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獣な彼女【書籍化】  作者: こる.


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17話 人探し

『行方不明の子供を捜す?』


 で、なんであたしが必要なのかしら?


 と思っていたら、着いたところは王宮……。

 子供って皇子様。

 そしてここは、その皇子様のお部屋。


『で、どうしろと……』

 若干疲れが混じっているのは、あれです。

 ここに来るまでに、懐に大きな黒猫を入れて平然と歩いている魔法剣士を、すれ違う人々から好奇と驚愕の目で見られたからです。

 せめて服の中から出るか、いっそ頭まですっぽり隠れておけばよかったと気づいたのは、この部屋についてからだった。


『…だぁれ?』

 部屋の隅からか細い鳴き声がして、小柄な白い猫がこちらを伺っていることにやっと気づいた。

「皇子の飼い猫だ。 あれから、皇子が連れ去られた詳細を聞いて欲しい。 できるか?」

 アクセルに言われてやっとここに来た意味を理解した。

 なるほど、猫相手の翻訳ね。

 アクセルの懐から脱出して、警戒されないように注意しながら白猫に近づいてゆく。


 ……警戒なんて意味が無いほど、人見知りしないんだねお前。

 体を摺り寄せてくる白猫に、こんなに警戒心がなくて大丈夫なんだろうかと心配になったが、まぁ室内猫だし、皇子様のペットだし、問題ないのか。

『君の飼い主は、どこに行ったの?』

『飼い主? 優しい人、居ない、昨日から、居ない』

 白猫にとって、飼い主は”優しい人”なのか、それが昨日から居なくなったと。

『どうやって居なくなった? 誰か来たの?』

『窓、出る、魔法』

 誰かが魔法で皇子様を攫った、ってことかしら。

 それを聞いてみると、白猫は否定する。

『優しい人、使う、魔法、出る、自由』

 優しい人が大好きな白猫が、集中力が切れがちになるさがを曲げて一生懸命伝えてくれたお陰で、大体の内容がつかめたのでそれをアクセルに伝え……るんだよねやっぱり。


 白猫が怯えるので部屋から出ていたアクセルを呼ぼうと、細く開けてあったドアの隙間から部屋を出てドアの脇に控えていたアクセルを見上げる。

「聞き出せたか?」

『一応一通りね』

 応えると、直ぐ隣の小さい部屋…皇子付きの使用人の控えの部屋へ案内された。

 時間的に人が居ないのか、あらかじめ人払いをしてあったのかはわからないけど、誰もいない。

「人間に戻ってくれ」

 興味津々で部屋を見回していると、頭からバサリと布を被せられた。

 生地の感じと匂いから、どうやらアクセルの上着のようだ。

『ちょっと! せめてアンタ、席を外しなさいよ!!』

「……後ろを向いているから、そう怒るな」

『だから! 部屋を出てろと! …くぅっ! 無神経! 馬鹿! うどの大木っ!!』  一生懸命悪態をつくが、背中を向けたアクセルはどうあっても部屋から出ることはないようで…。

 仕方ないからあたしが折れてあげたわよっ!


 変化の解除は簡単だ。

 常時変化のために微妙に放出している魔力を遮断すればいいだけ。

 魔力の遮断は、魔法学校の魔法の授業で一番最初に教えられる魔力の使い方だから、魔法を使う人間は誰でもできるのだ。


 魔力を一瞬カットして変化を解き、体に掛けられた魔法剣士の裾の長い上着を羽織る。

 きっちり前のボタンを留めて、開きすぎる胸元を手で押さえてアクセルに声を掛けた。


 上から下まで眺められた。


「何よ、裾を引きずっちゃうのはしょうがないでしょ! アクセルが馬鹿でかいんだからっ」

 むくれたフリをしてそっぽを向いてやる。

「…アク、セル……?」

 低い声が、不審気に繰り返す。

 あ、猫の時いつも勝手に短縮して呼んでいたから、ついそのまま呼んじゃったけど、まさか逆鱗だった? えぇと、ちゃんと呼ぶと、アクセラレー…タだっけ? やばい、自信が無い。

 びくりと硬直し、恐ろしくてアクセルの方を向けないあたしは、逆上した(?)アクセルに羽交い絞めにされた。

「ちょっ!! な! 怒ったの!? ごめんっ、ごめんなさいってばっ!!」

 暴れて逃げようとしたが、猫の時と同様にアクセルの太い腕から逃げ出すことはできなかった。

「怒ってなどいない。 もう一度、呼んでくれないか」

 怒ってないというのは本当なようで、あたしを拘束する腕は確かに外れはしないが、苦しくなるほど締め上げることもない。


 もう一度呼べって、やっぱり、名前よね?

「えっと…アー、アクセラ…レータ?」

「アクセルでいい」

「ん、じゃぁ、アクセル、もうそろそろ離してくれない」


 ……そのまま抱き上げられて、部屋にあったソファに座る…って、どういうこと?


「さて、あの猫から聞いたことを教えてくれ」

「その前に離して」

 アクセルの太い腿の上に強制的に座らされている状態で、なぜ報告をせねばならん。

「皇子が居なくなった時間からわかるか?」

「だから、下ろしてってば」

「詳しい時間がわからなくても、大体の時間帯がわかればいい」

「……昨日の夕方、夕飯の後よ」

 駄目だわこの人…聞く耳持たないもの、あたしが折れるしかないじゃない。



 諦めてアクセルの太腿に、楽な姿勢になるように座りなおし、白猫から聞いた話を伝えた。


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