賢者と勇者の出会いの地
出会いの森。20年前、この地で賢者ライシス・ネイストと勇者アレン・レイフォートは出会った。
魔物によって薬草の生える泉を占拠されてしまい、困り果てた村人達を救う為にその魔物退治を引き受けたライシス・ネイスト。
数百を越える魔物の群れに流石の賢者も危機に陥る。その危機を救ったのは後に勇者となる男だった。
偶然に通りかかった残虐非道な“同士殺し”と呼ばれたアレン・レイフォートだった。しかし、その賢者が村人達の為に奮闘する姿を見たアレン・レイフォートは改心し、賢者とともに数多の魔物を退治する。
それがこの地に残る父上とアレンさんの伝説である。
しかし、俺はこの伝説が大いに間違っていることを知っている。
それは、あのアレンさんが極悪非道だったという事実は全く無かったと言う点だ。あんなお人好しな人が極悪非道に走っていたなんて事がある訳が無い。
この点だけは父上の嘘話の中で信じられる。
父上はこの森で魔物から逃げていただけでアレンさんに命を救われただけだと言う。アレンさんの活躍を立ててはいるが、あの人は自分の偉業について謙遜して語る癖があるので、父上が自分の事を語る時だけはあまり信用が出来ない。
とにもかくにも、今、俺はその父上達の伝説が始まった地にいるのだ。少し気分が高揚している。
俺は仕事で来たのだ。少しは落ち付かねばいけないな。
「おっと、坊主。どこに行くんだ?」
木の影から現れる三人の男達。やっと出たか。
「悪いがここからは素っ裸になって帰って貰うぜ」
こういう輩は20年前から増えたらしい。父上達が魔王を還した後に、ガンデア連邦国が崩壊した。ガンデアは当時の貴族領がシーベルエの庇護により独立し、シーベルエのノースと現ドーヌ自治領間にあった国境は撤廃された。
そうしたことでガンデアから大量の人が流れ込み、人口増加による就職難が犯罪の増加をも引き起こしてしまったのだ。
「俺はシーベルエ騎士団准尉リセス・ネイストだ。抵抗せずにお縄に付け」
激しく笑われた。まぁ仕方ないだろう。俺も青年騎士団員ただ一人。大した敵には見えないだろう。
仕方がない。カタナに手を掛ける。
「おっ、坊主やるってのか?」
三人の中で一番大柄な男もにやけながら腰の剣を抜く。
それと同時に俺はその男の懐に入り、喉元に鞘に収まったままのカタナを叩き込む。全く隙だらけな奴だな。
倒れた男に驚く残り二人。一人が慌てて拳銃を俺に向ける。遅いな。しかも、銃ならばもう少し間合いを取るべきだったな。
拳銃の引き金が引かれる前に拳銃の上半身が地面に落ちる。そして、怯む男の鳩尾に蹴りを入れる。
俺から距離を取った最後の男が火魔法を放った。俺に当たる筈がない速さと威力だった。その男への返しに雷魔法をお見舞いする。避ける間もなく紫電に貫かれて男は悲痛の叫びをあげて気を失った。
その後、この森の近くの村に駐留している騎士団員にこの山賊どもを引き渡した。
騎士団員の一人が俺に馴れ馴れしく話し掛けてくる。
「いやぁ、さすがは賢者殿の息子様はお強いですね~」
「父上はもっと強いですよ」
それだけ言うと俺はこの地を後にする。煩わしい世辞は嫌いだ。
それにしても、山賊三人ごときにあんなに時間をかけるとは、俺はまだ父上やアレンさんには及ばないらしい。もっと己を鍛えなければな。
あの人達のような英雄になるために!




