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妹の暇潰し  作者: 王手
妹の常識潰し
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008-E

ドアを開けると――――茅ヶ崎が両手いっぱいに持つお菓子の袋と共に満面の笑みを浮かべて立っていた。


そして突然茅ヶ崎は意味の分からないことを口にした。


「ごめんなさい、お兄さん。ドッキリでした」


・・・。


え?


何?


「中々感動的な最後でしたね。お兄さんの台詞には少し心打たれましたよ」

「そうかな? それより私の隣で言った、屍について言及したいと思うのだけれど?」


後ろを見れば麻香が起き出して片手を腰に当てて重心を中心から反らせる姿勢を取っている。


そりゃもう、モデルのような。


地味な柄のパジャマも麻香が着れば映える。


「それはもう可愛さ余ってなんたらってやつでしょ」

「そう? なら抱きついてキスでもしておけばよかったよ」

「今からでも遅くないよ。いっちゃいなさい」

「兄貴・・・・・・いや、お兄ちゃん、ゴメン!」


麻香が突然飛びついてきた。


これが抱きついてくるならまだ精神的ショックだけで僕の被害は済んだだろうが、現実は違った。


ローリングソバット。


横回転しながら飛び上がって蹴り付けるプロレス技。正面を向いて立っている相手や、走ってくる相手にカウンターで仕掛ける。右回りに回転しながら飛び上がり、回転の勢いを生かして、自分の右足の裏で相手を蹴り付ける。

プロ顔負けの、美しいフォームで麻香が空中で旋回した――――気がする。

麻香の繰り出す技を僕の目で捉えきれないのでどうしようもない。

ただ、僕は咄嗟にドアの縁を両手で押さえてその技を受け流すことなく胸の激痛を感じた。


「ぐっ・・・」


そして麻香がそれを予期していたようにバランスを取り、着地した。


「流石、お兄ちゃんだね。体を張って栄を守るなんて」

「・・・どういう趣向だ、これは?」


僕は胸を押さえやっとのことで声を絞り出した。


「んー。だから屍のお礼」

「どれだけプライド高いんだよ・・・」

「・・・三千七百七十六メートル?」

「それは日本一高い山の標高だろうが!」

「それじゃあ五メートル?」

「いきなり身近になった!?」


残り三千七百七十一メートルは何処にいった!?


いや、十分に高いけどさ!


それに高いの意味が根本的に間違ってるから!


「お兄さん、素敵です。旋回脚をくらいながらも突っ込み続けるその精神」


茅ヶ崎が僕の腕の隙間を通り抜けて部屋に入りながら言った。そしてそのままベッドの端に座る。


「・・・・・・それで? ドッキリっていうのは?」

「どうだった? 私のブラコン妹キャラ」


麻香のこの一言が全てを物語っていた。


・・・ということは昨日の事は嘘か。


え、じゃあ何?

僕は作られ話の為に数ページ兄妹愛について語ってたって事?


「気持ち悪いなあ・・・。私が実の兄の事を好きになるわけ無いじゃん。エロゲーじゃあるまいしそんな展開普通は有り得ない事なんだよ? それをあそこまで簡単に受け入れちゃって、まあ」

「・・・お前が普通じゃないからな」

「確かにそうだけど、少しは疑った方がいいんじゃないかな? 愚かな兄だと心底思っちゃった」

「愚兄、か・・・」

「一応ヒントはあげたんだよ」

「ヒント?」


僕は麻香の言葉に反応する。


「そう、ヒント」


そして麻香は茅ヶ崎の方を向いた。

茅ヶ崎は無言で頷き、肩に掛けたバッグから携帯を取り出して言う。


「このストラップです」


そして茅ヶ崎は携帯についているメタルアクセサリーを僕に見せた。


失くしていたお気に入り。


昨日麻香が推理して僕が見つけたストラップ。


たしか鬼灯が彫ってあるものだ。


「気付いた?」


麻香が僕に訊く。


「成程。全く分からん」

「だろうね」

「鬼灯の花言葉ですよ」


ここで全く理解できない僕に茅ヶ崎が助け舟を出した。


茅ヶ崎・・・。

僕は花言葉なんて微塵も知らないから・・・。

全然助け舟になってないから・・・。


「言うなら船舶免許持ってないのにクルーザーを貸りた馬鹿の心境でしょう?」

「例えが例えじゃない!」

「鬼灯の花言葉は『偽り』なんです」

「どんなヒントだ、この野郎!」


そんなヒントで麻香の話すことが嘘だなんて気付ける人間がいたら見てみたいわ!


「あーあ。お兄さんが拗ねちゃいましたよ」

「ま、いいよ。今回もそれなりに楽しめたし」

と、麻香は冷たく切り捨てる。


「そういえば兄貴。プレゼントありがとね」


そして僕の誕生日プレゼントを手にとってこちらに向けた。


・・・まったく、楽しそうだな。

それも去年とは比べ物にならない位。


少しずつテーブルに並べられるジュースやお菓子を眺めながら僕は思う。


麻香16歳の誕生日は盛り上がれそうだ。




第一章 完

ブラコンと言う言葉がありますが、現実の兄に対して恋心を抱くことは滅多にないのが一般的です。しかし近年ではあらゆる漫画・小説にこの言葉に加え、シスコンと言う言葉も頻繁に登場します。特に「萌え」を主体とする作品には殆ど必ずと言っていい程登場し、やおい系の男子相愛の兄弟についてもこの言葉が使われるようになってきています。その中でもブラコンと言うのはシスコンと比べ悲劇的で刺激的な表現での結末が多いので「萌え」と言うのはある意味、ブラコンについては干渉されないかもしれないです。この作品シリーズでのツンデレ妹はそれに加えデレる時でもあまり魅力が感じられないのが現状。今作ではさらに可愛さが殺がれている事を気付き、次作では多少、度を越えたデレ方を想定(妄想)しています。「妹」と言う言葉に反応したあなたには次作を期待して頂く様御願い致します。すみませんでした。

このシリーズに登場する妹・麻香の能力「瞬間記憶能力」及び「完全記憶能力」とはサヴァン症候群の能力の一つとして呼ばれます。このような能力を持つ人間は実際にいて、1887年に膨大な量の書籍を一回読んだだけで全て記憶し、さらにそれをすべて逆から読み上げるという、常軌を逸した記憶力を持った男性が発見されたのが最初と呼ばれています。日本では驚異的な記憶能力を持つ山下清さんがサヴァン症候群と呼ばれています。しかし実際、サヴァン症候群の人間は自閉症などの精神病の患者でどこかに障害を抱えていることが殆どです。これは一切無視しております。



読んでくださって有難う御座いました!

一章 妹の常識潰しはいかがでしたでしょうか。

推敲が大変でした。詰まらない小説の見直しは長ければ長いほど退屈・・・(え?

実はWordで100ページを目指す予定でしたが話の内容が思ったより伸びずに、膨らませることが僕の技量ではまだ無理でした。無念ですorz

最後に、このシリーズでは余り際立った現実離れの事件は起こさずに普段の生活の中で常識離れした麻香が活躍するように書いております。退屈な会話小説かよ、と思った方にはお詫び申し上げます。そういう小説なんです(汗

さて、作者は次作では今度こそ100ページと燃えております。

次回にご期待ください。


感想等ありましたら一言からお気軽に御願いします。

評価していただけると幸いです。


これから多少のお時間頂いて執筆しようと思います。

また御願いします。



王手

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