二人の戦神
今までの異変とは明らかに違う…。それが分かっていながらも、楽園の素敵な巫女は笑顔のままだった。
元に戻ったはずの幻想郷の空に再び入る亀裂。ハクとフラン、妖夢に緊張感が戻った。三人共すぐに戦える準備をしている。
「今さっきの雷の様なものが現れたら、私が始めに斬り落とします。その後、一旦雷は止まるはずです。その隙に、二人で仕掛けてください。」
妖夢の指示通り、亀裂から雷とは違う動きをするものが現れた。
「来ましたね…。あとは任せます!」
妖夢は勢いよく飛び出し、雷の様なもの、を斬りに行った。
「はぁぁ!!」
妖夢は気合充分に斬り落とした。
「今です!」
妖夢の掛け声と共に、フランとハクは目一杯の弾幕を止まった雷の様なもの、に撃ち込んだ。
「妖夢さん!一旦、こちらに退いて下さい!」
ハクの声に気づいた妖夢はすぐに、三人並んだ元の位置に戻った。
「ねぇ、ハク。こんなんじゃ絶対無理だよね…。」
フランから弱音がでた。弱音、と言うよりは不安を隠したかったのだろう。
すると、フランの弱音に応えるように、弾幕の煙の中から、西洋式の盾と剣を持った女性が現れた。
「どうも、名はアテナ。戦いを司る西洋の神です。この様子ではアレスに逃げられましたね。」
そう言うと、アテナは深くお辞儀をした。
「あなたは私達の敵か!?」
妖夢は単刀直入に今、一番気にしている事を聞いた。
「本来なら出会うはずも無いのですが…私はその原因であるアレスを倒すためにここに来ました。私の求めるモノと、あなた達が求めるモノは同じだと思います。」
妖夢は頷いた。すると、次はハクが質問した。
「そうですか。なら、あなたはキリコと言う日本の神を知っていますか?」
アテナはハクの方を真っ直ぐに見つめた。
「当然。アレスは彼女、キリコの力を使い私の父であるゼウスから人々の信仰の力を無きモノにしました。アレスとキリコはそれぞれの約束の下で動いていると私は考えています。」
ハクと妖は目を合わせ、刀をしまった。
「あなたの瞳が嘘は無いと語ってくれました。私達はあなたを信じます。だから、あなたも私達を信じて下さい。」
ハクの真っ直ぐな瞳はアテナに思いを届けてくれたらしく、アテナは笑顔で、はい、と答えてくれた。
その後、アテナに一月後に再びアレスとキリコが姿を表す事、それぞれの能力、などを話した。その分、アテナも西洋の神や自身の力について話してくれた。
その中で分かった事がある。西洋の神も信仰との縁は大切だと言う事。アレスとアテナはどちらも戦神であるが、アレスは戦を起こし攻め入る戦神で、アテナは敵から護る為の戦の戦神である、と言う事。つまり、アレスはキリコと力を合わせ、他の西洋の神に戦を仕掛け、そのアレスを倒す為にアテナが来たのだ。
「ここが、博麗神社です。ここにいる巫女がこの世界の異変を解決しています。」
話しをしているうちに、博麗神社に着いていた。ここでやっと彌生は元の姿に戻して貰った。そこから、アレスの事、アテナの事、残り一月と言う事、話せるだけの事をハクと彌生が話した。
「そう、あなたもこの異変解決に手を貸してくれるんだ。よろしくね。」
霊夢は笑顔で手を出した。
「こちらこそ、よろしくお願いする。」
この様子を隙間から見ていた紫は少し微笑んだ。
「幽々子。また、面白いモノが見れそうよ。」
二人の戦神 完
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では!また、次回で会える縁を信じて…。