハクはありったけの弾幕を中に浮かせた。パチュリーの合図で一気に弾幕が地に落とされた。爆発音が館じゅうに響いた。当然咲いていた薔薇も全て散ってしまっていた。

この異変に気づいたレミリアと咲夜はすぐに外に出てきた。

「な、なんですかこれは!」

「やってくれるじゃない!」

レミリアと咲夜は一気に血が登ったようだ。勢いよく時計塔のところまで二人とも飛んで来た。

しかし、そこには誰の姿もなかった。

「中に隠れたんでしょうか?」

「いいから早く見つけるのよ!」

レミリアと咲夜は館の方に戻って行った。

「さすがパチュリーだね。」

「ここまで出来るなんて…。」

レミリアと咲夜が戻った後、薔薇の庭園はもとの姿に戻っていた。

「今、私が使った魔法はただの子供騙しよ。二人ともそんなに褒めなくていいわよ。これだけ怒らせといて、あの椅子がなくなったらどうなるんでしょうね?」

パチュリーは少しだけ笑った後、疲れたからと言う理由で大図書館に戻って行った。

「フランさん。私達の仕事はこれで終わりですね。」

「そうだね、後は彌生とアテナ次第だね。」

紅魔館…大広間にて…

「ねぇ、咲夜…。私の椅子はいったい何処にいったのかしら?」

「まさか、あの時間で何処かに移動させるなんて…。私ならともかく他にこんな事が出来る人なんて…。あ、いましたね。」

咲夜は誰の仕業か気がついたようだ。

「レミリア!君が探しているのはこの椅子かい!」

レミリアの椅子は大広間の二階にまで持っていかれていた。その隣には彌生とアテナがいる。

「彌生、あなたの運命はもう決まったわ。」

「彌生さん。少し悪戯が過ぎましたね。あと、そこのお嬢さん。あなたも関わっているみたいですね。」

二人ともフランの思惑通りだ。

「二人とも怒ってるようだが、僕は謝る気は全く無い!謝らせたかったら、力尽くでやってみろ!」

彌生はレミリアの前で刀を構えた。

「そう。なら力づくで。」

レミリアの目からは殺気が伝わってくるようだ。

咲夜はナイフを手に取りすでに準備している。

「私の名はアテナ!そこのメイド!あなたの相手は私が引き受けましょう!」

紅魔館の紅い霧は更に濃くなっていた…


紅の館の侵入者 後編 完


読んで下さった方ありがとうございました。

感想や一言頂けたらとても嬉しいなと思っています。

よければ、彌生とハクの幻想入りする前の話である《幻夢の幻想入り〜Old Tales〜》もよろしくお願いします。

では、次回で会える縁を信じて…

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