5話 あんこの芯とあんこの皮
ただいまの時刻は15時の10分前。
そろそろおやつの時間なので、台所へ物色しにやってきました。
少し前までは暑くてアイスしか食べられなかったんですけど、もう今ならなんでも食べられますね。
あ、でも、さすがにぜんざいなんかの熱々なスイーツはまだいらないですね。常温で食べられる焼き菓子なんかが理想的です。
ポテチの口の日もありますが、今日は甘いものの気分です!
そう思って自室から台所へやってくると、テーブルの上の小皿に変な物体が乗っていました。
白くて丸くて、大きさは3〜4cmぐらい。お皿に乗ってるから食べ物なのでしょうが……。
「なにこれ」
そう口に出しながらつついてみると、むにっとした感触。どこかで触ったことあるような、知ってる感触……。なんていうか、お餅みたいな……。
そこまで考えた瞬間、全てが繋がりました。
「たむっ!!!!」
部屋のドアを思いっきり開けながら犯人を呼びます。
「な、なんでしゅか!? たむ、なにもしてましぇんよ!」
そう言って振り返ったたむの口のまわりは、あんこでベタベタです。
「たむっ!台所に置いてあったおはぎのあんこだけ舐めたな!!!」
「そんなことしてましぇん!」
びくびくおどおどしているたむはとてもかわいくて、怒る前に動画を撮って愛でまくりたいところですが、ここは我慢です。
「たむ以外の誰がおはぎの餅だけ残すのよ!」
「違うんでしゅ。あれはあんこの芯なんでしゅー。だから食べられないんでしゅ」
「はい!?」
あんこの芯!? なんだそれは!?
「なに言ってんの! あんこに芯なんてありません! あれは中の餅ごと食べるの!」
「芯だから食べられないんでしゅ!」
「食べれる!」
「食べられましぇん!」
どっちも引かないまま怒鳴り合いが続き、ふたりとも……いえ、ひとりと一体は両方ともヘトヘトになりました。
「はぁ、はぁ。今度からはたむにはあんこだけをあげるから、その辺に置いてあるの食べたらダメだからね」
「………………………………」
「返事は?」
「……………………はいでしゅ」
たむ用に缶詰とか袋詰めのあんこをいっぱい買っておきましょう。
初めからあんこだけのあんこを与えておけば、食べ物がムダになることもないですからね。
おはぎの餅はもったいないですが処分いたしました。いくらたむが可愛くても、ベロベロ舐めまくったものを食べるのは抵抗がありますから。
これで解決したと思っていたのに、その数日後。
台所のテーブルの上に、ふたつに割れたおまんじゅうがありました。
手に取ってみると、中に入っているはずのあんこがきれいになくなっています。
「たむっ! なんで饅頭の中身だけ食べるの! ダメだって言ったでしょう!!!!!」
「ふえーん、あれはあんこの皮なんでしゅよー。皮を剥かないと食べられないんでしゅー」
「あんこに皮なんてないの! あれは皮ごと食べるものなの!」
「嫌でしゅー! あんこの皮、剥いてくだしゃい!」
「ダーメっ!!!!!」
「びえーん」