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精霊世界フィフレ 2

暫くして心配する俺たちを余所に立ち上がるセルツテイン。地に落ちたシルクハットを頭に置きながら言葉を発した。


「ルク嬢は大層な物を持ってるねぇ。頭にゴチャゴチャしたものが入ってきて、おじさんは気が狂うかと思ったよ」


「ごめんなさい」


珍しく意気消沈なルクにクレサイダが追い討ちをかける。


「世界の欠片を初めて触れた時に君は何とも無かったのかい?ならば、化物だね。覚悟の無い奴が簡単に触れて良い代物じゃ無いんだよ、それは!」


「クレサイダ、その辺にしてやってくれ」


「クレサイダ君、ルク嬢を責めんでやってくれ。おじさんが勝手に触ってしまったのが悪いのだよ」


自分でも甘いとは思うが、ルクのしょげた顔を見るとあまり責めては可愛そうに思えてしまう。ルクは普段から黙ってれば可愛げがあるのだがな。


「それで諸君はこの世界の欠片を探しているのだったね?」

「何処に在るのか知っているのか?」


「全く知らないなぁ」


セルツの意味深な物言いに生まれた希望は直ぐに彼方へ消えた。俺の落胆に継いで、クレサイダが直ぐに新たな希望を灯すために口を出す。


「この世界で一番強い人物…生物は誰だい?例えばこの世界のトップに君臨する生物とかは?この世界での強国は何処にある?」


天神界アールが世界の欠片をその世界の代表者になる資格を有する者に配ったんだったな?クレサイダの頭脳は機敏に働いている。


「ウ~ン、それはフィフレでは難しいよ。フィフレには五つの国が在るからね。木の国、土の国、火の国、水の国、風の国。因みにここは見ての通りの木の国さ」


確かに見ての通りだな。木が其処らを漂う国。その他の国はどんな不思議が有るのだろうか気になる。


「その中で一番強い国は何処になるんだい?」


「そんな事は分からないさ。おじさんは昔、クーレに召喚された事が有るから知っているけどね、クーレに有るような戦争なんて物がこの世界には無いんだよ。この世界では自分の住みやすい所に住む。国と言っても国境が有る訳じゃないし、国王のような代表がいる訳じゃない。争う必要が無いんだよ。どの国が強いか何て誰も知らないさ」


闘争の無い世界。誰もが好きに生きられる世界。多少羨ましく思うが、何か寂しさもある。少なくとも戦士である俺には似合わない世界だな。これは俺が戦い好きと言うことだろうか?


そんな下らない自問自答をしている場合では無いな。この世界の住民でも手掛かりが皆無と言うことは、俺たち余所者が見付けるのは不可能に近いだろうな。


「取り敢えずおじさんは木の国に長く住んでるけど、その世界の欠片らしき物は見たことが無いよ。他の国を探した方が良いね」


後、四つの国をしらみ潰しに探すのか?こいつは大仕事だな。何年掛かることやら。


「ねぇー、私達が大変なら、カイム達だって大変なんじゃないかなぁ~?」


先程の失態からじっと黙っていたルクがようやく立ち直りを見せて、良案を出す。


「フィフレは一旦諦めて、他の世界から探した方が早いんじゃない?カイムがこの世界に居るのかも分からないんだし~」


確かに一理ある。俺たちの目的はカイムより先に欠片を手に入れる事ではなく、欠片がカイムの手に渡ら無ければ良いのだ。見付ける事が困難ならば時間を浪費してこの世界を探し回る必要は無い。


「ダメ!絶対にダメ!」


イルサが焦ったように怒鳴る。鷹が威嚇するように翼を広げたイルサの猛反対にルクが僅かに肩を震わす。


「カイムはとても危険な奴何だよ!この世界で何をするのか分かんないんだよ。カイムがクーレで何をしたのか見たでしょ!カイムは残虐で、非道で、最低で!」


「イルサ、落ち着け!」


イルサの声の大きさに俺も合わせてしまった。今は実兄に対する有耶無耶な感情まで吐き出しても仕方ないだろう。ルクはお前とあいつの関係を知らないのだから。頼むからそんな顔で怒らないでくれ。そんな眼で怒らないでくれ。


「…ごめん。でも私はフィフレにカイムが居ないって事がはっきりするまではここに居たい」


イルサの感情を大きく反映しているだろう翼は小さく畳まれた。何とも読み易い感情表現だな。それ故に俺はこいつの感情が気になってしまう。


「あのイルちゃん、そのごめんね。無責任な事言って」


「別にルクちゃんが悪い訳じゃないよ…」


気まずさに一同無言となった。まるで喋った奴から殺されると言うような空気が漂っている。こういう時に空気を払拭する役目のルクすら匙を投げている。

この空気を崩したのはこいつの突拍子の無い行動。


「ヒャア!」


セルツがイルサの足と背を駆け上がり、イルサの肩で止まった。セルツの急なアクションに声と翼を上げるイルサ。


「諸君、まずは風の国に行こうではないか。彼処の住人達は情報に聡い。君たちの探し求める情報が聞けるかも知れない」


それを早く言え。そして早くそこから降りろ。


「セルツ君?姫の御身体に気安く触れるなんて焼き殺されたいのかい?」


「イッ、良いのかい?おじさんが風の国まで案内してあげようと言うのだよ。君たちの中で風の国が何処に有るか知っているものはいるのかね?」


姫というクレサイダの逆鱗に触れたセルツは、吃りながら説明もとい命乞いを行う。


「チッ、…よう済みになったら丸焼きにしてやる」


その時は俺もクレサイダに加勢してやろう。


「それでは諸君、いざ行かん!風の国へ!」


イルサの肩で仕切り出し、小さな手で一方を指すセルツ。


少しだけセルツに感謝してやっても良い。俺たちのギクシャクが、セルツの示す方向へ歩き出すことで少しだけ緩和されたのだから。しかし不安は俺にしつこく付きまとう。


ルクが一向に話そうとしない。お前が黙ってると何故、俺たちも沈黙に支配されるのか。何か喋れよ!

いつもより少しだけ長くなってしまった。


ということは、誤字脱字の可能性も高くなる訳でして。


もし、発見してしまった方はこの愚者にご一報をお願いします。

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