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妹の暇潰し  作者: 王手
妹の時間潰し
18/45

110-E

「お兄さん」



僕が新入生の説明会の為に、壬生高校に向かおうと玄関を開けたら、そこには無事退院した茅ヶ崎の姿があった。



「これからお出掛けですか?」

「ああ、高校入学の説明会だ」

「壬生高校・・・の制服ですね」

「お? 知ってるのか?」

「ええ。何故か、知っています」



茅ヶ崎はそう言って苦笑する。

後で麻香に聞いた話だが、茅ヶ崎は知識をある程度覚えているらしい。

つまり、生活には支障なく、中学生としての話についていけるような知識だけ残ったため、高校生の制服の記憶は消えなかったのだろう。


それにしても、あの茅ヶ崎が僕に敬語を使うとは・・・。感動だ。こいつ、よく見れば滅茶苦茶可愛い。



「あれ?」



ここで、僕はあることに気が付いた。



「茅ヶ崎、髪染めた?」



あの黒髪が若干茶色になっている気がする。



「あ、お気付きになりました? ほら、良く言うじゃないですか。昔の自分との決別だって」

「新学期覚悟しとけよ」



確実に生徒指導だ。

うちの中学の指導教師なんか夏休みに調子こいて髪の毛を脱色(おと)してきた奴を、始業式が終わらないうちに丸坊主にしたんだからな・・・。



「え? 地毛ですが?」

姑息(こそく)過ぎる!」



だから若干なのか!

誤魔化(ごまか)す気なのか!



「少しずつ茶色を濃くしていきます」

「いや、ばれるだろ」



間違いなく。

当然のように。



「それで、麻香に会いに来たのか?」

「それもありますが、お兄さんにも会いに来ました」

「え?」



これは不意打ちだ。

予想だにしなかった。



「私と友達になってくれますか?」



まさか、そんなことを言われるとは。

僕は喜びの余り口が軽くなる。



「寧ろ結婚しようぜ」

「すみません!」



茅ヶ崎は勢い良く頭を下げる。



「即断!?」



呆気ない人生初のプロポーズだった。



「それで、お兄さん・・・?」

「ん、ああ・・・」



改めて言うと気恥ずかしいが、仕方ない。



「俺でよかったら」



そう言うと茅ヶ崎はニコッと笑ってくれた。



―――そういえば。



「親とはどうなった?」



後で麻香に訊けばいいのだが。

折角友人である本人が目の前に居るのだから。



「両親は私に干渉しなくなりました。何に関しても」



茅ヶ崎はわざとらしく茶色がかった髪を手櫛(てぐし)()いた。



「茅ヶ崎・・・・・・」

「ですが私は後悔していません」

「・・・・・・」



そうか。

お前がそういうのならば―――



「それに」

「ん?」

「両親は案外私のことを大切にしていたのかもしれません。私が愛に気付いてあげられなかったのかもしれません」

「何でそんな事が分かる?」

「名前ですよ」

「? 名前?」



茅ヶ崎は小さく笑ってあることに気付く。



「そういえばお兄さん、学校は?」

「そうだった!」



僕は自転車に飛び乗り茅ヶ崎に別れを告げて家を発つ。

僕は必至にペダルを漕いだ。



―――茅ヶ崎栄。


―――過去があるから今がある。


そんな文学者染みた事を言うつもりは毛頭無い。


ましてそれを他人に(さと)させるなんて思わない。


過去があって、未来があって、現在がある。


それらは一つ一つ独立しているのか。


目に視えない繋がりを持っていたとしても僕には到底理解する事なんて出来ないはずだ。


―――ただ。


茅ヶ崎栄が生きて成長してきた十四年は、麻香や僕と一緒に居た時間は、茅ヶ崎栄に―――


―――彼女にとって。


―――彼女達にとって。


僕は時間の無駄とは思わない。

「忘れる」ということは誰が考えようと恐怖である事に違いありません。その中でも、大切な用事をすっぽかしてしますことと、今まで生きてきた記憶を全て失う事は大きく差があります。後者の方が圧倒的に畏怖の対象でしょう。自分と言う存在は残るものの今までの人生を一切無に返すようなものだからです。記憶と言うものは大きく3段階から成り立つとされています。記銘によって覚え、保持で維持し、想起によって思い出す。記憶喪失とは特にその中の記銘、想起に異常があることで起こるようです。今作では実際にはない保持機能を一時的に破壊し、記憶を頭に残さないようにするというものでした。麻香は易々と記憶を消す事ができましたが、現実にそれを故意に行うには何が必要なのでしょうか。対象の心をズタズタに切り裂くショックなのか。研究され尽くされた薬品なのか。元々人間は不要と判断した記憶は忘却されるようになっています。もしかしたらそのような薬が存在するのかもしれません。


お久しぶりです。もしくは始めまして。王手です。読了ありがとうございました。

拙い文章を長々と書き連ねた小説ですが、何とか書き終える事が出来ました。

前回の常識潰しの後書きでは「次回は100ページだあ!」なんて事言っていましたが、無理でした。余りにもネタが続かない。90ページ弱なので、あと少し粘れば到達できたのですが、「完」と書いた瞬間の脱力で続きませんでした(笑 根性ですかね。

唐突ですが作者はますます茅ヶ崎栄というキャラクターが好きなっていきます。そこで麻香の名前が出てこないのは、何故でしょうか・・・・・・。また、鬼怒川先輩も暴れていく予定です(笑 実は彼女、本性は○○なんですよ。(・-・;)

それにしても今回の妹の時間潰しはどうだったでしょうか。他人の目から見ればそれでもまだまだなのでしょうが、書けば書くほど文章力と語彙が増えていくのを感じます←

既に今作を投稿させて頂いている間に次回作の構想を練る事ができました。次は学園祭の時期、6月頃にお会いできるかと思っていますが、時間と実力の関係で早くも遅くもなります。また数ヶ月ほどお時間を頂く形となりますが、もし気が向いたら次も読んでやってください。御願い致します。

ありがとうございました。またお会いできる事を切に願っております。


王手


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