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わがはいは、たむである(不定期更新中)  作者: 紅葉月


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38話 妄想おむすびころころ〈後編〉

「先ほど妾の池におむすびが落ちてきた。お主が落としたのはこの金のおむすびかえ?」


 と、女神様は金でできた大きなおむすびを掲げます。


「違いましゅよ」


 転がっていたおむすびは金ではないですし、そもそも自称子猫が落としたわけではなく勝手に落ちていっただけですので、即座に否定します。


「うむ。正直なのはよいことじゃ。では、お主が落としたのはこの銀のおむすびかえ?」

「違いましゅよ」


 金のおむすびと同じ理由で自称子猫は否定します。


「お主は珍妙ではあるが正直者でもあるようじゃ。では、お主が落としたのはこの普通のおむすびかえ?」

「違いましゅよ」

「そうじゃ、このおむすびじゃ……って、今なんと言いおった!?」


 当然肯定の返事があるものと思っていた女神様は、予想外の否定に反応できず混乱しています。


「お主はこのおむすびを追いかけてここまでやって来たのじゃろう?」

「それはそうでしゅけど……」


 おむすびを追いかけてきたのは間違いないので、自称子猫は否定はしません。


「ならばなぜ違うと申すのじゃ?」


 女神様の質問に、自称子猫はせっせと答えます。


「たむは毎日お昼寝をするんでしゅ。おじーさんは山へしばかりに、おばーさんは川へ洗濯へ行くんでしゅけど、たむはお留守番なので縁側でお昼寝をするんでしゅ」

「…………」


「この間、たむがいい子にしてたから新しい毛布を買ってもらったんでしゅ。とってももふもふな毛布なんでしゅよ! 貸してあげましぇんけど!」

「…………」


「その毛布でお昼寝しゅると、とってもよく寝られるんでしゅ! だから今日もお昼寝しようと思って、縁側に毛布を持ってきたんでしゅ」

「……もうよい」


「いつもたむがお昼寝してたら、おばーさんが帰ってきておやつをくれるんでしゅ。おやつももちろんあんこなんでしゅよ」

「……もうよい」

「しょれで、今日もお昼寝しようとしてたらどこからともなく……」


 おむすびが転がってきて……と続けようとした自称子猫をかすめるようになにかがびゅんっと飛んできて、草むらにごすっと落ちました。

 自称子猫がそちらを見ると、女神様が持っていた普通のおむすびが落ちています。そうです、女神様が投げたのです。


「なにしゅるんでしゅか!」


 驚く自称子猫の近くを、またびゅんっ、びゅんっと連続してなにかが飛んで行き、草むらにごすっ、ごすっと落ちました。

 自称子猫が見ると、先ほどの金のおむすびと銀のおむすびが落ちていました。これも女神様が投げたようです。


「どうしたんでしゅか……?」


 自称子猫が困惑しながら女神様を見ると、女神様はうんざりした表情でまた頭痛をこらえるように額を押さえています。

 反対の手を、しっしっとするように振って、女神様は疲れたように言いました。


「全部お主にやるから、それを持って早う去ね」


 そんなことを言われても、自称子猫は困ってしまいます。

 あんこでももふもふでもないから全くほしくない上に、見るからに重そうです。


「いらないでしゅ……」


 ハの字眉毛をふにゃっとさせながら断ってみましたが、もちろん女神様は許してくれません。


「よいな、必ず全て持って去ぬるのじゃぞ。お主には必要なくとも、お主の飼い主には価値がわかるはずじゃでな」


 女神様はそう言うと、ため息をついて疲れ切った表情で池の中へと戻って行きました。


「女神しゃま〜、女神しゃま〜、戻ってきてくだしゃいよ〜」


 自称子猫は呼びかけてみましたが、なんの反応もなく池は静かなままです。

 自称子猫は諦めて3つのおむすびを持って帰ることにしました。


 普通のおむすびは濡れてぐしゃぐしゃで、触りたくないような状態です。金のおむすびと銀のおむすびは予想通りかなり重いです。

 自称子猫はそれら3つのおむすびを苦労して上に乗せると、よろよろふらふらしながら家に向かって飛び始めました。


「重いでしゅ〜」


 どうにか森を抜けたあたりで自称子猫が墜落しそうになっていると、おばーさんが慌てて走ってきました。


「タマ! よかった、どこにもいないから探し回ってたんだよ。どこに行ってたんだい!?」

「たむでしゅけど、うえーん、大変だったんでしゅよ〜」


 おばーさんの顔を見てほっとした自称子猫は泣き出してしまいました。


「とにかくうちへ帰ろうね。ところでタマや、お前は何を持っているんだい」

「たむでしゅけど、女神しゃまにもらったおむすびでしゅ。重いので持ってくだしゃい」


 自称子猫の言っていることはよくわかりませんが、とりあえずおばーさんは金のおむすびと銀のおむすびを抱え、ふらふら飛ぶ自称子猫と一緒に家に向かって歩き始めました。

 家の前には心配そうな顔のおじーさんがいて、おばーさんと自称子猫を見て駆け寄ってきました。


「タマ! どこへ行ってたんじゃ! 心配したんじゃぞ」

「たむでしゅけど、おむすびを追いかけて女神しゃまに会ったんでしゅ」


 自称子猫の言っていることはよくわからないので、とりあえず家に入って落ち着くことにしました。

 それからおむすびを追いかけた大冒険の話を聞き、女神様にもらった金のおにぎりと銀のおにぎりをじっくり眺め、おじーさんとおばーさんはほくほくしていました。金の塊と銀の塊ですから当然の反応です。


「タマや、タマがいらないならこのおむすびはもらっておいてもいいかのう?」

「たむでしゅけど、たむはいらないのでおじーさんにあげましゅ。しょんな変なものがほしいんでしゅね」


「代わりにタマにはあんこをたくさんあげるからのう」

「たむでしゅけど、わ〜い!」


 自称子猫はぽよぽよ飛び跳ねて喜んでいます。


 翌日から自称子猫のごはんは高級なあんこになりました。

 しばらくするとおじーさんとおばーさんの着物がきれいになり、自称子猫は新しいもっふもふの毛布をもらいました。

 またしばらくするとおうちが大きくなり、自称子猫がお昼寝する縁側も広くなりました。

 こうしておじーさんとおばーさんと自称子猫は幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。



「こんな話、楽しいと思うんだけど、どう?」

「ミサキちゃんの考えてることがよくわからないでしゅ」

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