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クレサイダ先生の異世界講座 1

シーベルエ城三階騎士団会議室。様々な事後処理に追われ、昼食でイルサの腹の虫が収まった後にここに集まり、クレサイダの説明が始まる。四半刻は経っただろうか。


「固すぎる頭脳でも理解出来たかい、ライシス君?」


「あぁ、良く分かった。つまりあの黒いウニョウニョの塊だったクレサイダが身体をパクってもムカつく口調は相変わらずって事と、そこで腹を満たして舟を漕いでる魔王に到底見えない嬢ちゃんが現代魔王様だって事は何と無く理解した」

「ライシス、言っておくけど姫を侮辱するなら殺すよ。それともまた僕とやる気かい?」


「やらねぇよ。クレサイダ、こっちにゃあアレンが付いてるだぜ。下手な発言は止めておけよ」


「ライ兄、クレサイダさんは今回は敵じゃないから」


この部屋を一撃で吹き飛ばす程のクレサイダの実力を知りながら、微動だにせず、言葉だけで制する父上。なるほど、アレンさんが居ればクレサイダごときには父上程の人物が自ら手を下す必要は無いと言うことですね。

本当はかつての宿敵と戦いたい気持ちを隠しているようですが、手の震えという武者震いがその闘争心を俺に見せつけてくれる。

しかし、今はクレサイダだけが重要な情報源だと言うことを理解してくれているらしい。だが、睨むクレサイダにそれを受け流す父上。下手をすれば一触即発だ。


「ライシスさん。今はクレサイダさんは味方ですから落ち着いて下さい。クレサイダさんもすいませんでした。お願いしますからお互いの為に話し合いましょう」


「君は相変わらずのお人好しだね」


ジンさんがエルさんをこの場に呼んでおいてくれて良かった。仲裁には一番向いている人だ。


「それで、そのカイムとやらが僕の愛すべき国民達を傷付けた理由は何だい?この国を奪うとかでは無いのだろう?」


いつも惚けている国王陛下も今日は流石に真面目でいらしゃるようだ。


「前もアレン君達に言ったけど、僕は君たちにある程度しか話さないよ」


俺としてはその点はもうこいつに任せるしかない。重要な話のようなのでイルサを揺すり起こす。


「リセスゥ。私はもう食べれないよ」


誰も食わさん、もう食わんで良い。話を聞け、重大関係者。


「その娘、本当に魔王なのか?」


俺にも分かりません。

流石の父上もこの魔王様は理解の範疇を壮絶に越えているらしい。


「姫、シャキとしてください。一応、一国の王の前ですよ」


クレサイダ、お前は何故こいつに仕え続ける事が出来るのか分からん。


「まぁとにかくさ。クレサイダ、カイムとか言う奴はこの城に用が有ったんだろ?何を狙っていたんだ?」


父上が質問を担当しているようだ。国王陛下、ロンタル執政官長、騎士団総長などの国の重役達を差し置いて話を進めるとは、防国の賢者たる父上にはやはり凄い権威があるのだろう。


「正確にはこの城にあると思われる物だよ。この世界の“欠片”だ」


「何なんだ。それは?」


俺が一番聞きたかったことについ勝手に発言してしまう。母上が顔をしかめる。まずい、後で恐らく言葉使いが悪いと叱られる。


「シーベルエ国王、ここにこの世界の欠片はあるかい?」


「うーん。聞いた事が無いなぁ。ロンタル、聞いたことあるか?どう言う物だ?」


ロンタル執政官長も首を横に振る。クレサイダが僅かに悩んだ。


「こいつらにこの世界の欠片を任せた方が早いか…。姫、魔王の証をお出し下さい」


「うん、分かった。…あれ、此方のポケットだっけ。あれ、無いなぁ」


おいおい。せっかくの皆さんの興味が急速に失われていくぞ。


「姫!あれほど魔王の証は大切に持っていて下さいと」


「アッ、これだ、あったぁ!」


魔王の証は机の上に無造作に置かれる。イルサの扱いに魔王の証という有り難そうな名前の効果は失われていた。もっと大事に良くは知らんがもっと大事に扱うべきものじゃないのか?


「ガラス玉の欠片~?」


何故かここに居る…ジンさんにおねだりしてここに居るのだろうルクが首を傾げながら簡潔に魔王の証を表してくれた。その構成物質は決してガラスでは無いだろうが球体の一部から抜き取ったような湾曲した紫色に透き通る破片。


「ガラス玉って、これはヘブヘルの欠片で魔王の証だよ。まぁ、良いか。とにかくこれは観察世界アールから各世界の管理者に相応しい人物に渡されている筈だ」


観察世界アール。天神界アールのことか?


「これには各々に強い能力を持っている。所持者がその世界を統一するような能力を。何かそんな物は無いかい?」


確かにそいつはカイム達が狙うのは頷ける。そしてシーベルエが所持していると思うのも頷ける。


「いや、僕は知らないよ」


しかしあっさりと陛下は否定する。代わりに心当たりが有ったのはこの親子だった。


「ねぇ~、それって色違いだったりするぅ。それなら知ってるんだけど、ねぇ、お父様?」


ルクの笑顔の誘導により視線がジンさんに集まる。


「出来ればクレサイダに見せたくは無かったが、相手の手の内を見て、自分の手の内を曝さんのも卑怯か」


ジンさんが組んでいた腕をほどき、上着のジャケットから小箱を取り出す。


「家の先祖が初代シーベルエ国王から戴いたものレッドラート家の家宝だ。成人に伴い、これに触れて“レッドラートの眼”を授かる仕来たりがある」


その世界の欠片は透き通る赤だった。

もう一話説明っぽいのを行います。

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