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勇者、再来す

炎を背景に地上に現れた4人の影。絶望を見た。


「イルサテカよ。中々頭を使うようになったではないか。しかし、あんなことで我が倒せると?」


ヘブヘル人は化け物なのか?


「思ってないよ。そんなこと」


剣を構えられる彼女が羨ましい。


カタナに触る右手も震えている。カタナを握れない。


闘えない。


逃げたい。


怖いんだ。俺は。


こんな奴等に無謀に立ち向かえって言うのか。


無理だ。俺には無理だ!

父上に憧れた。魔王に勇敢に立ち向かう父上。ライシス・ネイスト、勇敢なる父を持つその息子はとんだ腰抜けだ。


身体だけ強くなったつもりだった。こんなに怖い相手と会ったことが無かった。


「無理しなくて良いよ。付き合わせてごめんね」


イルサの言葉。俺は怯えを隠しきれてさえいなかった。


イルサが光の弾丸を放つ。カイムの前でそれは弾かれる。


先程のイルサの物言いに、カタナが握れた。


その要因は廃棄すべきちっぽけなプライドだ。


無理をするなだと。あいつの相手で手一杯の癖に。一人でやらせられるか!


付き合わせて悪い。付き合わせたのは俺の方だ。


悪いが俺のプライドに反する。


女一人で戦わせられるか!破れかぶれでやってやる!


俺はどうやら父上のような崇高な精神は持ち合わせていないらしい。



カイムが此方へ来る。

速い。だが、母上のカタナよりは遅い!身構えるイルサの前に俺は出る。


一撃を繰り出す。


反応した。カイムのカタナと合わさる。

それで良い。俺では無理でも盾ぐらいになってやる。


イルサのカイムを貫く風の矢。カイムが僅かな傷を追いながらも俺と離れる。


「どうだ!」


何を誇っているんだ、俺は。かすり傷を与えただけだ。しかも、俺ではなくイルサの功績だ。

俺一人では何も出来なかった。イルサが居たから出来ただけだ。

なのに、何故俺はこんなに気分が良いんだ。


「フム、やってくれるな。ハシュカレとやら手を貸せ」


顔傷は俺の一撃による出血が徐々に効いているようで戦線不可能だ。カイムを召喚した謎の女に抱えられている。


魔鎗エレウクイは侮れない。二対二か、不利には変わらないが何とかしなくてはな。父上のように世界を守る為に!


「イルサ、やるぞ!」


「うん!」


心強い、隣にこいつが居るだけで。

あの一人でも強い父上が、アレンが居なければ俺はダメダメだ、と言っていた気持ちが謙遜では無いと今は分かる。どんなに自分が強くても隣にこいつが居ないと心が弱くなる。

そういう事だろ、父上!


カイムが仕掛けて来る。イルサが迎え討とうとする。イルサへと魔鎗が伸びる。俺はハシュカレの攻撃を防ぐ為に動き出す。


「そこの子ぉ、退いてぇー」


聞き覚えのある間を抜けさせる独特な声だ。

イルサが身を翻す。カイムが声の方を見た。


カイムの足を貫く銃弾。


カイムが危機を感じ空へとその翼で逃げようとする。


俺の横を通り抜ける風に靡く金の髪。


カイムを襲う輝く剣、魔剣ペグレシャン。



カイムは交わした。左翼を犠牲にして。


「カイム様!」


その女がカイムの側に寄る。ハシュカレと傷顔も集まる。


「本当にやってくれる…。大丈夫だ。この程度そのうち治る」


立場が逆転した。勇者が来たのならば負ける訳がない。


「全員大人しくしてください」


「また貴様か。また邪魔をするかアレン・レイフォート!」


ハシュカレが怒鳴る。


その時、謎の女の手から光が現れる。


そして、その女は消えた。顔傷の男、ハシュカレ、カイムも。

残ったバークス邸の瓦礫。


「カイムーー!」


この女の叫びだった。


「ルク、近くに居る?」


「居ませんよぉー。転移魔法ですかねぇー」


楽に言ってくれる。転移魔法なんて簡単に出来る代物では無いだろう。成功例は数件しか無いぞ。

アレンさんがそんなことを考え込む俺を見た。この人では見たことの無い弱々しい顔だった。


「リセス。勝手に動くな。心配したよ」


心配をおかけしながら、申し訳なく思うより嬉しく思ってしまった。


「それでぇ~、そちらの異常に魔力の高い翼の生えた子はリセ君のコレェ~?」


小指を立てながら如何にも愉しそうに聞くルク・レッドラート。


「彼女は危険では無いよね?」


アレンさんに彼女を召喚した経緯を説明する。


「危険かどうかは計りかねています。しかし、無闇に攻撃をしてくるような奴では無いです」


イルサには悪いと思うがかなり強力な力を持っているのは確かだ。


そういえば、先程からイルサが静かだ。イルサは地面に仰向けに倒れていた。


「おい!イルサ、どうした!」


まさか、何らかの怪我を負っていたのか?


「死ぬほどでも良いから御飯食べさせてぇ~」


この涙声が周囲の人々の警戒心を根刮ぎ消した。

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