訳が分からん
全速で戻って来た俺に、クレサイダは部屋から不機嫌な顔を覗かせる。
「騒々しいよ、リセス。姫が起きられてしまったじゃないか」
「そんな事を言ってる場合じゃない。カイム達がこの世界に来た!」
「チッ、もう来たのか。姫!セルツ!」
状況の把握が速くて助かる。
「はぁ?カイムって誰だ?というかルクはどうしたんだ?一緒に行ったんだろう?」
ウエダさんが玄関に現れる。
「カイムは俺たちの敵だ。ルクは…、勝手にカイム達に向かって行った」
クレサイダの顔が曇る。
「ハァ~!一人で行ったのかい!というかどうするんだよ!ルクが居なければカイム達の場所なんて分からないじゃないか!」
俺だってどうすれば良いかなんて分からない。
「ルク嬢やカイム達の居場所はおじさんが分かるさ。おじさんもクーレの欠片に触れたからね。ルク嬢よりは劣るがこの世界ならば問題無いよ」
部屋から出て来た寝惚け眼のイルサの肩で暴露するセルツ。そういう事は早めに言ってくれ。
「とにかく急ぐよ!」
クレサイダの言葉に家を出ようとする俺たちにウエダさんが止める。
「待て!急ぐんだろ?車出してやるよ」
不思議なものだ。こんな鉄の塊が馬に引かれている訳でも無いのに、こんな速度で動くのだから。
「あっちの方にルク嬢はいるよ」
「あっちの方って、迂回しないといけないじゃんかよ。道は分かんないのかよ」
丸い輪を回しながら、聞くウエダさんにセルツは頷く。
「それで、ルクをどうして一人で行かせたんだい?」
手持ちぶさたになったクレサイダが尋ねてきたので、訂正して答えてやる。
「行かせた訳じゃない。あいつが勝手に行ったんだ」
俺が責められなければいけない理由は無い。
「ルクは小賢い奴だから、そんな無謀な事はしないと思ってたけどねぇ」
「俺もそう思ってた。今日のルクはおかしかった。家を出てから妙にしおらしかった。それなのに、急に怒って、挙げ句の果てに独断専行だ」
ルクへの罵りを止める。俺はかなり苛ついているらしい。
「リセス、ルクちゃんと喧嘩したの?」
泣きそうな眼で俺を見るな。俺が感じる必要の無い罪悪感が出てくるだろ。
「別に喧嘩はしてない。イルサの話をしたら、ルクが勝手に怒った。それだけだ」
ところで、さっきから俺以外の男性陣の漏らして息の合った溜め息は何なんだ。
「リセスさぁ、僕は言えるような事じゃないけどさぁ、ルクへの態度を改めなよ。もっと気を使ってあげなよ」
「俺は十分気を使ってる。これ以上どう気を使えと言うんだ?」
ルクの我が儘をこれ以上配慮してたら、俺が持たない。
「リセス坊は若いからしょうがないかも知れないがね。ルク嬢の気持ちも考えてやりなさい。ルク嬢も御年頃な女の子なのだよ」
「俺にはあいつの頭の中ほど理解出来ないものは無い。これでも俺は年頃の娘に対しての配慮はしているつもりだが」
何故に俺が責められているのか分からない。俺はルクに悪い事をしたのか?思い当たる節は全く無いのだが。
「とにかく、リセス。気を利かせろ。そして、機会を見て今日の埋め合わせしとけ。それにしても、俺は既に二人が付き合ってるのかと思ってたぜ」
ウエダさんの意見に納得がいかない。しかし、周囲からここまで言われると俺が悪かった気がしてくる。
因みに俺とルクの付き合いは長いぞ。
産まれた時から家族ぐるみの付き合いだからな。
「ここら辺りに居るよ」
「ルクちゃん、居た!あっちにカイムも!」
セルツの言葉に合わせてイルサも叫ぶ。
カイム達は木の後ろに隠れるルクに背を向けて歩き出すが、顔傷がルクの方へ。不味いな。
車の扉を開けて飛び出す。
ルクが木の影から出た。カタナを抜いた顔傷のルクとの間が埋まる。
その埋まる間に入ることの出来た俺。
「ルク、一人で無理をするな!」
俺から謝る言葉は出なかった。皆の言った事の訳が分からなすぎて、自分も訳が分からない事を言っていた。
題名通り、訳が分からなくなったかもしれません。
まぁ、これからもリセスにはもっと困惑してもらいましょう。
訳が分からない小説書いてんなぁ~!とお怒りの方は、お手数ですが感想を下さい。
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感想に飢えているお年頃な天見酒です。