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緋色に染まる水の国

止むことの無い波の音、辺りに満ちる潮の匂い、そして、視界一杯に広がる夕日に照らし出される赤き水。海だ。まごうことなき普通の海だ。

クラゲが空を飛んだり、クジラに羽根が生えていたり、カエルが塩水の中を泳いでいたり、大きいイカが浜で昼寝しているという現実さえ無視すれば、クーレの海とそう変わらないさ。普通の海だ。


「潮風が気持ち良いね!」


「本当だねぇー!」


女性陣はとても元気だな。イルサに到っては当然だな。こっちは身体の節々が痛いというのに。

エイアハスに乗りながら、人の身体に身を預けて寝てたんだからな。勝手に寝られたこっちは全く良い迷惑だった。


落ちないように後ろからしっかり支えなくて行けない、起こさないように身体を動かせない。そんな俺の奮闘を知ってか知らずかイルサは俺の腕の中でスヤスヤと。俺の腕の中で…


「それで、イルサ嬢の抱き心地はどうだったかね?」


気付けば、俺の肩を占拠している栗鼠。


「そんなことはどうでも良いだろ!」


そう、全く関係の無い事だ。イルサの身体の感触とか、髪がさらさらしていたとか、寝顔も可愛いなとかは!


「リセス坊…若いって良いね!」


このエロ栗鼠親父が!


「そんな事よりメーランスとかいう奴は何処に居るんだ」


「ホォ、急遽話題を変えたね、リセス坊?照れてるのかな?おじさんのジョークだよ!剣を抜こうとしないでくれ!」


俺はクレサイダとは違う。からかわれたぐらいで叩き斬るなんてしないさ。少し試したくはなったがな。

セルツ、そんなに慌てて俺から離れ無くても大丈夫だぞ。


「メーランス殿、お久しぶりです」


ああ、浜で夕日に当たっている大イカがメーランスだったのか。むっくりと身体を起こすイカ。その身長は二階建ての建築物くらいあるだろうか。


「フム、セルツテインか珍しい。しかも、なお珍しいことに異界人と一緒か?」


「いやぁ~、彼等はいろいろと愉快でね。諸君、彼が夜海を司る精霊、メーランスだよ」


「僕たちは愉快ね…」


不愉快そうだなクレサイダ。俺はこの面子はかなり愉快だと思うぞ。お前を入れて愉快なメンバーばかりじゃないか?俺だけは当てはまらないかも知れないが。


「メーランスさん、突然で申し訳ないですけどこれと同じ物を持ってますぅ?」


ルクが懐から取り出す赤い結片。見知らぬ人、イカ相手に無用心過ぎないか?セルツの件もあるんだぞ。この世界の生物が完全に無害とは言えない。


「ああ、持ってるぞ。私が夜の海底で拾った物だ。なんならば、くれてやろうか?」


十本ある足の一本を懐(?)に忍ばせて、ゆっくりと動かすマーランス。この世界に人を疑うこととは無縁らしい。お人好ししか住んでいないのか?


マーランスはその大きな足で器用に夕日を浴びてなお青く輝く結片をルクの掌に置こうとする。


「駄目~!」


ルクが急に叫んだ。

マーランスの身体を貫く無数の氷の刃。

「マーランス殿!」


セルツの叫び虚しく、砂煙を上げて地に倒れる巨体。


黒赤い空に舞い、砂地に落ちたフィフレの欠片。その鈍く光り続ける欠片を手に収める為に動く俺とクレサイダ。その俺たちの顔すれすれを通る鎗。


遠くからの魔鎗に足止めを食らった俺たちの前に、夕日に生える赤髪、赤眼の男が立ちはだかる。


その男の後ろで、悠々とフィフレの欠片を拾う特徴的な杖を持つ女。


やはり俺たちは危機感が足りな過ぎたらしい。

よーし、やっと戦闘シーンに突入だ。天見酒の最も不得手な分野ですな!

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