表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/72

船に揺られる想い達は 3

軍船内の部屋。その狭き部屋は二段ベッド二つに支配されて、寝る以外に考えを巡らすことしか出来ない。


リンセン・ナールスか。あまりにも愚かな英雄だな。魔王を召喚して魔王を還して英雄になった人間。本当に愚かで偉大なる英雄だ。


父上はこのことを知っていたのだろうか?いや、あの人は知っていたのだろうな。知っていて尚俺にリセスと名付けたのだろうな。何故何だ!何故そんな人間の名前を俺に付けたんだ。


父上は俺が魔王を喚び出す事を予言していたということなのか?


“俺が持ってももう意味が無いから、お前が持っとけよ。お前が己の正義ために使いな”


十五になり、俺がシーベルエ騎士団に入る前夜に父が言った言葉。そのままの意味に理解していたおめでたい俺。全く笑えることだな。父上がセレミスキーを譲ったのは父上が見た俺の運命だったのだな。


くそ、俺は父上に比べると何れ程愚かな人間なんだ!どれだけあの人は俺の高みに立っているんだ。

あの人に勝ちたい。勝ちたいんだ!


俺はカタナに手に取り、ベッドから身を起こす。


「どうしたんだい。リセス君?」


俺の横のベッドからアレンさんが身体を持ち上げる。


「寝付け無いので少し剣を振って来ようかと思いまして」


実際は己の身体をとことん痛み付けたい気分だった。そして、そのあとに泥のように眠ってしまいたい。


アレンさんの返事を奪ったのは控えめなノックだった。アレンさんの返事はそちらのノックにされた。


「あっ、リセス」


「何だ」


ベッドから降りた俺を見て言うイルサに俺は少々冷たい対応をしてしまった。


「えっとね。リセスにだけ伝えたい事があるんだ。甲板で待ってるから来てね!」


イルサが真剣な顔で早口でそう言い放ち扉を閉めて立ち去ってしまった。

おい、何だそれは…。

俺よ、落ち着いて考えろよ。夜中に二人きりで俺だけに伝えたい事と言ってもそれは無いぞ。相手はあのイルサだぞ。確かに表情や仕草が可愛いと思ってしまうこともあるがな、それは妹を見る兄の目線のようなものであってだな、決してそのような対象としてでは無くてだな。俺はイルサとそういうような関係になるのは少し困る訳でだな。


「リセス君。ライ兄に“そういう時には男はどっしりと構えるんだ”って昔教えてもらったよ」


アレンさん、それはどういう時の話ですか?今は断じて父上の言うそういう時では無い…、だろう。


「リセス。彼女も覚悟を決めたんだ。彼女の想いをしっかり受け止めてあげるんだよ。」


アレンさんの上のベッドから真面目な顔を出すレクス兄さん。


俺はレクス兄さんの言葉を無視して部屋を出た。イルサがどんな覚悟を決めたかは知らない。俺には全く予則不可能だ。



甲板に出るとイルサは船縁で海を眺めていた。月明かりに映える短き赤髪は海風に流されそよいで、落ち着きなく背中の翼をゆっくり上下させている。

いつもはちんちくりんな行動ばかりしている癖にこういう時にこういう雰囲気を演出している。女は卑怯だと思う。


「待たせたか?」


待たせた筈はない。イルサの後を直ぐに追ったのだからな。俺は何を言ってるんだ。こういう時はどっしり構えなければ。いや、何を考えているスタンダードで良いんだ。


「えっとね。少し待ったかな?」


確かに僅かに待たせただろうな。俺がここに直行する僅かな時間な。こいつは真面目に言っているから質が悪い。


「リセスは本当にレクスさんと仲が良いね!」


「あ、あぁ、そうだな」


いきなり無理に話を反らしやがった。声の大きさに比例して翼の動きが大きくなってるぞ。その動揺するイルサの姿は、少し可愛く見えて俺にも動揺が伝染していく。


「ソッ、それで俺に伝えたい事とは何だ」


落ち着け、リセス・ネイスト。大したことでは無いんだ。どっしりと構えるんだ。


イルサの翼の動きが止まる。時間が止まったように感じる。波音だけが時間が動いていることの証明だった。

息苦しい時間が僅かに過ぎて、ようやくイルサが意を決して口を開いた。


「カイムの事何だけど…」


何?カイムの事?

いや、俺の予想通りだ。決して浮わついた話である筈がないではないか。

しかし、何故か俺の膨れあがった気持ちが急激に萎んでいた。

その俺の萎みきった気持ちに、イルサは次の言葉で更なる追い討ちをかけた。


「昼間、私に双子の兄がいたって言ったよね」


イルサの赤く光る涙目に俺の気持ちはギチギチに締め付けられた。

もう次の言葉はいらない。だから言うな!お前が辛くなる。クソ、イルサの両親を殺したアイツは…


「私のお兄ちゃんなんだ。カイムは」


イルサ、嘲るか泣くかどちらかにしろよ。

俺がこういう時にどう対応すれば良いのか分からないだろう。

しまったなァ~。『勇冒』の最後に次回作紹介の『夢の続きは』でネタバレしちまったからな。


今度から調子に乗らんように気を付けないとなぁ。


読者皆様申し訳ない、もっと腕を磨きます。


ですから、感想お願いします。


そして、『魔冒』のお気に入り登録50件越えました。

本当にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ