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7話 〇〇ごっこ①

 「ほうほう」


 たむが目を輝かせながら本を読んでいます。

 と言っても字は読めませんので正確には写真を見ているだけですが、とても楽しそうです。


 たむが読んでいる(見ている)本は私が地元の図書館で借りてきたもので、子ども向けの写真がいっぱいで薄い図鑑です。

 それを何種類か借りてきてたむに与えてみました。


 その中で今たむが目を輝かせているのは、『ふんころがしのすべて』です。

 ふんころがし……そうですか。


 今回借りてきたのは飛行機のと、鳥のと、ライオンのと、そしてふんころがしの4冊です。

 本命は羽毛でもふもふな鳥だと思っていたのですが、予想は外れてしまいました。

 ふんころがしは完全なおふざけで借りてきたのに、どこに惹かれたのやら熱心に見ています。かわいい。


 さんざん本を眺めると、本を引きずったままちょっちゃんのところへ行きました。


「ちょっちゃーん!ふんころがしごっこしましょう!」


 えぇ、見せに言ったんじゃないんですか……?


 「しないよ」


 ちょっちゃんはにべもありません。たむの方を見てもいません。

 なのに、テンションマックスのたむは聞いていません。


「たむが()()をやるので、ちょっちゃんが()()()()をやってくだしゃい!」


 ちょっとちょっと、「ふん」と「ころがし」で()()()()()()ではないのですけど……。

 それをたむに伝えるべきでしょうか。

 でもたむの説明は続いているので、もう少し聞いて見ましょう。


「たむがふんなので、ちょっちゃんはそれを転がすんでしゅ!」


 力強くそう言われたちょっちゃんは、ため息をついてからめんどくさそうに「わかったよ」と言うなり、たむをガシッと掴んで縦に向けてから、ころころ〜と転がしてしまいました。

 たむはきれいに転がり、壁にべしっとぶつかってひっくり返って止まりました。

 ちょっちゃん、合っていますが違うと思います……。


 たむは予想外すぎる状態に混乱していましたが、持ち直すとちょっちゃんのところにびゅんっと飛んでいき、目を涙でうるうるさせながら文句を言い出しました。かわいい。動画を撮らないと。


「そうじゃないんでしゅ!たむ、痛いんでしゅ!」


 それを聞いたちょっちゃんは、しかたなさそうに「じゃあどうしたらいいの?」と聞いてあげています。ちょっちゃん、なんだかんだで付き合いはいいのです。


「手じゃなくて、お尻で転がすんでしゅ!」

「わかったよ」


 そう言うとちょっちゃんはまたたむを縦に向け、自分は後ろを向いてたむをお尻でドンっと押しました。

 たむはまたしてもきれいにころころと転がり、壁にべしっとぶつかってひっくり返って止まりました。デジャブですね……。


 たむはちょっちゃんのところへ飛んでいき、涙をマンガのように迸らせて泣いています。かわいい。動画動画。


「うえーん、違うんでしゅー。お尻で転がしながら進むんでしゅ。痛いのー!」

「えー、まだ違うの?もう、めんどくさいなー」


 そう言いながらもちょっちゃんはまたたむを縦に向けると、自分は後ろを向いて四つん這いになり、たむをお尻で押しながら進み出しました。


「こういうこと?」

「そうでしゅ!」


 たむは転がされながら嬉しそうに「ふんころー、ふんころー」と歌っています。

 そんな鳴き声ではないと思いますが……。


 ちょっちゃんは、「ねえ、これってなにが楽しいの?」と言いながらも、律儀に押してあげています。なんて優しいのでしょう。


 ラグの上を一周したところで、ちょっちゃんは「もう疲れた」と言って、たむを放置して定位置に戻っていきました。

 たむは縦向きのままですが、実に満足そうです。かわいい。


「ちょっちゃん、またしましょうね!」

「えー。気が向いたらね」


 たむは私が元通りに戻すまで、縦向けのまま嬉しそうにしていました。


 こうして、たむとちょっちゃんの遊びのレパートリーにふんころがしごっこが加わったのでした。

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