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獣な彼女【書籍化】  作者: こる.


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7話 魔法剣士の事情

 魔法剣士は慰めの代わりに、あの泉に居た経緯を語った。




 それは、丁度前回の王宮での任務が明けて、まとまった休みを貰ったことから始まる。


 魔法剣士が休みで屋敷に戻っているのを聞きつけた、幼馴染であり神官である友人が酒瓶を片手に遊びに来た。

 そして、酒を飲み飲み、最近週に一度神殿内にある回復の泉の効果が落ちる事を愚痴り、その原因の究明を魔法士に依頼した。

 ……報酬は今飲んだ特級酒だった。


 そんなしたたかな友の依頼を受け、魔法剣士は休日返上で調査を開始する。


 とはいっても、神殿内の回復の泉の源流は既にわかっているので、週に一度のその日を狙いその源流を見張ることにした。

 回復ポイントの効果減少は、大抵の場合源流でその効力を使用することによる支流での効果の減少であることがほとんどだからだ。


 そうして、見つけたのが黒猫だった。


 生憎とその日は、水浴び後に変化した姿を見つけただけだったが、その黒猫が魔法使いが変化したものであると当たりをつけた魔法剣士は、その猫を追跡し生息拠点を見つけ出す。


 その黒猫はあまりに堂々とそこのボスを張っていたため、本当に人間が変化したものなのか自信がなくなった魔法剣士は、依頼してきた神官の友人を手伝わせ、変化を確かめることにした。

 神官の友人には、変化の際に置きっ放しになってしまう衣類の保管と、万が一猫達に襲われそうになった場合に助けに入ることをお願いして、魔法剣士は猫へと変化した。


「まるで小ぶりの虎だな……猫? 少し無理がないか?」


 神官の友人の明け透けな感想は聞かなかった事にして、黒猫がよく日向ぼっこしている木箱に向かう。


 十分な体躯があるため、下手な猫…というか、人間すら近づいてこなかった。

 精一杯猫っぽい声を出して(無論猫の声帯なので猫の声しかでない)、黒猫の注意を引く。

 黒猫は木箱の上から誰何するように声を掛けてきた…が、如何せん猫の言葉だ。

 仕方なく、もう一度鳴いてみる。

『みゃー』

 黒猫は怪訝そうに首をかしげ、もう一度、今度は何回か区切って鳴いた。

 勿論、何を言っているのかわかるはずも無いので、適当に返しておく。

 どうせ、向こうも適当に鳴いているだけだろう。

 黒猫はすっくと箱の上に立ち上がると、実に軽やかに降りてきて、くんくんとまるで本物の猫のように魔法剣士の臭いを嗅いできた。

 そして、何かを悟ったかのように、じっと目を見つめると、がっくりと項垂れる。


 何に対して脱力したのかはわからないが、とにかくこの特殊な反応は人間のもので間違いないだろう。

 声を掛けようとしたとき、黒猫はぱっと身を正し、威嚇してきた。

 その剣幕に思わず後退り、ともかく人間であろうことは確認できたのでその場は撤退した。


「お前よりひとまわり以上小さい猫にびびってどうすんだよ。思わず噴出すところだったぞ」

 変化を解いた魔法剣士に服を渡しながら、神官である友人は実に愉快そうに笑いながら感想を漏らしたため、魔法剣士から腹部に一発拳を貰うこととなったのは些細な余談である。


 そうして、次に泉を張っていたところ。

 黒猫がやってきて、人の姿に戻り、水浴びを済ませてまた猫の姿に変化したところを取り押さえたということだった。


 なぜ、一通り水浴びの様子を見ていたのかという疑問があったが、残念ながら猫の声帯では人語を操ることができないため、黒猫は意趣返しに魔法剣士の腕や手に噛み痕を残すのみに終わった。



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