番外編 幕開けに間に合わなかった大名優
ここに来るのは20年ぶりか。あの人とあの時、訪れて以来は来ていなかった。
僕の大きく変えた。あの時からもう20年が経ったんだ。本当に大きく変わった。
このナールスエンドに初めて訪れた時に、また僕が騎士団に入り、まさか一隊を任される隊長になるとは思ってもみなかった。
一人で感慨に耽ってはいけないな。僕は今、隊長だ。
「レクス君、宿を探してくれ。僕はリセスを探して来るよ」
この時間ならば彼も宿で休んでいるかもしれない。いや、彼の真面目な性格からすると勝手に動いているかもしれない。頼むから、無理をしてないでくれよ。
ルクが僕の手を掴んだ。僕が上から覗くと顔色が悪い。
ジン隊長に無断で付いてきたとはいえ、もう少し彼女の足にペースを合わせるべきだっただろうか?
ルクは街中の一方を指で示す。
「あっちで何か大きな魔力を持った動くモノが二つあります。この世界の生物だとは思えませんよ」
彼女が真剣な面持ちで指を差す方向で異変は起きた。
爆発音。そして、暗い空を照らす炎。
「レクス、テド、周辺住民の避難の誘導と救護を!」
「「ハイ、隊長!」」
うちの医術隊士と銃隊士は直ぐに動き出した。
「ミシャとルートは僕の援護を頼む。行くぞ!」
「私はぁー?」
「ルクはここで待機!君に怪我をさせたらジン隊長に殺される」
走り出した僕の命令にルクが素直に従ってくれるとは全く予想していない、予想したように彼女は僕に後れて走っている。
今はルクに構ってる場合では無い。頼むから怪我をしないでね。君に怪我をさせたら、ジン隊長どころかニーセさんに顔向け出来ない。
僕の頭に巡る二人の人名。
オルセン・ハシュカレ、何をしたんですか、貴方は!
リセス・ネイスト、頼むから無事でいてくれよ!
僕らが目指す場所に彼は居るだろう。確信を持ってしまう。この騒動の中心にいる。
この場面に合わない苦笑いが溢れた。
大舞台の中央へ立ってしまう主役。
それがあの人から受け継いだリセス・ネイストの宿命のように感じた。




