表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

吸血鬼は待ち続ける

 しばらく横になり、動けなかったカシオペヤだが、その内喉が乾き、血を求めて動物を狩りに行く。目につく動物を八つ当たりの如く食い荒らし、待って、待って、待ち続けたが……ジュリアスもジェラルドも帰ってこない。

 呆然と日々を過ごしながら、喉が乾けば適当な動物を食い荒らしていたが、ある時、雪穴に何かが入っているのを見つける。寒そうに震える小さな身体を目にして、堪らず彼は救い出した。

 それは、白熊だった。

 寒がりな白熊はガタガタと震えており、たまたま満腹状態だったカシオペヤはその白熊を食べることなく、家に連れ帰り、寝床の毛布にくるんでやった。

 白熊の名前は、サンだという。家族もなく、当てもなく歩いていたら、この雪山に辿り着いたのだと。


「これからどうするつもり?」

「……どうしたら、いいんでしょうか?」


 心細いようで、小刻みに震える白熊を見ていたら、自然とこう口にしていた。


「ここで生きていく為の術を教えよう」


 在りし日の、狼に向けた言葉を思い出しながら。


◆◆◆


 一年が経つ。


 サンはすっかり元気になり、カシオペヤに文句を言うようになった。彼の存在のおかげで、カシオペヤは毎日笑えているが、以前のような明るさには程遠い。

 二匹の狼は未だ帰らず、あの口付けの続きだって、できようはずがない。……いやそもそも、カシオペヤには今までそんな相手がいなかったものだから、教えようにも教えられなかった。こればっかりは、無理なのだ。

 一緒に学んでいくしかないというのに。


「先生、本当に今日も待つんですか?」

「待つ」

「野草採集に行きましょうよ」

「サンだけで行きな」

「わたしだけで行くの大変だから言ってるのに!」


 文句を言いながら、結局サンは一頭だけで行く。

 カシオペヤは玄関の前に立ち、愛弟子の帰りを今日も待つ。

 その姿が見えなくても、日が沈むまで、そこにいる。

 待てと言われた。続きを教えろと言われた。だからきっと、弟と共に帰ってくるはずなのだと、願いながら、泣きたくなりながら、待つのだ。


 弟子の帰りまで、あと■■日。


 まさか弟の他に色々連れて帰り、家を大改装し、そして、蜜月を過ごすことになるなど、この時のカシオペヤは想像すらしていなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ