ひとりぼっちのキミに あとがき
こんにちは、『ひとりぼっちのキミに』作者のターンAです。
遅筆の作者の大長編という末、何とか『ひとりぼっちのキミに』の完結に至りました。ありがとうございます。
これを書いていた頃は学生でしたが、いつの間にか社会人になり、少しは大人になった今日この頃――ブラックな職種にいたりする中で、なかなか書く時間が作れなくなり、プライベートで出会いもなく、社会人になった生活に今でも翻弄され続けております。
作者はこの話を書くときは、基本キャラクターが頭の中でどんどん動いてくれたので、それを書き下ろすだけ、という形で、ネタを作ったりするのには特別苦労をしたことはなかったのですが、社会人になって、一度キャラクターから離れると、シンクロ率が低下したのか、なかなかキャラクターが自分の頭の中で動いてくれずに苦労しました。ある程度書き続けるというのが大事なことだと改めて勉強しましたね。
さて、本編の大オチになる部分ですが、以前書いた際は、シオリが帝国グループの爺さんはじめ、多くの男達に、借金を返すために抱かれており、それを恥じたシオリはビルから飛び降り自殺を図りますが、ケースケの呼び止めにより、一命を取り留め、二人で暮らし始めるというエンディングでしたが。
今回はシオリの代わりに、ケースケが傷ついてシオリを止めるというオチでしたが、いかがでしたでしょうか。
このオチは、第3部で、色々とキャラクターの役割を色々検討し直しているうちに、シオリを被害者にしないエンディングを試してみよう、と思い、考え付いたものでした。ケースケの悪癖ともいえる「大切なものが側にあるのに気付かない」という、第2部のラストでもしでかした過ちを、また繰り返しそうになるけれど、今度はちゃんと気が付く、というのが個人的にはポイントかなと思います。
悲劇としては、シオリが酷い目にあう方が整合性がある話なのですが……こういう終わりもいいのではないかと思いますが、この終わりも賛否両論でしたね。
キャラクターごとに作品を振り返る……
・サクライ・ケースケ
作者の中のヒーロー像を凝縮したキャラクターですね。概ねこのキャラクターの出来には満足しています。
ただ、この作品を書いていて、ほとんどケースケを心配する声がなかったことを考えると、これだけ不幸な目にあっても、実に不憫な子だなぁ、という印象も……
エピローグでケースケの一人称が「俺」になっているのは、色んな意味でケースケが過去を吹っ切って、怒りとか憎しみをすべて飲み込んで、キレると人格が変わるほどになる自分も超え、大人になったって意味で「俺」にしてみました。もうケースケは、怒りで自分を見失うようなこともなく、「俺」口調の場合でも穏やかな心を維持できてます。
まあ実際書いてみると作者もちょっと違和感がありましたがね……ケースケの一人称は、結構彼の個性になっていたのだなと、書いていて思いました。
この作品を書いている中で、割と後半から読者の人(特に女性)にずっと聞きたかったことがありました。
『実際サクライ・ケースケが現実にいたら、付き合いたいと思うか? 友達になりたいか?』というのを、ケースケを稀代のモテ男にしている間に考えていました。
頭脳明晰、運動神経抜群、行動力、顔も文句なし、多彩で器用、一騎当千の天才。何よりあまりにも一本気でまっすぐな上にウブなので、これだけモテても浮気の心配がないという、非の打ち所のない男ですが、見ての通り頭の中で喋ってばかりで、無口で無愛想、口も悪く、キレると想像を絶する大暴走し、浮き沈みも激しく、喧嘩も強い、女心にまったく配慮がなく、金を稼いでも、自分の手元にはほとんど残さず……
そんなケースケのような男は、女性はついていきたいと思うのでしょうか。
作者のイメージだと、ケースケはルックス的にも『年上のお姉さん』にもてるし、そういう人に理不尽なくらいグイグイ引っ張られるようなタイプの方が居心地がいいのかなぁ、と思ってます。逆に年下にはあまり興味がなさそうな感じですね。
ケースケが善人だったか、悪人だったか――英雄だったか、悪魔だったか、ヘタレだったか――という印象も、多分読者の感想は分かれるんじゃないかと思います。彼はシオリとは違って、嫌われる奴にはとことん嫌われますが、好かれる奴にはとことん惚れられるタイプの、ピカレスクなところが魅力なのでしょうから。
今更と思われるかもしれませんが、作者は割と本気で主人公マンセーなつもりでケースケを書いていたのではないのです。そう思われてしまったということは、まだまだ客観視が足りないということなんですかね。
個人的には、トモミの台詞ですが「私、何であんなダメな人のこと、こんなに好きなんだろう」という言葉が、作者の一番強調したかった点ですかね。いわゆる『バカな子ほどかわいい』って部分が、ケースケの魔性の魅力なのかな、と。
最終エンディングの、ケースケのサッカー場の演説のように、ケースケのような、優しく純粋すぎるほどの馬鹿が世の中に一人くらいいる――そんな奴がいたら、世界も捨てたものじゃないと思えるのではないか、それを伝えられていれば幸いですね。
彼の出るシーンでお気に入りなのは沢山ありますが、強いて挙げれば第3部の帝国グループの爺さんと話すシーンはとても好きですね。互いに力を持ちながら、決して相容れない、交わらない正義がある対比が書いていて面白かったです。「はっきり言って、君という人間が気に入らん」と、爺さんがケースケを否定したシーンなんかは、書いていても楽しかったですね。前回のエンディングでは、シオリを致命的に汚した悪役の爺さんですが、個人的には結構好きなキャラクターだったりします。
爺さんのケースケを表す言葉「君はラブ&ピースを歌う人間じゃない」はエピローグでも使いましたが、多分生きる意味を見つけたケースケも、そんなラブ&ピースなんて柄でもないとは思っていて、自身もそれを割り切っているのでしょう。自分はシオリのようにはなれないけれど、今後も彼は、自分なりに、花を咲く道を作る歩き方を模索しながら生きていくんでしょうね。
・マツオカ・シオリ
この作品の一番の人気キャラクターでしたが――やっぱり作者にとっては、一部を振り返った時と同じ、『諸悪の根源』になってしまいますかね……
正直この作品が『ラブストーリー』だったか、というと、作者的には別にそこに焦点を当てたかったわけではなかったんです。サクライ・ケースケという人間の、数奇な人生のひとつの要素に恋愛があったというだけで。それをメインに話を書くつもりではなかったのです。
エンディングでケースケがいまだにそこに蹴りがついていないのは、恋愛だけをすべての根源として語りたくなかった作者の私的な抵抗ですね。そこに関しては異論は認めます(笑)。ケースケがシオリと結婚して、子供が生まれて、リュートの生まれ変わりがいるような話の方が分かりやすいでしょう。それは作者も理解できるので。
――そういう点が、このサイトでの流行をはずしているんだろうなぁ……
良くも悪くもこの子を上手く完結させないと、ケースケの人生も上手く完結しないという、何とも悩ましいキャラクターになりましたね。メインキャラの中でダントツに動かしにくいキャラでした。
――まあそれは、プライベートでまったく恋愛をしていない作者のせいなんですが。社会人になってから、一層恋愛描写シーンのイメージが苦手になったと感じてます……作者ももういい年なんですがね。恋をしてないなぁ、と、この話を通して感じ出すと、本当に書けなくなりました。
ちょっとあまりにもシオリは『大正義』になり過ぎてしまったなぁ、と。
この作品の最大の失敗は、一度第2部で、キスをした時に、第3部ではこうなる、という明確すぎるフラグを立ててしまったことですね。それを書いた当時は、前回書いた時とまったく同じエンディングか、シオリが死んでしまうパターンのエンディングを書くつもりでいたので、回収する自信があったので、あまり考えていなかったんですが、読者様の感想を参考に、今回のエンドを考えた時に、ものっすごくこのフラグが邪魔になりました。おかげで完結にこんなにかかってしまった最大の要因になりましたね……おまけにこの子を幸せにしなくちゃいけないという縛りつきになり、苦しめられました。
まあ、これだけ難産なキャラだっただけに、人気があってくれたのは、素直に嬉しいんですがね……作者自身、シオリみたいなほわほわした女の子となら恋愛したいと思いますし。結構メンタルが弱い子なので。
彼女の好きな花、竜胆の花言葉は、個人的にはこの作品のテーマなのかな、と思ってます。特にケースケとシオリは、愛情とか、同情とかじゃなく、互いに悲しみに寄り添いながら、生きていきたい――それくらいの関係が一番しっくり来るんじゃないかな、と思っているので、第3部では、直接的な愛情を示す言葉を使わないようにしました。
エンディングの最後の言葉の通り、悲しいことが多いからこそ、二人は互いを側に置いて、ひとりぼっちじゃないことを認識するような関係なんでしょう。
・ヨシザワ・トモミ
この女性は、シオリに明らかに劣るという意見を読者様から沢山いただきました。
実際本人も、自分はシオリに劣っていると認めている描写もあるし、作者もそうであるべきだと思いますが。
――本音を言うと、もうちょっと認められてほしかったキャラですね。
作者がケースケのイメージで語ったとおり、ケースケはシオリよりも、こういうトモミのような、少し強引にでも世話を焼くタイプの方がしっくり来ているような気がしていたので。
某有名なRPGで言う、○ローラや○ィファ的な立ち位置になってしまいましたね……ただ、料理が出来たり、ケースケの仕事のサポートができたりする点で、『大正義』の○アンカや○アリスよりも、特典の多いキャラクターではあったと思いますが。
世代じゃない人もいるでしょうが、やっぱり幼馴染とか、初恋の相手みたいな思い出っていうのは、強いものなんでしょうね。
自分に振り向いてくれないのが分かっていても、きっぱり振られようとしたり、吹っ切ろうとしたり、その中でケースケやシオリのフォローをしている彼女は、いい女に書いてやるべきだった。そうできなかったのは残念です。
こういう立場の子からしたら、シオリがずるいと言ってしまうくらいは、大目に見ても――と思うのは、作者はトモミをひいきし過ぎ?
個人的に、彼女がケースケに告白した後の彼女の言葉――『好きとか嫌いとか、同情とか愛情とか、もうわかんない』と『私、どうしてあんなダメな人のこと、こんなに好きなんだろう』って台詞は、この作品の人間関係の肝を現している感じがして、好きな言葉ですね。みんなよく分からないけれど、ケースケって人間に惹かれている――不合理な馬鹿の集まりなんですよね。
海に行って、ケースケと二人で一泊するまでのデートは、第3部の中でお気に入りのシーンです。ケースケが病院を退院しての3日間の話は、久々にジュンイチ達が登場したのもあって、書いていて楽しかったのを覚えてます。
・エンドウ・ジュンイチ
個人的にこの作品を書きやすくするのに貢献してくれた一番の功労者。彼がいなかったら、この暗い話はもっとどんよりとしていたことでしょう。
シリアスな部分から、ギャグパートも担当できるので、この作品でケースケと並んで最も動かしやすかったキャラです。
作者も友達は少ないですが、こんな友達がいたらよかったなぁ、なんて、自分で生み出していて思います。
彼は、ケースケやユータと比べると『凡人』ではあるのですが、何だかんだで成功を収めて、家庭を築いている、ケースケと真逆の、凡人の象徴にしたかったので、所帯じみた感じを出せてよかったな、と思っています。ケースケも、そういう平凡な幸せに内心憧れているだけに、そういうものを見せられるジュンイチは色んな意味でかゆい所に手が届くキャラでした。
今後話を書くとして、こういうキャラクターをどんどん増やしていけたらなぁ、と思う、次の作品にも登場させたいキャラナンバーワンです。
きっとジュンイチはこれからどんどんオジサンになって、おなかも出てきて、娘のサオリから少し煙たがれながらも、家族のために仕事を頑張り、サオリの結婚式で号泣するような、いいパパになることでしょう。
娘の桜織という名前は、この作品を書いていて、ケースケとシオリを表す名前として、もし作者に娘が出来たらつけたい名前として考えたんですが、これでサオリと読ませるのは、いわゆるキラキラネームなんだろうか……
余談ですが、割とシオリとの絡みも多く、息が合っている、男が苦手なシオリもジュンイチにはある程度心を開いている――と、個人的にシオリとジュンイチの組み合わせはいいのではないかということで、Another story 2では、ケースケとの距離を感じるシオリが、ジュンイチの優しさにぐらりと来てしまい――ジュンイチも泣いているシオリを見て歯止めが効かなくなり――みたいな、もっとディープな関係になるような話も考えましたが、あまりにあの話が長くなってしまったのでカットしました。ほんわかしたラブコメを書くなら、この組み合わせは意外とありな気もしますが、どうでしょうか。
・ヒラヤマ・ユータ
第3部ではやはり国外にいることもあって、少し使いづらいキャラになってしまいましたが、本編を通じて、成長の跡を見せたキャラクターにしたいと考えたキャラです。
いい意味で平凡なジュンイチに対して、サッカーの最高峰の最前線へと向かうために、意識もストイックになっているユータは、3バカトリオの中で最も、男の覚悟を持って戦っていたのかな、と思っています。高校時代には、彼が一番精神的にも幼い自分勝手な面が多かったですが、青年になり、色々な意識改革と出会えたのは、ケースケという男の影響が大きかったのだと思います。
はじめは軽い女好きでしたが、プロになることが明確化してからは、そのような描写を控えたのも、彼らの中で一歩先んじて、社会に出て、少し大人になったというのを書いてみたかった、ジュンイチよりも攻めてみたキャラクターです。
ただ、ケースケの成長や覚醒が派手すぎて、彼の成長が目立たないものになってしまったのは残念でした……
実は恋愛に奥手なケースケの恋愛方面の師匠的な存在でもありますね。Another story2では、シオリにケースケへの想いを気付かせる手伝いをしていますし。
本当はユータはシオリのことが好きだったのですが、あまりにシオリがケースケを想っており、ケースケがシオリを必要としていることが分かって、諦めております。Another story2で、ユータとシオリが本当に付き合うという案も考えたんですが、ケースケはやきもちも焼かないだろうし、仮に何の心配もしないケースケに、シオリが怒るような反応をするのも、シオリがわけ分からないキャラクターになりそうなんで却下しました。
いずれにしても、ジュンイチもユータも、ケースケによって運命が大きく変わったことは間違いないでしょう。友達の人生に影響を与えるようなのを『親友』と呼ぶのかなと思いますので。
いまだに追いかけるものがある彼ですが、これから中学時代の恋の相手とも再会し、彼の恋にも幸があってほしいキャラですね。
・リュート
この作品で一番の男前を選ぶのだとしたら、間違いなく彼でしょう。ある意味一番おいしい、ある意味で一番の忠義者ですね。
作者の中のヒーロー像に『動物と子供に好かれる』というのがあり、リードがなくてもついて来る相棒というのを書きたくて、彼を登場させました。
作者は高校生の頃、両親の不仲で親戚の家に預けられているのですが、そこで飼っていたミニチュアダックスが自分にすごく懐いてくれて。一度公園で散歩中にリードを離してしまって。最初は逃げて、追いかけてもつかまらなくて、次第に走り疲れて諦めかけたんですが、作者が足を止めると、その犬が心細くなったのか、一直線に作者のところに戻ってきたのです。それを見て、犬ってのは何て可愛いんだ、と思ったので、主人公の相棒に犬を出そうと思って、出したのがリュートです。
とにかくファインプレイの数々を披露していましたね。ケースケとシオリのすれ違いを修復する、シオリを忘れようとするケースケに、シオリの写真をケースケに見せる、旅先でおひねりをねだる、シオリの家族を嗅覚で見つけ出す、ケースケと連携してヤクザを倒す、最後にケースケの背中を押す……
勿論実際の世界では、ありえないほど出来すぎの犬ですが、ケースケと彼は本当に、何も言わなくても分かり合えるような関係だったのだと思います。いつもは全てにおいて頼りになるケースケでしたが、この二人になると、ケースケが○び太で、リュートが○ラえもんのようでしたね。
彼がいなかったら、ケースケもきっとここまでの男にはなれなかったでしょう。ある意味ケースケとは、シオリ達よりも固い絆で結ばれていた二人だったのでしょう。ユータやジュンイチが『仲間』なのに対して、リュートは『相棒』って言葉がぴったりだったなと。
多分いつかケースケは、シオリを選ぶことになるのだと作者も思っていますが、きっと二人の間に子供が出来たら、それはきっと彼の生まれ変わりになるのだと思います。そういう話も、今後アフターで書けないかな、と試行錯誤してますね。
一応、主要キャラクターとこの話を振り返ってみました。
この話は本編はこれで一応完結とさせていただきます。
今後、Another storyのみをこの話から切り取って、新しいAnotherか、IFストーリーを別の連載の合間に書いていこうかな、という予定でおります。(やったことのない試みなので、上手く行くか分かりませんが……)
あとは本編の誤字脱字の手直しやら、蛇足部分の削除などもやっていこうかな……読み返す暇もないほど近年働いていたので、そこに取り掛かる前にまず完結させねば、と思っていました。
これからも仕事の合間にはなりますが、細々と活動していけたらと思っておりますので、お暇なときはまた読みにいらしてください。感想も読みますので、どんどんご意見お知らせください。
長い間、応援ありがとうございました。
ひとりぼっちのキミに 作者 ターンA