魔王vs魔王
「後で夕飯を死ぬほど食わせてやるから手を貸せ」
これが対価ならば安い上がりだ。実力は未知数だが俺一人よりはマシだろう。
「死ぬほどは食べたくないよ。生きてるほど食べたい!」
今はそんなおふざけはいらない。
何故か俺たちの行動を見守る敵がいる。さすがに無事に帰してくれはしないだろうが。
「今は敵が前にいる!前を見ろ!」
いきなり喚び出して手伝えと言っておきながら、少し強く言い過ぎたか?無言になる彼女の驚愕の顔。そして、彼女は剣を抜いた。
「久しぶりだな。魔王イルサテカ」
俺にやられた奴からカタナを拾い上げこちらへ向ける赤髪の男。しかし、あいつが魔王ではなく、こいつが魔王なのか?
「誰がそいつを喚んだの?」
声、雰囲気が冷淡へ豹変していた。彼女から伝わる重い感覚。俺の顔に流れる冷や汗。俺は危険な奴を喚んでしまったかも知れん。
赤髪の男曰く、魔王イルサテカ。先程までの威厳の欠片も無い姿は今は無い。本当にこいつは魔王なのか?
「そいつは、…カイムはとても危険な奴なんだよ。何で喚んだの?だから牢に入れてたんだよ。誰が喚んだの?」
俺の隣から来る強い圧迫感。彼女はかなり頭に来ているらしい。
「だから、我を殺しておけと言ったのだ。甘過ぎる自分を悔いるのだな、イルサ」
どうやら因縁深き仲と言うことか。少なくともカイムという男の危険性は分かった。
「素直に牢に帰る気は…無いよね、カイム?」
「フフフ、我がそんな柔順な人間に思えるのか。せっかく出れたのだ自由に暴れさせてもらいたいな」
彼女の翼が一回羽ばたく。
「…分かったよ」
その言葉が開戦の合図だった。
イルサテカがカイムへと一気に距離を詰める。カイムも同じく突き進む。二人の刃が合わさる。
「ウゥ、クゥー!」
「やはり、純粋な筋力では我が上か」
鍔迫り合いに対して力む呻くイルサに、カイムは涼しい顔を見せている。二人の顔が近付いて漸く分かった。
この二人は似ている。ヘブヘルでは在り来たりかもしれないが赤髪と赤い瞳、そして端整な顔立ちが何処と無く似ている。
力の均衡が解かれる。カイムが彼女の腹部へ蹴りを入れる。彼女が俺の側へと床を跳ねながら転がった。
呆けてこの二人の関係について考えている場合では無かった。
素早くカタナを鞘へ収め、右足を前に出し、腰を少し落とす。
彼女へ止めを差そうとするカイムを見る。
一撃必殺。これを使うしかない。鞘走りの勢いを利用した最高速度と最高威力を誇る刀技。必殺。しかし、外せば出来るその隙は大きい。母上に下手に使うなと言われた手段。
タイミングを外すなよ、リセス・ネイスト。
「居合いだな」
横から急に現れたカタナ。それを防ぐのに俺のカタナは使われる。傷顔の男。くそ、邪魔だ。カイムを倒せるだろうイルサを失う訳にはいかんというのに…
向かって来るカイム。痛みに咳き込みながらイルサが手のひらから光の玉を売った。
止まるカイムと爆発。その隙に傷顔の男に鞘を叩き込んでやる。
その近距離からの魔法にカイムがやられてくれれば良かった。魔法防壁か、あの高威力でピンピンしてやがる。
イルサの魔法は別の効果を産んだ。
カイムの頭上から落ちる砂と石くれ。この地下室が軋みをあげる。こんなところで高威力の魔法を使った結果だ。
「チョ、何するのォー!カイムー!」
うるさい。お前の馬鹿のせいだ。樽担ぎされ騒ぐ彼女を無視して階段をかけ上る。後ろからは倒壊していく地下室の音。彼女の翼が中々触り心地が良かったのは、この場では関係無いと割り切ることにする。
崩れる可能性のあるバークス邸から外へ出たところで彼女を下ろす。
あいつらは出て来ない。
「…生き埋めか?」
本当に生き埋めなのだろうか?これで終わりなのだろうか。
「怪我をしたのか?」
イルサは隣で自分の身体を隈無く手で確認している。
「お父様がね、男の人に余り密着しちゃうと身体が腐っちゃうから、男の人には余り触れたらいけないって言ってた。ねぇ、私の身体腐って無いよね?」
それはそのお父様とジンさんを会わしてみたいものだな。
これから、どうするべきか?増援を待ってからあいつらの生死を確認するか?
バークス邸を眺めながら煙草を一本取り出し口に加える。
「何それ、食べ物?」
興味津々な彼女の言葉に張り詰めていた俺の気が緩む。こいつの住む世界には煙草は存在しないらしいな。
この楽しみを邪魔されたくは無い。彼女の顔を見ながら火を付ける。
轟音。バークス邸に炎が上がり、崩壊が始まる。
「凄い!その白い棒は魔道具なの!」
彼女の勘違い通りならば良かった。しかし、これは俺や煙草の為す術では無い。
炎の中から現れたカイム。その後ろには、ハシュカレと顔傷の男、謎の女。そう簡単にくたばる奴等では無かったか。
俺はこいつらに勝てるのか?
書けない!戦闘描写が全く上手く書けないよぉ~!




