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船に揺られる想い達は 2

あいつらは全く頭にくるね。姫を手懐けて僕を利用しようとするんだから。

姫も姫だ。クーレの人間共と協力するだなんて、もう少し魔王としての自覚を持って頂きたい。どうしてあそこまで懐疑心を知らないのか?

あのリセス・ネイストは特に姫の信頼を得たようで気にいらないな。あの正義の味方を気取るライシス・ネイストも気にいらなかったがそれに増して気にいらない。

こんな下らない人間の事を考えるのは止めよう。


ハシュカレは恐らく“あれ”を手に入れてカイムを喚び、今、“あれ”はカイムの手の中にある。これは実にまずいことだ。とにかく“あれ”を奪わないといけない。“あれ”がカイムの手にあって、姫の持つ魔王の証を狙うという事は、おそらくシーベルエンスの城にあるだろうこの世界の“欠片”も狙って来るだろう。どちらも手に入れられたら厄介だ。


カイム達はおそらくシーベルエンスの城にあるだろうこの世界の“欠片”も狙って来るだろう。どちらも手に入れられたら厄介だ。


それだけは何としても防がないと…。



「クレサイダさん、少し宜しいですか?」


「あまり宜しく無いね。僕は今とっても機嫌が悪いんだ」


振り返ってその女に嫌味たっぷりに言ってやった。


「少しだけお話をしたくて」

「さっきの奴みたいなふざけた発言はするなよ」


確かアレンの部隊のミシャとか呼ばれていたか?僕は君と話す気は無いんだけどね。


「私の父を知っていますか?」


微笑を浮かべながら言う彼女の言葉は僕の予想を遥か彼方に置き去りにしたものだった。馬鹿にしているのか?


「そんなもの知るわけ無いじゃないか」


僅かな笑み、哀しみにも取れる表情を変えず彼女は続けた。


「私の名前は、ミシャ・ラベルク。もう一度聞きます。私の父を知っていますか?」


「知ってる。ケルック・ラベルク」


そういうことか。


「僕が殺した男だ」


クーレで殺した人間は何人もいた。そして、そいつらのことなんか忘れた。只一人、この男を除いては…。


「それで君は父の敵を討とうっていうのかい?」


やる気ならば遠慮なくかかって来なよ。父と同じく葬ってあげるよ。


「いえ、そんな事はしません。私は父が敵わなかった人に勝てませんよ」


その女はまだ表情を変えずに言った。その微妙な笑いはとても僕の気分を害してると知らずに。


「それじゃあなんなのさ?」


この僕に懺悔でもしろってことか?あぁ、僕は悪いよ、とってもね。


「父の事を聞きたいんです。私は当時4歳で殆んど記憶が薄れてしまって」


父を殺した男に父の事を聞きたい?全く訳が分からないね。


「父は強かった、ですよね?」


君の父親は弱かったよ。どれだけそう言ってしまいたかったことか。そうすれば僕の気はさぞかし晴れただろう。


「強かったよ。この世界であんなに強い奴には出会わなかった」


彼女の眼を真剣に見ている馬鹿な僕がいた。


「ありがとうございます」


それだけ言うと彼女は走り去ってしまった。


何でお礼なんか言うのさ。罵倒しろよ!僕は僕の都合でお前の父親を殺したんだぞ。僕は悪人だ、大悪人だぞ!


そうだ。僕が何でこんな事を考えなきゃいけない。ただ一人を殺しただけじゃないか!今まで何人も身勝手に殺してきた最低最悪な僕にはどうでも良いことだろ!


クソ、何でお礼なんて言うんだ。お陰でその僕には綺麗過ぎる音が耳に残ってしまったじゃないか!


僕は大悪人で良いんだよ!何なんだよ、あの女は!

クレサイダ視点。


中々難しかったッス。でも中々面白かったッス。


700才の青年よ、悩みたまえ!

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