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夜鬼伝  作者: Lam123
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血の誓いと、永劫の夜鬼

トラン・フォンは、鬼門山脈きもんさんみゃくを後にした。彼の懐には、白鷺衆しらさぎしゅうから取り戻した霊石れいせきが収められている。彼はまず、霊石を、二度と悪しき者の手に渡らぬよう、山深くにある名もなき古社の地下へと厳重に封印した。大地の心臓は、再び静かに眠りについた。

都に戻ったフォンは、草司そうじの隠れ家を訪ねた。草司は、フォンの姿を見て、ただ微笑んだ。

「貴様は、全てを終わらせたようだな。貴様の血は、もはや嵐ではない。深く、静かな湖だ」

フォンは、これまでの全ての戦い、黒縄会こくせんかいの陰謀、白鷺衆の遺物狩り、そして自らの狂気との戦いの顛末を静かに語った。

「俺の血の呪いは、貴様らの言葉で言えば、解かれた」フォンは言った。「だが、力そのものは消えていない。俺は、この力を永遠に保つ道を選んだ」

フォンは、黒舌クロベロを畳の上に置いた。黒舌は、長きにわたる戦いと調和の力により、以前の禍々しい輝きを失い、深い黒鉄の色を帯びていた。

「クロベロ。お前は俺の呪いであり、俺の相棒だった。だが、お前が俺を支配する時代は終わった」

フォンは、最後の儀式を行った。彼は、自らの血脈の調和の波動を黒舌へと注ぎ込み、刀身の奥深くに、その力を封印した。黒舌は、力を呼ぶ鍵から、誓いの証へと変わった。フォンが望まぬ限り、その力は解放されない。

「俺は、もう剣を振るう必要がない日常を生きる」

草司は頷いた。「それが、貴様が守護者として選んだ道か。真の夜鬼とは、闇の中で平和を築く者のことだ」

それから、歳月が流れた。

都は、かつてないほどの平穏を迎えていた。大規模な邪気の発生も、奇妙な儀式の噂も、聞こえなくなった。人々は、かつての夜鬼を、悪を滅ぼした伝説の影として静かに語り継ぐ。

トラン・フォンの姿は、二度と公の場に現れることはなかった。

彼は、市井の端で、名もない職人として暮らしを営んでいた。日中は木材を削り、人々と静かに言葉を交わす。彼の顔には、かつての復讐に燃える険しさはなく、穏やかな静けさが宿っている。

しかし、夜が訪れると、彼は誰も知らない道を辿り、都の最も高い場所へと登る。

フォンは、都の灯を静かに見下ろした。全身を流れる紫紺色の血の気は、もはや力ではなく、彼の呼吸そのものだ。

もし、再び都を脅かす大きな闇が現れたなら、彼はためらうことなく黒舌を抜き、その誓いを果たすだろう。だが、それは、呪われた血の衝動からではない。自らが選んだ使命として。

フォンは、風の中に溶け込んだ。彼は、永遠に孤独な守護者として、都の夜の帳の中で、その静かな夜鬼行を続けるだろう。

夜は深く、そして穏やかだった。

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