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獣な彼女【書籍化】  作者: こる.


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1話 獣道

『ボクの特技は、狼になることです。』


 って、作文の時間に書いたら。

『ボク』が『わたし』

『狼』が『犬』

 に添削された魔法学校幼等部の夏、すっぱい思い出。



 あたしの得意な魔法は変化魔法で、特に狼に変化するのが好きです。

 只今、無職です。

 親類はありませんが、ここら辺では普通なので哀れみの目を向けないでください。

 基本形体を動物にして生活して1年、猫の姿で残飯を漁るのも慣れました。

 だから、哀れむなって!

 残飯あさりなんて滅多にしませんよ。

 基本は愛想を振りまいて、ご飯GETしてますから。



 まぁ、最初は大変だったんですよ……。

 ほら、奴等には”縄張り”ってあるでしょ?

 最初のうちはそれを見極めるのがヘタでねぇ、何度あいつらに噛み付かれて引っかかれたか。

 今ではあたし自身がこの地域のボス的位置に居るから、あまり気にしたもんでもないわけですが。

 独学で猫語、犬語、鳥語を操るようになったあたしに怖いものなんて無いわけよ……人間以外は。


 人間は怖いのですよ。


 両親が不慮の事故で亡くなって、今まで親切だった下宿のオヤジさん、魔法学校の先生は、手のひらを返したように冷たくなりました。

 下宿を追い出され、後1年で卒業できる予定だった学校を退学処分され、あたしは両親の住んでいた北の町に帰ったわけなんだけれども。

 家及び家財道具は町の人たちが勝手に分配し、あたしが相続すべき財産は無かった。

 すげぇな! 人間って!

 あたしが貰ったのは、邪魔者に向ける視線だけだったよ。

 これであたしが荒まないわけが無いっちゅーの。


 寂れた町だったし、北方だったから冬に雪が降るので、一通り現状を認識した後その町を後にして、南下し現在の街にたどり着く。


 街というか、王都?


 王様のお膝元だけあって、基本的に治安は良いし、雪も降らないから獣姿で居れば冬もしのげるって寸法です。


 んで、マイ・テリトリーは目抜き通りを2本程奥に入ったところ、微妙に治安の悪い場所。

 本当に治安の悪い場所は、下手をしたら捕まえられて食料にされてしまうのでやめました(あそこのボス系の生物は強いし…)。

 なので、多少ストリートキッズが居る程度の場所が縄張り。


 今日は黒猫の姿で、テリトリーチェック、及びマーキング。

 ……あれですよ、マーキングは爪とぎですよ?

 爪をとぐときに爪の周りにある臭腺で臭いをつけてくるんですよ、あと爪の位置も重要、より高い位置に付けるのです。

 人としては小柄ですが、猫化した時は大柄なので、ボスとなることができました。

 まぁ、喧嘩も強いですがね、あたし。

 

 大柄で威圧的な黒猫のあたしだけど、礼儀正しくしているお陰で、テリトリー内の人間には受けが良い。

 人間の嫌がる場所にマーキングはしないし、ごみを散らかさないからね。

 かといって、必要以上に人間とは仲良くならない。

 以前、他の場所で、仲良くなりすぎて危うく”賢い猫”として売られるところでしたから…。

 頑丈なゲージに入れられ、見世物小屋に売り渡される前夜に犬に変化して逃げました。

 他の動物に変化する際には、一度人間の姿に戻らなくてはならなかったので、猫から犬に変わる際に檻は大破し、易々と逃げることができました。


 まぁ、そんなすっぱい話はいいや、今はこうして元気に猫ライフをエンジョイしてるんだから。

 路地裏で背を伸ばしてカリカリカリ…。

 爪とぎは大事なお仕事。

 狼が最も得意で最もお気に入りの変化なんだけど、街中でそれをしたら狩られること必至なので、猫の姿がメインになっている。

 ふふん、今日も良いお仕事したぜぃ。

 日当たりの良い木箱の上で、日光浴タイム。


姉御あねごー』


『おう、茶色の』

 黒猫あたしより二周りほど小柄な茶色の猫がしっぽをゆらゆらさせながら走ってきた。

『チイ(小さいの)とオミジ(尾の短いの)、喧嘩』

『へぇ、珍しいね』

 茶色のは木箱に前足を乗せ、体を伸ばしてあたしの口の周りの臭いをくんくん嗅ぎながら報告する。

 あたしも一応茶色の臭いを嗅いでおく。

 あれ?

『茶色、人間と遊んだ?』

『人間、小さいの、遊んだ。 楽し! 楽し!』

 子供に遊んでもらったのか、よかったな茶色の。

 ぐりぐりと、顎で茶色の頭を撫でる。

『姉御、好きー! 姉御、好きー!』

 ベロベロ舐めてこようとする茶色をかわして、顔を前足で押さえつける。

『姉御、いけずー』


 恨めしげな茶色だが、貴様に貞操を渡すほど人間であることを捨てておらぬわ!

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