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イルサの中のクレサイダ

只でさえ、貧血気味なのだが、この光景に頭へ血が集まり始め、薄れ始めていた腹の痛みがはっきりしてきた。この状況どうしたものだろうか?


「お、女、何のつもりだ?」


観測者もイルサの突拍子の無さすぎる行為に困惑しているようだ。答える余裕が無い程泣き崩れているイルサ。


これは、どういうことだ。確か観測者はイルサの母方の伯父という話だから、親族との思わぬ再会に感動。それはないか。目の前でクレサイダを乗っ取り、兄を斬った人間だぞ。俺の頭に浮かんだ愚考を追い払う。


「リセス、イルサ、何やって…」


「リセ坊、イルサ嬢、何やって…」


「リセ君、イルちゃん、何やって…」


揃いも揃って絶句する仲間達。俺もイルサに尋ねたい。


「イルちゃん、えっと、観測者さん、何やってるの~?」


良くこの混沌を目の当たりにして二の言が出るな。ルクのそういうところは尊敬に値すると今は思う。


「わっ、私に聞くな!この女が勝手にくっついて来てだな。勝手に泣きじゃくっている訳でな!私は姪に抱き着かれて喜んでる訳ではない!昔のシルビーに似ているからと言って、姪に欲情したりはしないぞ。あれだ。まぁ、一応姪であってだな!」


激しく情けない言い訳を並べる観測者。嘆かわしく豹変した観測者に俺は頭が痛くなって来たぞ。とにかく、この観測者にイルサを預けて置くとジンさん的な意味で危なそうだ。


観測者の胸に収まり泣き続けていたイルサが顔を観測者に見せる。その涙に濡れた顔を見て、観測者からウッとくぐもった声が漏れる。


「私、お母さんに似てる?」


「あっ、ああ、そっくりだ!だから、離れなさい」


イルサのおそらく無計画だろう仕草に弄ばれる哀れな観測者。先程、カイムを一蹴した人物さえも、大人しくさせてしまう女。

イルサ、お前は一体?いや、これが魔王たる実力なのか?


少し頭がぼやけて来たようだ。血が足りてないな。


「イルサ嬢、とにかく観測者さんから離れないかね?お困りのようだよ?」


「うむ、そうしてくれると助かるのだが?」


ウエダさんの肩の上からセルツが言い、随分腰の低くなった観測者が賛同する。


「まだ駄目!まだ、足りないの」


頼む。只でさえ頭が回らないんだ。分かり易く主語を使ってくれ。


「どういう事だ?…なっ、身体が!クレサイダか!魔力を身体を通して送っているのだな!」


イルサを振りほどこうとする観測者。必死にしがみつくイルサ。イルサの目的が判明した。


「ごめんなさい、伯父さん!でも、私にはクレサイダが必要なの!お願い、クレサイダを返して!」


「クッ、しかしこの世界は魔力が無い!そんなことをしたらお前の魔力が枯れるぞ!」


「私には魔王の証が有るもん!」


魔王の証。イルサに所持者に魔力が満ち溢れる者だと聞いていたな。


「お前がヘブヘルの欠片を継承したのか!いや、しかし、こいつはシールテカと共に異世界を荒らすという我らの目的に背く行為をしていた…」


「そんなの関係無いよ!」


イルサが観測者にすがり付きながら、大きく弁明を遮る。


「クレサイダは確かに少し我が儘で自分勝手で」


「少しじゃなくて、かなりだよね~」


茶々を入れるなルク。しかも、お前が言えることじゃないだろう。


「あれをしたら駄目、これをしたら駄目、あれをしろ、これをしろって煩いし」


イルサの荒唐無稽な言動に、口を出してしまうクレサイダの気持ちは良く分かるぞ。


「それに悪いことも一杯したと思うよ」


俺達の世界で二度も戦乱を起こした。


「でもね。クレサイダは本当はすごくいい人なんだよ。優しいんだよ。素直なんだよ。私にはクレサイダが必要なんだよ。いつまでも側に居てくれなきゃ嫌なんだよ。クレサイダが…」


また、泣き出すイルサ。何故、彼女がクレサイダを必要とするのか。イルサの発言からは、全く説明されてない。だから、イルサがクレサイダを求める理由は分からない。俺がクレサイダが戻ってくることを望んでしまう理由も分からない。


「…どう足掻いてももう遅い」


観測者が動くのを止めて誰に言うとでもなく話す。


「既にクレサイダが動き出している。今はこの身体を貸してやる。ただし、大切に使え、クレサイダ」


言い終えると力が抜け落ち、イルサにもたれかかる観測者。


「まぁ、精々大事に使わせて貰うさ。観測者」


僅かな間が空いて出た言葉。


「クレサイダぁ~!」


今日のイルサは泣いてばかりだな。良く涙が枯れないものだ。


「ひっ姫!家来に抱き着くなど!駄目です!直ぐに離れて下さい!もう十分魔力は溜まりましたから!」


「駄目。もうちょっとこのまま」


「今は、このようなことをしている場合じゃ…」


「クレちゃん、嬉しそうだね~。私もハグしちゃおうかな~?」


「ふざけてないで、君等もなんとかしろよ!」


クレサイダの胸に顔を埋めて泣くイルサ。いや、もう少しぐらい良い思いしても良いんじゃないのか、クレサイダ。別に俺はイルサにベッタリされるクレサイダに嫉妬などはしていない。


少し気が緩んでしまっただけだ。足の震えが酷くなってきた。


「リセス坊!イルサ嬢、リセス坊の手当てを早く!」


今度は俺が参る番か。


目が不鮮明になるなか、イルサの手が当たる感覚と痛みが引く感覚を感じる。


「傷は塞いだけど、血が足りないから、動けないよ」


聞こえ辛くなった声が耳を通り、回らない頭に届く。


「たくっ。無茶して!」


悪かったな。


誰かに背負われる感覚。翼が顔に当たる。


「すまん…」


まだ動いた口。


「良いから、寝てなよ」


礼ぐらい素直に受け取れよ。


この危険な状況の最中、俺は一人、足手まといにも寝るのか。

しかし、まぁ、大丈夫だな。

なんと言っても、今の俺達には、異世界を跨ぐ大悪雄クレサイダがついているんだからな。こいつなら何とかしてくれるだろう。


何とも不思議な安心感だ。

という訳で、クレサイダ復活!

そうそう殺られませんよ。この男は!



長いアース編。後、ニ三話で終わる予定です。


もうちょっとアース編をお楽しみを!



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