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第11話:侵入者トラップ


地下通路に続く階段を降りたラスティード達は、直線的に延びる古びた石造りの通路に足を踏み入れた。足元には時折小石が転がり、かすかに響く音が不気味な雰囲気を醸し出す。通路の壁は冷たく、長い年月を経た石材が所々ひび割れている。


「地下だというのに明るい…!」


レイオリアは驚いたように辺りを見回す。


「所々に輝光石が埋め込まれているようですね」


レイオリアの言葉にビクターが応える。


通路の両側には、ところどころに輝光石が埋め込まれており、そのオレンジ色の優しい明かりが、薄暗い空間を照らし出している。しかし、その光の中にも陰が潜むような不気味さが漂っていた。明かりが点在しているものの、全体的には冷気が漂い、肌寒さを感じさせる。


「避難用の通路ですが、どんな仕掛けがあるかわかりません。気をつけて進みましょう」


ビクターの言葉にレイオリアや騎士たちは頷き歩き始める。


アルザリアは鼻をクンクンとさせるとある違和感を覚えた。

(300年使われてなかったにしては随分と人間の匂いが強いな…)


「どいした?何かあるのか」


アルザリアの様子にラスティードが話しかける。


「ええ。問題は無いと思いますが警戒しておいた方がよいかと」


「わかった」


ラスティード達もレイオリア達の後を追う。


「ねぇ本当にこの道は大丈夫なのかしら?」


「これしか方法がないんだからしょうがないだろ」


他の乗客達から不安の声が飛び交うが一行は地下通路を進む。地下通路を進むにつれ、空気はひんやりと肌を刺すように冷たく、静寂が支配していた。周囲の輝光石が放つオレンジ色の明かりが、石造りの壁をぼんやりと照らし出し、時折小さな音が響くたびに、乗客たちの不安が高まる。

しかし、突然、目の前に無機質な壁が立ちはだかった。通路は行き止まりとなり、周囲の雰囲気が一瞬にして重くなった。乗客たちは一斉に立ち止まり、驚きと戸惑いの表情を浮かべる。

「い…行き止まり!?」


「道がないじゃないか!?どうなっているんだ!!」


乗客達の不安と戸惑いの声が飛び交う。


「ビクター一体これは…?」


レイオリアが困ったようにビクターに訊く。


「…わかりません。何か仕掛けがあるのかもしれません」


乗客達から不安の声が上がり、何人かは壁に手を触れ、叩いてみる。しかし、無反応な壁は冷たく、どこか無機質に感じられた。ラスティードとアルザリアはその状況を冷静に見守りながら、目を凝らして周囲の変化を探った。


「くそ!!こんなとこでのたれ死ねってのか!!」


乗客の一人が力任せに壁を叩いた瞬間、微かな音が響き、何かが動いた。壁の一部が震え、乗客たちは一斉に身を縮めた。その瞬間、地面がひび割れ始める。


「ちットラップか!!」


ラスティードとアルザリアは後方に下がる。2人を見ていたエヴァンも慌てて2人に続く。


「下がれ!!」


ビクターが壁の近くにいる乗客に叫ぶ。しかし、ひび割れた地面が大きく口を開き、底知れぬ闇が広がっていく。周囲の人々はその異変に驚き、恐れの表情を浮かべて後退するが、その動きはすでに遅かった。


「うわああああ!?」


叫び声が通路に響き渡る。その瞬間、石造の地面が崩れたことで、数人の乗客がまるで引き摺り込まれようにように穴に飲み込まれてしまった。彼らの悲鳴が冷たい空気を切り裂き、恐怖の輪が広がっていく。

足元が崩れる感覚に、何もできずにそのまま落ちていく乗客たちの姿が、目の前で繰り広げられた。地面が消えていく様子を見つめるラスティードの瞳には、冷静さと共に不吉な予感が宿っていた。

周囲の人々は驚愕の表情を浮かべ、穴の周りで足を止めたまま、どうすることもできずに立ち尽くす。暗闇に落ちていく人々の姿が、徐々に見えなくなると、動揺した空気が一層強まった。


「そ・そんな…」


レイオリアは苦悶の表情で悲しそうに言葉が溢れる。


「…おそらく侵入者用のトラップでしょう」


ビクターは眉根を寄せながら言う。その頬には一筋の汗が垂れ、少し動揺しているようにもみえた。


「この先どんなトラップがあるかわからない。なんとしても殿下をお護りしろ」


ビクターはナージュや他の騎士たちに向かって言う。ビクターの言葉から緊張感が伝わり、その言葉に騎士たちは「はい!」と応える


「…でもここからどうやって進めば…」


エヴァンが動揺しながら呟く。他の乗客達からも不安の声が大きくなる。


「正規ルートに進むための仕掛けがあるはずだ」


行き止まりに突き当たった混乱の中、ラスティードは冷静に周囲を見渡した。何か手がかりがあるはずだと目を凝らすと、通路の左側にある煉瓦の壁が目に留まった。規則的に並べられたその壁の中には、微妙に大きさの異なる煉瓦が埋め込まれていることに気づいた。


ラスティードはその煉瓦に注目し、隣に立つアルザリアに指示を出した。


「アルザリア」


彼女はその声に応え、ゆっくりと煉瓦の壁へと近づく。周囲の人々はまだパニックの余韻から抜け出せておらず、特にナージュがアルザリアを制止しようと叫んだ。


「おい!勝手な行動はよせ!」


ナージュの言葉が通路に響くが、アルザリアはそのまま煉瓦の壁に手を伸ばした。彼女の指先が大きさの違う煉瓦に触れると、星霊力がその中に流れ込む。瞬間、煉瓦の壁が淡い光を放ち、壁が透明になっていく。


「か…壁が…!」


レイオリアの驚きの声が通路に響く。彼女の翡翠色の目は大きく見開かれ、まるで信じられない光景を目の当たりにしているかのようだった。騎士たちも息を飲み、驚愕の表情を浮かべている。ビクターは一歩前に出て、警戒心を持ちながらもその現象を注視した。


「こ…こんな道が…隠されていたのか?」


乗客たちの中にも驚きの声が広がり、まるで夢のような光景に圧倒されている。ナージュは目を丸くし、同じく煉瓦の壁が消えていく様子を見守っていた。


「先を急ごうぜ」


ラスティードはニヤリと笑いながら歩き出すと続いてアルザリアも後を追う。エヴァンは慌てて2人に続く。


「レイオリア様、我々も行きましょう」


ビクターがそう言うとレイオリアは頷き通路に進む。


「ラスティード様、よく仕掛けにお気づきになりましたね」


アルザリアが微笑みながらラスティードに視線を向けると、彼は少し誇らしげに顔をほころばせた。


「洞察力に自信があんだよ。スリ師だからな」


彼の言葉には自信と軽い冗談が混じり、アルザリアはその姿に思わず笑みを浮かべた。彼女の目には、彼の機知に対する賞賛が宿っていた。


通路を進むと四角い広めの扉のない空間に一行は行きついた。四角い広めの空間に足を踏み入れた瞬間、周囲の静けさが一層深まる。高い天井からは薄暗い光が漏れ、空間全体を神秘的な雰囲気で包んでいる。


「なんだアレは…!?」


騎士の一人があるモノに気づく。広間の中央には四つの浮遊する石板が円を描くように並べられ、かすかに青白い光を放っている。石板の表面には複雑な模様が刻まれ、まるで古代の秘密を宿しているかのようだ。


ラスティードはその光景をじっと見つめ、「また行き止まりかよ」と呟く。アルザリアが隣で彼の言葉に頷き、他の乗客たちも警戒を強める。彼らの心の中に、不安が交錯していた。

静寂の中、浮遊する石板が微かに揺れ、まるで彼らを待ち構えているかのように感じられる。


「これは一体どういう意味だ…?」


ナージュが浮遊する石版を見ながら呟く。


「バカかお前は」


ラスティードが冷笑するかのように冷たい視線を向ける。


「なんだと貴様!?」


ナージュの怒声が空間に響き渡り、その瞬間、空気が張り詰めた。彼女の手が剣の柄にかかると、わずかに鋭い金属音が鳴り響く。彼女の額には汗が滲み、ラスティードを睨みつける目は明らかに怒りを抑えきれていなかった。護衛としての本能が、今にも行動に移そうとしているのが誰の目にも明らかだった。


「正面をよく見てみろ」


ラスティードの言葉を受け、ナージュや他の者たちも目を凝らして正面の壁に注目した。そこには四つの石板をはめ込むための四角い溝が規則正しく配置されている。黒い石で縁取られた溝は、古びた雰囲気を漂わせながらもどこか威厳を感じさせる。重厚感のあるその造りは、まるで長い年月を耐え抜いてきた歴史の一部のようだ。溝の内部は精巧に仕上げられており、石板がぴたりと収まるように作られているのが明らかだった。


「この石板をあそこにはめ込む必要があるようだな」


ビクターが冷静に言い放つと、部屋の中に重苦しい静寂が戻る。彼の落ち着いた声が、緊張感をさらに高めているかのようだった。全員の視線が自然と石板へと集中する。部屋全体が微かに冷え込み、遠くからかすかな風が漏れ出すような音が響いた。


壁に描かれた古い文様や石板を収める溝の形状が、まるで試す者を待ち構えているかのように見える。その無機質な冷たさと歴史の重みが、挑戦者たちに迫ってきているような圧迫感を与えていた。


「私がやります」


レイオリアの声が静かに響き渡り、彼女の決意が表情に刻まれていた。しかし、その奥に不安と緊張が隠れていることを、誰もが感じ取ることができた。彼女の瞳が石板に向けられ、手がわずかに震えているのが見える。


「だ、だめです!レイオリア様!どんな仕掛けがあるかわかりません!危険です!!」


ナージュや他の騎士たちが慌てて前に出て、彼女を止めようと声を上げる。その必死な訴えに、彼らの忠誠心が垣間見える。


「これ以上、犠牲者を出すわけにはいきません」


レイオリアの声は揺らぐことなく、しかしその瞳には何かを抱え込むような苦しみが宿っていた。彼女は王女としての責任を背負い、その重さに耐えながらも、自ら進んで危険を引き受けようとしている。


その姿に、一瞬、場の空気が引き締まる。だが、それを嘲笑うかのように、ラスティードが冷笑を浮かべながら口を開いた。


「さすが王女様。立派だな」


皮肉と軽蔑が入り混じったその声が、部屋に響き渡る。レイオリアを褒めているようで、全くその意図がないことは誰の耳にも明らかだった。ラスティードの冷ややかな目は、彼女の決断をまるで茶番のように見下している。


「貴様!いい加減にしろ!!」


ナージュの怒声が爆発する。彼女の堪忍袋の緒が切れ、猛然とラスティードに掴みかかった。その瞳には怒りが燃え上がり、拳がラスティードの胸元を強く掴む。その激しい動きに周囲の空気がピリつき、他の騎士たちも反応して一歩前に出る。


だが、ラスティードは微動だにしない。彼はナージュの顔を真っ直ぐに見つめ、冷酷な笑みを浮かべたままだ。ナージュの手の力が増すにつれ、周囲に張り詰めた緊張感が漂う。


「いいのかよ。せっかく王女様が犠牲者を出さないようにしてんのに、その部下が俺を襲っても」


「ぐッ……!!」


ラスティードは一歩も引かず、ナージュの動きをじっと観察していた。彼の不敵な笑みはそのままだが、青い瞳の奥には鋭い冷たさが宿っている。その瞳はまるでナージュを値踏みしているかのように、隙を探りながら彼を見つめていた。



「ナージュ、下がりなさい」


レイオリアの落ち着いた声がその緊張を打ち破った。彼女の翡翠色の目が二人の間に鋭く入り込み、状況を見定めるように光っていた。


ナージュは一瞬、葛藤の表情を見せたが、すぐに肩の力を抜き、剣から手を離した。しかし、まだラスティードに向ける目には警戒の色が消えていない。


「今は言い争っている場合ではありません。ここにいる皆で協力し合いましょう」


「そ…そうですよ!レイオリア様の言うとおりです!」


レイオリアの言葉にエヴァンは嬉しそうに賛同する。他の乗客達もエヴァンに続く。


「ナージュ。私の為に申し訳ありません」


レイオリアは静かにナージュの肩に手を置き、彼女の怒りを鎮めるように柔らかく微笑んだ。その表情には、王女としての気高さと優しさがにじみ出ていた。


「いえ。私こそお見苦しいところをお見せして申し訳ありません」


ナージュはその言葉を受け、ゆっくりと息を吐きながら深く頭を下げる。彼女の顔にあった怒りの熱が冷め、再び忠誠心と責任感が宿った目がレイオリアを見つめている。


すると突然ゴゴゴと地響きが鳴り響いた。


「空間が縮んでいってる!?」


エヴァンの声が、恐怖に満ちた叫びとなって反響する。四角い広間が徐々に狭まり、壁が音を立てて近づいてくるのが見て取れた。


「ちッ!ここを造った奴はどんだけ質が(わり)ぃんだ!」


ラスティードがぼやくように言い放つが、空間はますます狭くなり、乗客たちの不安が膨れ上がっていく。人々のざわめきが広がり、焦りの表情が目立ち始めた。


「私が石版をはめます!ナージュ!殿下を頼む!!」


ビクターは素早く石板を手に取り、壁にある溝に慎重に差し込んだ。彼の動作は焦りながらも正確だった。


瞬間、轟音が止まり、圧迫されていた空間の縮小がピタリと止まった。


「と…止まった…!?」


エヴァンが恐る恐る呟き、周囲にいた乗客たちもほっとしたような表情を浮かべる。だが、その安心は一瞬で砕かれた。


「何だ…!?」


歩いてきた通路の入口が消え、代わりに床から赤い光が浮かび上がる。無数の古代文字が回転しながら地面に描かれ、その光景に周囲の空気が一変した。


「召喚術式だと!?」


ビクターの焦りの声が空間に響いた。足元から現れた術式が発動すると、骨と錆びた鎧をまとった骸骨兵士(デスソルジャー)たちが次々と地面から出現する。彼らの眼窩には赤い炎が揺らめき、口を開けて不気味な音を立てながら、ゆっくりと剣を振り上げた。

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