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わがはいは、たむである(不定期更新中)  作者: 紅葉月


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30話 魔法の杖〈後編〉

「それでもう1回魔法を使ってみてよ」

「いいでしゅよ! まほーん」


 さっきの綿埃が、もう5mm浮きました。

 今は上空1cmです。

 このまま魔法を重ねてかければ、いつかは空まで届くぐらい浮くのでしょうか。


 なんて思っていたら、綿埃が力尽きたように落下しました。

 あまり長持ちもしないようです。


「落ちちゃったね」

「はい。またやりましゅか?」

「それよりも、他の魔法は使えないの?」

「使えましぇん」

「……そう」


 魔法が使えるというだけですごいことのはずなのに、なぜか全然すごく思えません。

 ああ、そうです。

 きっと呪文がふざけた感じだからすごく思えないのでしょう。

 間違いないです。


「その浮かせる魔法を、他の呪文で使えないの?」

「じゅもん」

「さっき『まほーん』って言ってたやつ。他の言葉じゃダメなの?」

「できましゅけど、どうしてでしゅか?」

「なんとなく」


 たむはちょうどいい呪文が思いつかないようで、「むーん」と言って悩んでいます。

 そういえば、さっきまで読んでいたネット小説に出てきた呪文なんかはどうでしょう。


「どれどれ。えーと、


 灼熱の業火 紅蓮の焔光

 我が手に集いて 力となれ

 天空の極光 彼方の狂雷

 全てを切り裂く 刃となれ


 これは違うな……」


 小説の中の呪文はまだ続いていますが、こんな辺り一面を切り裂いて焼き尽くしそうな呪文は埃を浮かせるのには全く似合わないので却下です。

 それに、教えても覚えられないでしょう。

 程よく呪文っぽくてたむが覚えられる長さというのは、思った以上に難易度が高いです。


「ミサキちゃん、他の言葉で魔法を使いましゅ」

「え、いいの思いついたの?」

「はい」


 たむが先に新しい呪文を思いついたようです。

 綿棒を綿埃に向かってぴっと構えています。


「もちむぎ、もちまき まみむめも!」

「………………」


 またしても綿棒がピカッと光りました。

 這いつくばって綿埃を確認すると、5mm浮いています。


 それはいいとして、もち麦? 餅撒き?

 餅なんて食べないくせに。


「なに今の呪文」

「ものを浮かせる魔法でしゅ」

「……そうだね」


 どこから思いついたのかというのは、きっと聞いてもムダなのでしょう。


「もう1回やりましゅね。 やきもち、もちもの まみむめも!」


 綿棒がピカッと光り、綿埃は上空1cmのところにあります。

 それはさっきと同じなのでもういいです。


 それよりも呪文です。また変わっています。

 それに、「やきもち」は「焼き餅」なのでしょうが、「もちもの」は「持ち物」であって餅ですらありません。

 いえ、呪文が餅である必要もないのですが……。


「ミサキちゃん、もっとやりましゅか?」

「……好きなだけどうぞ」

「はーい! もちごめ、ゆでもち まみむめも!」


 嬉しそうに綿棒を振り回すたむはかわいいですね。

 私はもう疲れました。疲れを癒す魔法を使えるようになってくれたらいいのに。

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