第1章その一:プロローグ
「侵入者だ!」
「各自武器を用意!」
「戦闘用ロボを配置!」
城のあちこちで兵士がさわいでいる。
迅たちは向かってくるやつを倒して進んだ。
ロボットなら斬りすて、人なら気絶程度に手加減した。
リオンはそんな三人を優しいな、と思った。
三人が人を殺さない理由は
「後味が悪いから」
という事なので、優しいかどうかは微妙だ。
しばらく進んだ時、
「あっ!!」
「どうしたチビ助。」
「重労働させられている人を助けないと。」
(なんかめんどくせーなぁ。)
そう思った迅は素早く、
「よし、バースとイクスで頼むわ。俺はチビ助と領主をぶったたく。」
「オッケー!」
「任しとけ!」
「重労働させられている人たちは地下だ。」
走り出そうとするイクスたちを迅が呼びとめた。
そしてイクスに何事か耳打ちした。
「だ〜いじょ〜ぶだよ♪俺を誰だと思ってる?」
「イクスだもんな。」
「そうそう♪」
今度こそイクスたちは地下に行った。
「何を言ってたの?」
「うん?まぁ、アレだ。バースのやつは怪力だから、人の手を引っ張って折らないようにってな、ハハハッ……」
(ちょっと苦しい、かな?)
迅は思いっきりそう思ったが、リオンは笑った。
「アハハ、あの人ならやりかねないね。」
笑った顔はとてもかわいかった。
迅は不覚にも(本人はそう思った)リオンを可愛いと思った。
「お前、笑えるんだな。いつもそうやってればいいのに。」
迅はそっぽを向きながらリオンに言った。
実は顔が少し赤くなっているのだが、それは見せないようにがんばった。
「そ、そう?」
「あぁ。」
リオンも顔を赤くした。
迅が見てればおもしろいまでにからかいのネタになったのだが、本人の顔も赤いので見ていなかった。
なんとなく続いた奇妙な沈黙。
それをうちやぶったのは扉だった。
「ここだ。俺たちはここで領主を見た。」
「ここに……領主が。」
リオンはまた怒りをむきだしにした。
「入るぞ。」
迅は遠慮なしに扉を開けた。
というか、盧遮那でたたっ斬った。
「よく来たな。」
そこには高価なイスに座った領主の姿と、10人ほどの兵士がいた。
「あらら〜、大人数でごくろうなこった。」
「フフフッ、減らず口を言ってられるのも今のうちだぞ。」
「…なぜだ?」
「お前ら二人でこいつらに勝てるのかな?」
領主が腕を上げた。
すると兵士のうち八割はサーベルを、残りは銃をかまえた。
(……こいつは…)
迅は領主の動作に不審感をいだいた。
そうこう思っているうちに兵士が襲いかかってきた。
「わ、私はどうすればいいの?」
「とりあえず二人くらいは倒しとけ!」
迅は言いながら銃を構えてる兵士の方へ行った。
こうゆう戦いでは、早めに遠距離攻撃ができるやつを倒した方がいい。
迅は盧遮那を構えて兵士の横から銃を斬った。
どんなに強い武器といえども強度で盧遮那に勝るものはない。
銃はすっぱりと斬り落とされ、兵士は慌てふためいた。
次はサーベルの方の兵士。
さっき銃を斬り落とした迅の姿を見たためか、いつも通りの力を出せずあっさりみねうちで気絶した。
リオンはというと
「このっ!!」
一人目は後ろから狙って死ぬギリギリまでダメージを受けていた。
しかし二人目は減粒子服を着用していたようで、あまり効いていないようだった。
(出力を最大にすれば倒せる!)
リオンはそうふんで、出力を調整し兵士と対峙している。
「くそぉ!!!!」
リオンは撃った。
しかし反動はものすごく、狙った所とは別の所に撃ってしまった。
「キャッ!」
そしてしりもちをついて倒れてしまった。
「どうやら俺の勝ちみたいだな。」
「くっ。」
銃を撃とうにも、兵士に踏まれてしまっている。
「死ねーー!!」
ドッ
「はいはい。やられキャラっぽいセリフありがとね。」
リオンを救ったのはもちろん迅だ。
兵士はみねうちをくらい、のびている。
「まったく、こんなモンも扱えねえのか。」
「そ、そんな事ないけど……」
「まぁいいや。領主の所行くぜ!」
「えっ、だってあそこに……?」
「あれは、変わり身だ。よくできたロボットだぜ。」
言うやいなや兵士が踏んでいた銃を領主に撃った。
もちろん当たった。
首の部分が吹っ飛んだ。
しかし、その境目は生身の肉体ではなかった。
機械の体。
リオンは今更ながらにビックリした。
変わり身ではなく、迅の観察力に。
「さぁ、出てこい。領主さんよ。そうすりゃ俺は何もしない。」
領主は迷っているのか、なかなか姿を見せない。
しかし、迅が盧遮那を地面に叩き付けた所でようやく姿を見せた。
「ほ、本当に何もしないんだな。」
「あぁ、それに俺にはあんたにうらみはねぇし。」
領主は両手を挙げておびえながら二人の前に姿をあらわした。
「なぜ、お前みたいなものが反政府集団なんだ?」
「事情は複雑なんで言えないね。ただ一つ教えてやるよ。AOGというのは、お前らの言う反政府集団を表してるんだぜ。」
迅は盧遮那をしまいながら言った。
領主は何もされないのを確信したようでホッとため息をついた。
「さてと、裁きの時間といきますか。」
「な、何もしないと言ったではないか。」
「それは俺だけだ。このチビ助には自分の意志でお前に裁きをする。」
「えっ!?」
急にふられたリオンは驚きを隠せないようだ。
(私が……裁く?)