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18話 取引

 あたしはアクセルの膝の上であまり身じろぎしないように緊張し ながら、白猫からの情報をアクセルに伝えた。



「皇子様は夕食後、兼ねてよりクローゼットの天井に隠してあった町民の着るような服を着て、窓から浮遊の魔法を使って部屋を出たようよ?」


 あたしの話を聞いたアクセルの眉間に皺が寄る。

「トレノ様はまだ浮遊の魔法などご存知でないはずだ」

「でも魔法は使えるんでしょ?」

「……妹君であるレビン様は魔法に長けていらっしゃるが、トレノ様は初級魔法しか習得されていない」

 あれ? そうなのか。

 浮遊魔法は確か上級魔法だったから、まだ皇子様は扱えないってことよね…。

 でも、あの()猫が嘘を言うはずが無い(というか、動物は虚偽の発言をしない)。

「あたしが嘘を言ってるとでも思ってる?」

「それは無い」

「……即答で言い切る貴方の自信がどこから来ているのかわからないわ」

 そう言うと、少しの間があり。

「今は任務中だから、後でじっくりと教える」

 との事。

 別に知りたくも無いので、遠慮しておいた。

 それよりも、任務中である自覚があるなら、膝の上から下ろして欲しい。

「で、どうするの? 捜索隊とかはもう出てるんでしょ? 猫からの情報を聞いたところで、結局のところ人海戦術で周辺を探すしかないんじゃない?」

 誘拐である可能性が低くなって、自らの意思で変装して街に出ているってことがわかれば捜索範囲も変わって来るだろうけども。

「ああ、今の情報を元に捜索範囲を変更して部隊を組みなおす」


 さて、ここでひとつ取引を仕掛けようと思う。


「アクセルひとつ提案があるんだけど。 あたしが皇子様を見つけられたら、回復の泉の無断使用した件をチャラにしてくれない?」

 なるべく自信満々に見えるように、不敵な笑みを浮かべてアクセルを見つめる。

「……お前が、見つける?」

 アクセルの眉間に皺が寄るが、それに怯んではいけない、ここが勝負どころなんだから。

 緩んだ腕から抜け出し、アクセルの前に仁王立ちする。

「そうよ、あたしなら見つけられるわ」

 アクセルの茶色の瞳をしっかりと見つめる。

 因みに、はったりを言っているわけじゃない、本当に見つける自信はある。

 ひとしきりガン付け合った後、アクセルが折れた。


「で、どうやって見つけるつもりだ」

 良くぞ聞いてくれました!

「匂いを辿るのよ!」

 自信満々に答えると、アクセルがこれ見よがしにため息を吐きやがった。

「匂いならば、軍犬が追ったが成果は上がらなかった。 今も軍犬を使ってはいるが、手ごたえは得られていないのが現状だ」

「損はさせないわよ、もしも見つけることができなかったら、貴方の言うことを何でも1つ聞いてあげるわよ」

 そう言うとアクセルは一瞬だけ考え、すぐに頷いた。

「…わかった、その取引に応じよう」

 何かしら、その笑顔、凄く似合わないわよ? アクセルの笑顔にたじろぎながら、必要な手伝いをお願いする。

「じゃあ早速やるけど、一つお願いがあるの」

「なんだ?」

「あたしに付いてきて欲しいの。 何があっても」

 魔法剣士であるアクセルならばきっと多少飛ばしてもついてきてくれるだろうとは思うが。

「わかった」

 短く応えるアクセルを確認し、行動を開始する。


 とりあえず、白猫をケージに入れて使用人部屋に退避させておく。

 そうしてあたしとアクセルだけになった皇子様の部屋で魔法言語を詠唱する。



我が内に宿る魔力よジ・イーリマ・ステャ我が体を組み替えよジ・シェ・ロウ狼へジェドゥ


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