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1/6の世界

「成る程な、マスナーめ。好き勝手にやってくれているものだ」


一つの身体で話し合う二人の会話は終盤を迎え、一人不機嫌そうに呟くクラフ。


「一人漫才を見てるような気分だぜ」


ウエダさん、その一人漫才とは何ですか?


「さて、この状況、お前達を信用して話すべきかどうか迷う所だな」


「話しが違うんじゃないかな」


「クレサイダ。お前もある程度は世界の欠片について知ってるのだろう。これが本当はどういうものなのかを。だから、お前はこいつらに黙っていた。違うのか?」


さすがに易々と話してはくれないか。中々口が固い奴だな。職務に対して堅実なのだろう。クレサイダが話さなかった真実とは何なんだ。マスナーは何をやろうとしている。


「クラフ伯父ちゃん…」


「クッ、分かったある程度は話してやろう。そんなつぶらな瞳で私を見るな」


前言撤回だ。愛すべき姪に対しては、腐った木の皮よりも口が軟らかいようだ。愛妻愛娘家のジンさんと良い溺愛勝負できそうだ。


「何処から話すべきか。まずは、世界の欠片が出来た理由。いや、この6つの世界が出来た理由を話すとするか」


イルサの切ない瞳に崩された顔の締まりが戻ったクラフ。やっと、本題に入れるようだ。


「最初はこの世界は一つだった…」


衝撃のカミングアウトから始まるクラフの話。


これは、千才になる私が生まれる遥か昔の話だ。

大まかに6つの種族の住む一つの世界。科学を力とする種族。魔法を力とする種族。自然と共存し、自然の力を借りる種族。肉体を無くし、精神だけで生きる種族。全ての力を僅かに力とする種族。そして、全ての力を最大限に持つ種族。

この6つの種族間での争いの続く世界だったらしい。


その世界を変えたのが、オシリス。彼は全ての力に優れた種族の中でも全ての能力に優れている人物だ。


彼はまず、世界の球を創った。それは手のひらに収まる球。しかし、それはその世界そのものだった。世界の形を変える代物だった。


次に創ったのは、世界の原理を封ぜし杖。オシリスの杖。そして、全てを切り裂く剣、ペグレシャン。


オシリスはペグレシャンにより、世界の球を六つに分けて、オシリスの杖で六つの世界を創った。そして、六つの種族は六つの世界へと別れた。争いを起こさないように。そして、いつかの日か、また世界を一つになる日を目指して。


「ハイハ~イ!クラフおじ様に質問で~す」


ルクはいつもながら、度胸があるな。話をぶち壊して、クラフさんにおじ様をつける度胸はお前かイルサぐらいだぞ。


「つまり、その世界の球を割った後が、世界の欠片で、オシリスの杖がドゥーチの杖なんでしょ~。何でそんな重要な物が各々の世界にあるの~?後、セレミスキーがクーレに来た理由やペグレシャンがヘブヘルの魔王様に渡った理由も知りたいな~?」


俺の持つセレミスキー。アールからセイン・セレミスが召喚したものだと聞いているが、セレミスキーが今回の件と関係有るのか。


「セレミスキー?オシリスの鍵の事だな。それに関してはこれから話そう。それにしても、これだけの話でそこまで読めるとは、中々賢い淑女だな」


クラフに褒められて、それほどでも無いですよ~と、笑って誤魔化すルク。こいつは、普段何も考えていないように振る舞っているが、実は考えが深い。普段の振る舞いから誤解され易い奴だがな。

少しだけそんな根は真面目なルクを見つめてしまう俺が居た。


「リセ君。そんな私の事を尊敬し直した眼で見ないでよ~。私はいつも尊敬出来るレディだよ~」


どこがだ?


「あ~、二人ともそういうあれは後でやろうか。クラフさん、この二人のやり取りは無視して続けてくれや」


ウエダさん、今、ルクを見直さなければ、いつこいつを見直せて言うのだ。


クラフさんが話し出すのを止める気は無いがな。



まずは観測者の説明だ。私達の役目だ。端的に言えば、他世界を争いの無い世界に最低限の介入で導く事。直接的には手を下さない。その世界の統率するに値する人間に知識や力、世界の欠片を与える事。それを行うのが観測者の役割。アールから各々の世界に一人だけ送られる存在。私はヘブヘルの現観測者…だった。


しかし、ニ千年前のことだ。アールに介入者達が現れた。現世界を否定し、現世界を原初世界に今すぐ戻そうと、各々の世界に裏で糸を引き、動かす奴らがな。その代表がセルジオ、そいつに従う一人がマスナーだ。


まず奴らは各々の観測者に配られる異界への道を開き易くするオシリスの鍵と杖、ペグレシャンを奪った。それは用いて、観測対象者に世界の欠片を集める為にそれを配ったのだ、各々の世界の力ある者に。


しかし、誤算だった。ペグレシャンと世界の欠片を得たヘブヘルのシールテカは、他世界に興味を持たず、ヘブヘルの統一に尽力を注ぎ、クーレのセイン・セレミスは有能であったが、有能故に、そのオシリスの鍵を困窮する人の為にだけ使った。介入者は使い方を間違った。セレミスに世界を統一しろと催促する介入者の代表格セルジオに対して、セレミスはオシリスを召喚すると言う最善の判断を取り、セルジオはオシリスの創りし異世界の牢獄へと封じられた。


それで、終わった筈だった。クーレの観測者だったマスナーが裏工作を始めなければな。


六百年前のクーレの動乱。クレサイダやそこのシュナアダは良く覚えているだろう。あれはマスナーがクーレ人を唆し、魔王を喚ばせ、その魔王に欠片を集めさよとした事に起因する。結果はクーレ人の知る通り、その愚かなるクーレ人、リンセン・ナールスによって失敗に終わったがな。


「そして、最後に二十年前のクレサイダが勝手に起こしたクーレでの争乱。まぁ、上手く利用しようとしたらしいが、ヘブヘルの観測者だった私の妹が仕事を放棄して、魔王シールテカが、あのクソ野郎が!まぁ、手を出しててだなぁ、うむ。その色々と合って失敗したのだ」


最後の話でかなり重い話しが軽く感じてしまう。


「えっと、お父様とお母様がどうしたの?」


「ソッ、それは、まぁ、観測者として話す訳には如何のだ」


イルサ、クラフさんも伯父として大変なんだ。そこは突っ込んだ話を聞かないでやってくれ。


「取り敢えず、マスナーの意図は分かっただろう。世界を統一する事だ。カイムだったか?あいつらがマスナーに操られる理由は分からん。まぁ、シールテカの血を引いて、全世界の王になろうとしている辺りだろうが」


「お父様もお兄ちゃんもそんな事しないよ!」


クラフさんの言葉を隣である程度清聴していたイルサが急に机を叩く。


「イルサテカ様。現にカイムはシールテカ様やシルビーテラ様を殺害しました。もう貴女の兄では無いのです。そこをわきまえて下さい」


シュナアダが魔王を諌める。それで顔を雨模様に曇らせて席に着くイルサ。シュナアダの言っている事は最もだと感じられる余裕が俺には生まれてはいる。しかし、それは魔王に対してだ。イルサの兄に対して想いへの配慮は無い。こんな時に俺はイルサに何て声を掛けてやれば良いのか。


「イルサ。まぁ、今までのクラフさんの話が、召喚とか、異界の争乱とか半分も分からねぇ俺が言うのもなんだけどよ」


微妙な沈黙状態を破って話し出すウエダさん。


「俺みたいに色んなバイトをやってりゃあ、嫌でも知るんだけど、人には、立場ってものがあるわけよ」


俺もヘブヘルに来て学んだ。と、思っていた事。


「クラフさんにゃあ、観測者として観測者の立場が在るし、シュナアダさんにゃあ、魔王様の補佐官としての立場が在る。だから、お前の兄ちゃんにその立場から見ちまって、判断しちまうんだよ。それが立場ってもんだよ。だから、この人の言う事は間違っちゃいない」


ウエダさんの大人な意見に素直に納得出来ないのは、俺が子供で甘ちゃんだからか?その立場上、正しいから従えと言うのか。


「でもな、お前にはお前の立場があるんだぜ。カイムの妹って立場がな。だから、無理にお前だけが意見を押し込める必要はねぇよ。俺はこの人の立場も尊重するし、お前の立場も尊重する。ただ、それはこいつらの立場を汚して良いもの訳では無いぞ」


ウエダさんが、あれだ。あれなんだ。凄く大人らしく見えてしまう。そして、俺がとても子供みたいだ。


「いやぁ、ウエダ君。成長したねぇ。おじさん、育ての親として嬉し涙が出て来てしまうよ」


「茶化すな。第一、お前に育てられた覚えはねぇ」


世界の欠片についてよりも俺の立場でイルサの為に何が出来るのか。そんな事を考えてしまう俺が居る。

少し説明文が長くなっちゃいました。



まぁ、真相はこんな感じです。深く無い真相でしたが。


次話こそはリセスに語り部を外れて貰いましょう。

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