214-E
学園祭の翌日。
昨日のお祭り騒ぎが嘘だったかのように、学校はいつもの日常を取り戻していた。
やはり片付けというものは大変で、大きな行事が終わった寂しさも相まって、あまり手は進まないでいた。
「君」
生徒会室の掃除をしている僕に声が掛かった。
当然、いつも通り自分は席に座っている鬼怒川先輩からである。
「何ですか?」
「頬は痛むのか?」
僕の左頬には、昨日の無茶によりできた青あざを隠す為に大きくガーゼが貼ってあった。
「心配していただけるのはありがたいですが、出来れば手伝ってくださいよ」
「分かった」
「だから遊んでないで・・・・・・はあ!?」
今この人何て言った!?
素直に返事しなかったか!?
「そこまで驚かれるとは思わなかったぞ」
「いや、あの、どうしたんですか?」
余りの驚愕に舌が上手く回らない。
「ああ。いい加減君に甘えるのはようそうかと思ったのさ」
・・・・・・・・・。
言っておくがこれは大事件なんだぜ?
ある日地球の自転が逆回転になったくらいの大事件。
逆に言えばそこまで昨日の出来事はショックだったということ。
「そういえば、先輩」
「何かな?」
「僕の名前は聞いてすらくれないのに、麻香と栄の名前は覚えてましたよね。あれはどうしてですか?」
僕は少し前から気になっていたことを聞いてみる。
「ん、前に言わなかったか? 私は気に入った人間にはあだ名を付けるんだよ」
「え、それじゃあ・・・・・・」
先輩は麻香たちのことを・・・・・・。
「ハハッ。言い方が悪かったかな。いや、彼女たちは例外。私のボキャブラリーに無かったんだよ。彼女たちにぴったりのあだ名が。なぜか思い付かなかったんだ。私があだ名を思い付けないなんてな。その時の私は異常だったよ」
「・・・・・・そうですか」
鬼怒川先輩。
それは貴女が異常なわけではないと思いますよ。
きっと、あの二人から。
特に僕の妹に対して、その鋭い勘で異様さを感じとれたのだろう。
鬼怒川先輩自身とは違う何かを。
「ところで君」
「何でしょう」
「次はどこを掃除すればいいんだ?」
「うわっ。話してる間に生徒会室が見違えるように綺麗になってる!?」
滅茶苦茶手際いいじゃん。
何でこの人働かなかったの?
僕は小首を傾げる鬼怒川先輩を見て溜息をついた。
―――鬼怒川夜見世。
異常でも何でもない。
単に運が良かっただけ。
その豪運もそろそろ効力が薄くなってきてしまった。
それ故気付いた―――勘違い。
―――驕り。
しかし僕は今でも彼女に非があったなんて思っていない。
当然これからも、だ。
昨日までの先輩の生き方は確かにこの世の中では受け入れられないものだった。
―――だけど。
僕はそっちの方がおかしいと。
胸を張って言える。
鬼怒川夜見世にも。
言わせてみせる。
僕はきっと―――
この人がそんな世の中を創り変える、と。
そう思わざるを得ないのだ。
理想と現実とのギャップには、誰もが苦しめられます。しかし小説の中のように自分が思い描いたことがそのまま実現したら、この世界はすぐに色褪せてしまうでしょう。当然、出来ないことが面白いのではなく、不可能と思っていたことが出来たから私たちは自身の人生を謳歌できるのです。大きな困難ほど、乗り越えた時の快感は増大します。ですがここで重大な問題が浮かび上がります。乗り越えることが出来ない困難という存在に気付いてしまうからです。諦めないということは大切ですが、諦めるということもまた、同じぐらい大切なことなのです。人間には理想ばかりを机上で妄想したとしても、時には失敗し、時には撤退する必要があります。かつての鬼怒川夜見世のように、全てを成功してしまう人がいるとしたら、なんて詰まらない人生を送っているんだろうと言いたくなってしまいます。それは私だけでしょうか。現実に気付くことこそが人間の大きな成長なのではないでしょうか。
お久しぶりです。もしくは始めまして。王手です。読了ありがとうございました。
拙い文章を長々と書き連ねた小説ですが、何とか書き終える事が出来ました。
今回はついに100ページを突破しました。書きに書き連ね、ついに三ケタ。どんなにくだらない話であっても、100ページ書いたことには違いありませんよね(笑)
更新は遅くなってすいません。言い訳になりますが、後半数章の執筆は全て二回目です。本当の原稿は私の昔のパソコンと共に天に昇ってしまったのです。それから書き直して・・・、なのでプラス約二か月という長い時間を費やしてしまいました。申し訳ありません。
このサイトにアップする前に毎回書いた小説を友人Tに読んでもらっているのですが、彼も茅ヶ崎栄のことがお気に入りのそうです。自分のキャラを好きと言ってもらえると、こんなに喜ばしいことはないって気持ちになります。今のところ新キャラ登場の予定はないので、既存のキャラを気に入って頂けることは本当に助かります。
さて、作者である私なのですが、大学受験を来年に控えております。おそらくですが、進級してから高校を卒業するまでは一切更新できないと思います。なので次回あたりでこの『妹の暇潰し』を完結させようと思っています。それまで、私の拙文にお付き合いいただければとお願い申し上げる次第です。出来れば今年中には完成させてしまいたいと思います。これからまたお時間を頂く形となりますが、もし気が向いたら次も読んでやってください。御願い致します。ありがとうございました。またお会いできる事を切に願っております。
王手




