花が散る時
ヒマワリの咲き誇る中。
幽香と、縁切りの神は対峙していた。
「ここでは、ヒマワリに迷惑ね。」
幽香はそうつぶやくと戦場を空に移した。
「さあ、あなたも早く来なさい。命の価値を教えてあげるわ。」
「空中戦か、なら、この子にも本気を出してもらわないとね。」
キリコはそう言うと、翠色の大蛇に刀を突き刺した。
「《大蛇逆鱗 翠》!」
この光景を見ながら幽香は…
笑っていた。自分が全力で戦えると感じたからだ。
「この子の名前はまだ教えてなかったわね。今から紹介するわ。名は《バジリスク》。西洋の神話にもでる毒蛇よ。以後、よろしく。」
そう言うと、バジリスクは空に飛び上がってきた。
さらに、先ほどより毒は、強力なものになっているようだ。バジリスクが飛び上がる前までは、周りの花や草は生きていた。しかし、今は生気を吸い取られたかのように枯れてしまっていた。
「それじぁ、命の価値とやらを、教えてもらおうかしら!」
先に動いたのは、キリコだった。
刀で斬りかかるキリコのすぐ後ろにはバジリスクが潜んでいる。
キリコは第一刀を振り下ろした瞬間。体を思いっきり縮めた。幽香の目の前には、真紅の眼が現れた。その眼を覗き込むほどに、吸い込まれるように、幽香の命も引き込まれていくようだった。
(幽香…幽香…幽香…幽香…幽…)
幽香の頭の中にヒマワリの声が流れ込んできた。その時、幽香は目を覚ます様に我に返った。
「あらら、あなた凄いわね。」
キリコは驚きながら、幽香を讃えた。
「なにが…凄いのか…説明してもらえる?」
息切れを起こしながら、幽香は尋ねた。
「それはね、簡単に言うとあなたが死ななかったから、よ。バジリスクの瞳はね、死の視線を放つのよ。つまり、あれだけ覗き込めば死んで当然なのよ。なのに!あなたは生きてる。これが凄い事よ。」
幽香は自分の精神が持って逝かれかけていた理由が分かり、少し納得したように微笑んだ。
「本当に、あなたとその蛇には、驚かされる事が多いわ。けれど、次に驚くのは、あなたの方かもね。」
そう言うと、幽香はキリコの後ろを指差した。
「なっ!なによコレ!!」
そこには、空中で串刺しになっているバジリスクがいた。謎の赤く太い草の根の様なものは、バジリスクの毒に負ける事なく、完璧にバジリスクを貫いていた。
「あなたの蛇でも、植物の中で最強の毒には勝てなかったって事ね。その毒を持つ花の名称は、《ゲルセミウム•エレガンス》和名は冶葛
よ。」
バジリスクの毒は自分自身を守る為に冶葛を溶かしたのだが、溶かした所から出た冶葛の毒に殺られてしまったらしい。
自分が死にかけた状態から即座の反撃。この様な芸当が出来るのは、幽香などの真の実力を持つ妖怪だけであろう。
「バジリスク!まだ息はあるようね。ならば!最後に私の最高の攻撃であなたもバジリスクと共に死んでもらう!」
キリコは刀の切っ先を幽香に合わせた。
「あなたも、もう終わりね…《縁符 存在の否定》。」
ヒマワリ畑の中。血だらけの幽香は仰向けに転がっていた。
「ふふっ。まさか、あんなのが、あるなんてね。霊夢…私は、あなたを、信じて、少し眠っておくわ。」
幽香は目を閉じた。
何処かの竹林で…
「あらまあ、帰ってきたのは、あなただけなのね。意外にこの世界の奴らもやるのね。」
キリコの本体は、馬鹿にしたように、幻想郷の物達を罵った。
すると、今さっきまでいた、小さなキリコは、本体に戻って消えていた。
「そろそろ、本当の意味で幻想が崩れ出す頃ね。」
博麗神社で…
そこには、幻想郷の本当の危機を感じた、隙間に棲む妖怪がいた。
「現実と幻想が切り離されていく。これは流石に、異変どころでは無いわね。」
妖怪の山で…
「あー!いくら探しても見つからないじゃないか!」
苛立ちを隠せない彌生の前に、一匹の妖怪兎が現れた。その妖怪兎は、彌生達に気づくとすぐさま逃げ出してしまった。
「あ!兎だー!」
フランは、本能的に追いかけた。
「フランさん!待って下さ〜い!」
フランとハクを追い、彌生も走り出した。
「おーい!今はそんな場合じゃないんだぞー!」
あの妖怪兎が幸運をもたらす兎だと知らずに彌生達は走り出した。
花が散る時 完
読んで下さった方本当にありがとうございました!!
文章力の無さは大目に見てやって下さい…。
登場させたい東方キャラや要望など、ありましたらコメントよろしくお願いします。