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第21話



 彼女を姿を変えられる理由。


 ”傷が治る“という事象。


 そのことの秘密を、必死に説明しようとしてくれてた。


 小難しい言葉ばかりで、全部を噛み砕いて理解することは難しかった。



 そもそも、——だ。



 目の前で起こった現象があまりに異常すぎて、「話」どころじゃなかった。


 マジックを見た時とか、幽霊を見た時とか、まだ、「ロジック」がハッキリしてるから、考えるだけの余地がある。


 …でも、「姿」が変わるなんてあり得ない。


 考えようにも考えられない。


 鏡の向こうにいる自分には触れられない。


 あの感じ、…わかるかな?


 鏡の中から人が出てきたらびっくりするだろ?


 絶対に起こらないことが起こったんだ。


 そりゃ、パニックにもなるって。



 首を傾げる俺に、アカリは説明を続ける。


 明日は朝が早いなんて、すっかり忘れてしまっていた。


 時計を見たら、いつの間にか12時を過ぎていた。


 さすがにまずいなと思いながら、彼女の話を遮った。



 とにかく、一旦落ち着こう



 無理やりにでも自分にそう言い聞かせ、状況を整理しようとした。


 相変わらず、色んなことがわからない。


 わかる部分と、そうじゃ無い部分との差が激しすぎる。


 特に、——話。


 「生物」が、ウンタラカンタラは。


 率直に言うと”ややこしい”


 色んな専門用語が飛び交ってた時点で、すでにお手上げ状態だった。


 ただ、それでも聞けたのは、あり得ない現象に対する「理解」を進めようと思ったからだ。


 訳がわからない話も、自然と耳を傾けてしまう自分がいた。


 それだけ、“理解したい”と思う自分がいた。


 変な感じだけどさ。



 彼女がどうして逃げているのか。


 どうして、行方不明になってたのか。



 知りたいこと。


 気になること。


 たくさんの疑問点を抱えながら、俺はシャワーを浴びることにした。


 ひとまず、彼女の言うとおりにしようと思った。


 ぶっちゃけどうすればいいかわからなかった。


 警察を呼ぶべきだろうとついさっきまで考えてたけど、絶対ダメって言うから、まあ…、仕方なく。



 ふと我に帰る。


 明日は6時に起きなきゃいけない。


 呑気にしてる場合じゃない。


 眠れないのはわかってたが、ベットに入った。


 彼女はソファで眠るみたいだった。


 ベットを使うか?って聞いたのは聞いた。


 でも、「大丈夫」みたいだった。


 っていうのも、久しぶりに、テレビを見たかったらしくて。

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