表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/21

第2話


 部屋に明かりはついていない。


 まあ当たり前なんだけど。


 まじでアオイ以外に考えられないんだよな…


 この前も勝手に上がり込んでゲームしてたし…


 だけど、仮にアオイだとしたら、さすがに電気くらいはつけてるだろ


 ついてないってことは、誰もいない…ってことだよな…?


 そういうことだよな?



 「アオイ?」



 靴を脱ぎながら、部屋に向かって声をかけた。


 ドアは閉まったままだ。


 曇りガラスがついてるから、中の様子はそれとなくわかる。


 誰もいる気配はない。


 シャワーを浴びてるような音もない。


 

 …まあ、いいか



 もしかしたら、俺が出てる間に誰か来たのかもしれない。


 サンダルが残ってるのは謎だが、あとで聞いてみよう。


 つーか、アオイだろ


 母さんが履くようなガラじゃないし、兄貴のしちゃ小さすぎる。


 勝手に上がり込むのはいいんだが、せめて連絡くらいよこせや。


 人ん家の冷蔵庫を私物化してるのだけは、いつか粛清せねばならん。


 食べようと思った試作用のスイーツが消えてた時は、まじでビビった。


 夢遊病にでもかかったのかと思った。


 飲み物とかおにぎりとか放置したままだし、…おにぎりなんてもう一週間も前だぞ?


 そろそろ捨てていいよな?


 あれ。




 キィ




 ドアを開けて電気を点ける。


 明日も朝が早いから、さっさとシャワーを浴びてゆっくりしよう。


 …ああ、でもダメだ


 今週の土日は休みが多いから、もう一度シフトを組み直さなきゃ


 他に出れるやついねーのかな


 大学が忙しいのはわかるんだけど、やっぱもう少し人数を増やさなきゃダメかも


 とくに朝。


 夕方から出れるって子が多いけど、夕方なんてもうピークを過ぎてるからあんま必要ない。


 欲しいのは午前中かな。


 それか昼イチ。


 パートのおばちゃんがもう1人か2人いればなぁ


 大学生ばっか取っちゃうと、安定してシフトを組むのが難しいっていうか…




 カチャ



 後頭部に、何か触れた。


 “触れた”っていう言い方が正しいのかどうかはわからない


 ただ、確かなのは、頭の後ろに何か“硬いものが当たっている“


 一瞬、頭が固まった。


 ”真っ白”になった。


 意識がどこかに持っていかれるような急激な重力が、糸を引っ張るように背筋に走った。


 ゴムが切れるか切れないかのギリギリまで、伸び切っているあの感じ。


 視線が泳ぐ。


 思わず、足を止めてしまう。


 何が何だかわからなかった。


 頭の中心に占めていたのは、言いようもない悪寒だ。



 予期していない出来事が、突然目の前に通り過ぎるような


 誰かに突然、——肩を叩かれた時のような


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ