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シーベルエンスに灯る戦火 1

カタナを振るう時は余計な事を考えるな全身とカタナのみに集中しろ。

母上から俺の幼少の頃から叩き込まれたの教え。


修行不足な俺にはそうは出来ない。


「動きが鈍いね」


自分自身でも分かっていることだが、改めて言われてしまうと落ち込む。せっかく久々にアレンさんが稽古を付けて下さってるいると言うのに俺は…。


同じく甲板でルクと話しているイルサ。

イルサは普段通りだ。ルクの話すこの世界についての話を無邪気に聞いている。


そうなのだ。アイツにとっては兄はもう居ないんだ。その覚悟を持って剣を握っているんだ。

ならば、何故俺に話した?イルサが覚悟を本当に持っているのならば…。


「そろそろシーベルエンスが見えて来る頃だから稽古は終わりにしよう」


「はい。ありがとうございました」


稽古の打ち切りを宣告したアレンさんに身の入っていない稽古に付き合わせてしまった後悔の念が大きいかった。

アレンさんが溜め息を吐く。


「リセス。人の正義に頼り過ぎるといけないよ。君の正義は君だけの正義だからね。それを信じて剣を振るうしか無いんだ」


「俺の正義ですか?」


「そう、自分の信じる正義を信じて行動する。それが僕の正義だよ」


正義。昨日まではあったはずだ。


「他の人が悪だと言おうと自分が信じる事が正義なんだよ。逆にそれ自分の中以外の正義なんて君の中には存在しないんだから」


それだけ言うとアレンさんはルク達に降船の準備をするように伝えにいった。


俺の正義か…。イルサはどんな正義を持っているのだろうか?


「ほら、イルちゃん。あれがシーベルエンスだよ~。凄いでしょ…」


ルクの示す方角にはシーベルエ山脈に囲まれた大都市シーベルエンス。


その我が国の誇る首都を見てのイルサの感想がこれだ。


「ウワァ~、凄いね!シーベルエンスではみんなで焚き火するんだ~」


イルサの言う能天気な事態ならば大変良かった。しかし都市内で無許可での焚き火が禁じられているシーベルエンスで、複数箇所に昇る煙は別のことを意味しているとしか考えられない。


「船長、急いで下さい!」


アレンさんの檄が飛ぶ。


「あっちゃ~。やっぱりあちらの方が早かったかぁ」


何時からいたのか。クレサイダが俺の隣でぼやいた。それの呟きは俺にも聞こえた。


「お前はこうなることが予想出来ていたのか。何故予め俺たちに教えなかった!」


俺は激怒していた。あまりにも簡単に言ってくれたこいつに。俺たちに何も言わないこいつに。そして今まで溜まっていた俺の鬱憤をこいつに。


「昨晩も言ったよね。どうして僕が君たちに教える必要がある?君たちは僕の目的の為に利用されてれば良いんだよ」


クレサイダの口元は笑いながらも目元は笑っていなかった。こいつは本気でほざいてやがる。


「ふざけるなよ!お前に何故利用されなければならない!」


「ふざけてるのはそっちだろ?君たちの方こそ僕や姫を利用する気満々の癖に!」


手がカタナに届きそうだ。俺は別にお前やイルサを利用する気など毛頭無い。という自分への嘘が怒りへ変わる。利用していないと言い切れない己が悔しい。


「二人ともそこまでだ。今は二人で争ってる場合で無いのは分かるよね」


アレンさんは優し過ぎる。貴方はこのままクレサイダに利用されると言うんですか?それが貴方の正義だと?


炎上するシーベルエンスは目前に迫っていた。

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