船に揺られる想い達は 1
このままターシーに残るという行為が及ぼす被害を考慮した上で、騎士団海隊の軍隊船にてターシーを立つ。
元々二十人の乗組隊員しか居ないこの船で、夕食時にはまだ早いこの時間帯で貸切状態となる食堂室。
俺やアレンさんが仕切る第3遊撃隊の面々は、ご機嫌なイルサが一人で夕食に舌鼓をするのを無視して、専らクレサイダにカイムの召喚について話す。
「厄介だねぇ。もう一度聞くけどオシリスの鍵…セレミスキーはリセスが全部持ってるんだよね?」
クレサイダの問い掛けに慎重に頷く。こいつにセレミスキーを持たせる訳にはいかない。
「別に取り上げたりしないよ。しかし、厄介だねぇ」
俺のよそよそしい仕草を読んで、また厄介と繰り返す。
「何がそんなに厄介なのか教えてくれないですか?」
勇者が奸雄に腰を低くして教えを乞う。なんともおかしな光景だ。アレンさんの人の良さが滲み出ている。
「少しは自分で考えなよ」
それに対してクレサイダは意地が悪い。
「クレサイダ。お願い、教えて」
「はっ、姫の頼みとあらば!」
クレサイダはイルサを使えば容易く操れるな…。奸雄の最大の弱点を得たり。魔王と一緒の方が安全とはこれ如何に。
「君たちに分かりやすく言うと何でリンセン・ナールスは魔王を召喚出来たのかだよ」
何気なく言ったクレサイダの言葉に訳が分からなくなった一瞬。
「待て、リンセン・ナールスは魔王を送り還したの間違いだろう!」
すぐにその言葉の意味を無理に飲み込み訂正する。
「ダァ~。まだそういうことになってるの?アレン、どうなってるの?」
クレサイダに話を振られたアレンさん。俯くその顔はクレサイダの話を肯定していた。
信じられなかった。でも、父上の語った“愚かで偉大なる英雄”のリンセン・ナールスに対する解釈が、今やっと理解出来た気がした。
「とにかく今はナールスさんが魔王を召喚した方法だよねぇ~?」
ルクが俺の一大衝撃を簡単に片付けてくれる。
「どうでも良いけどさぁ。ルク・レッドラートって言ったっけ?出来ればその顔でその喋り方止めてくれる?あの女を思い出して嫌なんだけど」
「ウワ~、女の子になんてことを~。これが私の母から受け継いだチャームポイント何です~」
俺としてはあの聖女様のようなおしとやかな性格も受け継いで欲しかった。
「それで、ナールスの魔王を召喚した方法は何です?」
レクス兄さんが話の脱線を止めた。クレサイダも神妙な顔付きになる。
「それは言わないよ。前回でハシュカレに洩らして今回の結果だからね。信用出来ない人間に余計な事は言いたくないね。君たちにヒントを与えるのはここまでだ」
確かにクレサイダの判断は正しいものかもしれない。知らない方が良い事はある。
「しかし、それでは俺たちにこれからの対策を立てようが無いじゃないか」
今まで黙って聞いてきた第3遊撃隊の銃士テドさんが口を挟む。テドさんの言うことも一理ある。
「僕は君たちの対策に期待なんかしてないよ。君たちはこの世界を守りたいなら、僕の命令に黙って従えば良いのさ。余計な事はしなくて良いよ」
「クレサイダ!そんな事を言ったらダメ!皆で協力するの。皆に誤って!」
イルサが食事から手を離して叱る。
「姫、これはもうこいつらに頼れる問題ではないのです」
それだけ言うと周囲に険悪な空気を残してクレサイダは出て行ってしまう。まるで親に叱られた子供だな。
「皆、ごめんなさい。でも、クレサイダは本当は良い人だから…」
「お前が気にする事ではない」
イルサの弁明は大した役に立たないだろう。
少しクレサイダを買いかぶり過ぎていたか…。
やっと少しシリアス気味になってきたでしょうか?
次回もちょいシリアス気味。名前だけ登場していたあの人が活躍します。気付いている人いるかな?




